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答え合わせのようなもの  作者: 桜井ゆきな


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17/20

17.答え合わせのようなもの (乙女ゲームのあらすじ編)

「今日は来てくれてありがとう。」


卒業パーティーから数日後、私はブラウン侯爵家で、侍女が淹れてくれたばかりの紅茶と色とりどりのお菓子を挟んで、リーズ様と向かい合っていた。


「お招きいただいて光栄です。」

「緊張しないでね。私も今日は敬語は使わないので、サナ様も楽に話してね。」


ニッコリと微笑むリーズ様。眩しすぎる。……とてもじゃないけど楽に話すなんて出来ないですー。


「ジョアン様から貴女が答えを知りたがっていると聞いたから、私が知っていることを伝えようと思ったのだけど、余計なことだったかしら?」

「いえ! とっても知りたいです! エミリア様の言っていることが理解できなくてずっと不安だったんです。

……でもなぜお兄様がリーズ様に?」

「その話はもう少し後にしましょう。」


リーズ様はさらっと言って紅茶を一口飲んだ。まさか侯爵令嬢のリーズ様とも繋がっていたなんてお兄様の人脈さすがです。


「詳しく話すときっと混乱するだろうから簡単に言うと、私とエミリア様は同じ物語を知っていたの。

その物語は、設定や登場人物などの何もかもがこの世界と全く同じで、そしてエミリア様が主人公の恋愛小説だった。

しかもその物語は何通りもあって、物語によってエミリア様の恋の相手が違うのよ。」


「……それがエミリア様が言っていたアンサー様ルートやお兄様ルートということでしょうか?」

「ええ。その通りよ。

まずは、私が知っている物語の話をしましょう。この世界の『もしかしたらあったかもしれない未来』の物語の話を。」


聞くのが怖いような、楽しみなような不思議な感覚を覚えながら私はリーズ様の話を聞いた。


「私が知っている物語の世界では、サナは6歳の時にジョアンとアンサーとピクニックに行った森の中で、アンサーと一緒に野犬達に襲われるの。」


私は息を呑んだ。……それは現実の話だ。私がアンサー様に恋をした時の実際に起こった話だ。


「……そこでアンサーが、野犬に腕を噛まれてしまって……。……アンサーの血を見たサナはパニックを起こして魔法を暴発させてしまう……。その魔法で野犬達は死んでしまい、犬達の無惨な死体を見たアンサーは咄嗟にサナに『化け物』と言ってしまうの。」


……何それ? そんなの知らない。そんなことは起こってない。


「それ以来サナは学園の入学までお屋敷に引きこもって、唯一側にいてくれたジョアンに依存することになる。

学園に入学した後もサナは誰にも心を開かず、アンサーを避け続けるの。

そんなサナを心配して、ジョアンは卒業後も生徒会の手伝いという名目で学園に顔を出すことを決意するの。

エミリアの入学式の日にも、『お兄様が卒業してしまい1人で学園に通わなくてはいけない初日だから不安』だとサナに懇願されて、学園まで付き添うことにする。

そして、サナ様を教室まで見送ったところで、迷っているエミリアと出会うのよ。」


えぇっと……。野犬に襲われたのは現実で、でもそれ以外は現実ではなくて……。お兄様は卒業した後には学園には1度も来ていないし……。えぇっと……。


「一気に話してしまってごめんなさい。混乱しているかしら? これはあくまで『物語』だから『現実』とは違うから、そこだけは間違えないでね。」


そっそうよね。リーズ様のお話は『物語』だから、『物語』として紅茶でも飲みながら聞けばいいんだわ。

私は初めて紅茶に口をつけた。

おっおいしー。さすが侯爵家様!


「落ち着いたようね。もう少し物語の話をしても良いかしら?」

「はい。」


「アンサーは、自分を守ろうと必死で力を振り絞ってくれたサナに対して酷いことを言ってしまったことを後悔しながら、日々鍛練を重ねていくの。

どんなに謝りたくてもサナはアンサーの面会に応じてくれなかったから、過去の過ちを忘れるように武術や学問などの修得に打ち込むようになる。

婚約者のリーズとも『サナを傷つけてしまった自分にそんな資格はない』と距離を縮めることが出来ないのよ。」


私のせいでリーズ様とアンサー様は……。はっ。また混乱しているわ。これは物語。これは物語。紅茶一口。うん。物語。


「学園に入ってからもサナはアンサーを避け続けるから、アンサーは結局サナと話をすることは出来ないでいるの。

そんな状況のまま1年が経ち、婚約者のリーズが学園に入学してくるの。アンサーは入学式の会場までリーズをエスコートした後で、迷っているエミリアと出会うことになる。」


そっか。物語の中でリーズ様は飛び級をしていないから、エミリア様と同じ学年なのね。


「エミリアと出会うところから物語は始まって、そこから2年間の恋物語が描かれるの。

恋の相手は他に、トム王子や、宰相の息子のアダム、エミリアと同学年で商人の息子のハンスがいるわ。」


エミリア様から見ると、3歳年上のお兄様、1歳年上のトム王子、アダム様、アンサー様、同じ年のハンス様、その中から恋のお相手を選ぶのね。


「物語の最終回は、恋の相手が誰だとしても卒業パーティーなの。

ジョアンだったらサナの卒業を見守った後でエミリアにプロポーズ。

アンサーだったらエミリアを階段から突き落としたことを理由にリーズを断罪した後でエミリアにプロポーズ。

あと、この物語には恋のお相手の他に、恋の結末にも何通りかあって、エミリアの起こした行動によって恋の結末も変わるのよ。今話したのはハッピーエンドの物語の場合ね。」


「リーズ様を断罪……。」


「そう。この物語には、悪役令嬢と呼ばれる恋の邪魔をするライバルが登場するの。悪役令嬢は、エミリアに嫉妬して、虐めて、遂に階段から突き落とす。

誰が悪役令嬢かは、恋の相手によって変わってくるの。

ジョアンだったら兄離れ出来ずにずっとジョアンを束縛しようとするサナ。

アンサーだったら婚約者のリーズ。」


同じ設定で、恋の相手や結末が何通りもある物語なんて聞いたこともないわ。全く知らない人達の物語だったら読んでみたい気もするけど。

……お兄様とエミリア様の恋物語なんて絶対に読みたくないー。


「ここまでが私とエミリア様が知っている『物語』の話。ここからは、『現実』と『物語』がどうしてこんなに違うのか、私の知っていることを話しましょう。」



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