4.サナの決意
「私がエミリア様を虐めている……?」
「もちろん誰も信じてないけど。だってサナとエミリア様には接点がないうえに、学年も違うもの。それに具体的な虐めの内容は何もなくて、ただ虐めているっていう漠然とした話だったし。」
「……その噂はもしかして……。」
「クソ最低ドーピング浮気妄想野郎が流しているんでしょうね。」
「……あだ名がさらに酷くなってる……。」
だけど本当にアンサー様が? 私に了承を迫るふりをして、先に噂を流して私に無理矢理了承させるつもりなの? ……そんなの本当に最低クソ野郎じゃない……。
「エミリア様もあんまり評判が良くないから、クソ最低ドーピング浮気妄想ナルシスト野郎にはお似合いなんだけどね……。」
「……エミリア様ってそんなに評判が悪いの?」
最低クソ野郎とお似合いって相当ヤバくない?
「って言っても婚約者のいる爵位の高くて顔立ちの整った男を狙って媚びてるってだけだけど。クソ野郎も一応騎士団長の息子だしね。」
「アンサー様ご自身も武術の大会はいつも優勝しているものね。」
「……ドーピングだけどね。」
「うぅっ……。」
「まぁ、リーズ様が完璧すぎるから、それに比べたらクソ野郎にお似合いだと思っちゃうのよね。」
そう。クロエが言う様に、アンサー様の婚約者であるリーズ様は完璧な令嬢だ。
輝くような金髪の、絶世の美女。年齢は私達の一つ下だけど、なんと隣国に留学して飛び級をした天才で、学園では私達と同じ3年生になっている。しかもすでに授業で習う内容は習得済とのことで普段は登校していない。それでも総合試験はいつも1位という恐るべき才女なのだ。
……だからこそ私は自分の初恋に蓋をすることができた。そんな完璧な女性には絶対に敵わないって、完璧なリーズ様こそがアンサー様に相応しいって、そう思えたから。
それなのに、アンサー様は、エミリア様と浮気をして、あまつさえリーズ様との婚約破棄を企んでいるなんて……。
だけど、昨日『リーズと婚約破棄をしたい』というアンサー様の言葉に、自分の願望が叶うかもと浅ましくも期待して、リーズ様が不幸になるようなその言葉に小躍りしてしまった私だって最低クソ女なんだろう。
「まあ。噂はとりあえず気にしなくていいと思うよ。誰も信じてないし、私も否定しておくから。」
「クロエ。本当にありがとう。」
「サナは、アンサー様にさっさと『最低クソ野郎』って言っちゃいなよ。」
「そっ、そこまでは……。」
「冗談はさておきサナの目が覚めて本当に良かった!」
クロエはそう言って本当に嬉しそうに笑ってくれた。
……こんなに心配されていたなんて……。初恋フィルター憎し。
「とりあえずエミリア様を虐めるつもりなんてないってことをちゃんとサナの言葉でアンサー様に伝えないとどうしようもないと思うよ。」
うん。ちゃんと自分の言葉でアンサー様に伝えよう。『そんなことはできない』ってちゃんと言うんだ。そうしたら、きっとアンサー様だって分かってくれる。最低クソ野郎だとしたって、私が10年間好きだった人だもの。




