11. 素敵な告白
「っ!! とっても素敵です!」
『招待状を送るね』と言ってくださってから1週間後には、レオン様は本当にお屋敷に招待してくださった。
レオン様のお屋敷への訪問に私はとても緊張していたけれど、お庭の黄色い花壇を見た瞬間に一気に緊張がほぐれた。
冬なのに咲き誇る花達はそれはそれは見事だった。さすが公爵家。専属の魔法士がいるとは聞いていたけど本当に素晴らしいわ。
ひと通りお庭を案内していただいた後で、お屋敷の中で侍女が用意してくれた紅茶を飲んだ。
おっ、おいしいー。
「口に合うかな?」
「とっても美味しいです!」
「良かった。」
あっ。きっと今レオン様は微笑んでいるわ。声が嬉しそうにワントーン上がったもの。
しばらく紅茶とお菓子とおしゃべりを楽しんだ後でレオン様が真剣な声で言った。
「この間は何かあったの?」
「……いえ。少し混乱していただけなんです。」
「サナ様。困ってることがあったら何でも言ってほしい。」
「ありがとうございます! でもレオン様に心配いただくほどのことではないんです。それに……私、無敵みたいなので。」
「えっ?」
「防御魔法なんて日常生活で使ったことがなかったのですが、使ってみたらまさかの無敵だな、と……。」
「いや、防御魔法を使うような事態って……。」
「……うっ。」
「サナ様。防御魔法なんてもう二度と使わなくても良いように、僕に近くで君を守らせてほしい。」
「ひぇっ!?」
そっ、それって……!? ヤバい。今までに無いくらいに顔が熱い。このままだと頭が沸騰してしまうかもしれないわ!
「サナ様に伝えたいことがあるんだ。」
レオン様はそう言って、顔を覆い隠している前髪に手をやった。だけど、そのまま躊躇して手が止まったままになった。そんなレオン様を見ていたら私は思わず言っていた。
「レオン様のお顔にどんな痕があったとしても私は何も変わりません! レオン様の声が! 優しさが! 雰囲気が! 全部好きです! だから何も不安に思わないでくださ……。」
あっ!? わっ、私、今、なんて言った!? れっ、レオン様にまさか好きって言った!?
「いっ、今のは違うんです! あのっ、思わずっ! なので……。」
「すごく嬉しい。だけどまだ何も伝えてないのに、あんまり僕を喜ばせないで?」
「ひぃぃー。」
しっ、死ぬ。きっと死ぬ。死因は心臓爆破予告。
私がもだえている間にレオン様は、ゆっくりと前髪をかきあげた。
えっ!? ……美しい……。
レオン様の前髪の下から現れたのは、傷一つない見たこともないほどに美しいお顔だった。
「……どうして?」
「僕には火傷の痕はないんだ。」
「……美しいです。とても……。」
「隠していた僕を責めないの?」
「レオン様は自分から火傷の痕があるなんて言ったことはないじゃないですか。私が勝手に勘違いしてただけです。」
「そうか……。サナ様はそんな風に言ってくれるんだね。」
「せっかくの美しいお顔なのにどうして隠しているのかは気になりますけど……。」
「僕はこの顔のせいで子供の頃はとても大変だったんだ。」
「大変?」
「何度も何度も誘拐されそうになって、侍女や家庭教師に何度も何度も襲われそうになった。」
そっ壮絶……。
「10歳の時についに誘拐されて、幸いにもすぐに救ってもらえたんだけれど……。さすがにこのままじゃまずいと両親が話し合って、僕は顔を隠すことにした。せめて学園を卒業して自分を守れるくらいの大人になるまでは、と。
ちょうど誘拐された時に顔をめちゃくちゃにされたという悪意ある噂が流れていたからその噂に乗ることにした。しばらく人前には出ず、数ヵ月して前髪で顔を隠した僕に何も聞いてくる人はいなかったよ。
皆、可哀想なものでも見るような目をして僕を見ていた。あるいは蔑むような。あるいは優越感のような。僕の周りはそんな視線だけになった。」
レオン様は悲しそうに目を伏せた。
「サナ様だけは違ったんだ。」
「……私……ですか?」
「僕達は9歳の時に話をしたことがあるんだ。まだ顔を隠していない僕に他の女の子達は皆欲情したようななんとも言えない心地悪い目線を向けてきたけど、サナ様だけは違った。ただ一人の人間として僕を見てくれた。」
レオン様。違います。それは私がすでに初恋フィルターを装着していたからなんです。だからアンサー様以外の人をそういう対象として見れなかっただけなんですー。それだけなんです。だから、今はレオン様の美しい顔に欲情してます。ひぃぃ。ごめんなさい。
「それに僕が顔を隠してからもサナ様だけは何も変わらなかった。何も変わらずに僕と接してくれた。」
レオン様はそう言って優しく私を見つめた。
溶けてしまいそうなくらい胸が熱くなった。……だけど。
「あの時から僕はずっとサナ様のことが、好……。」
「レオン様っ!! それは違います!」
「えっ?」
「それは……それでは……私のアンサー様への勘違いと同じです。それはきっと恋ではありません。
たまたまそれが私だっただけです。それが私でなくてもレオン様はきっと同じように思ったのだと思います。
……それが、私でない他の誰かだったとしても……。」
「サナ様が好きだよ。」
「……へっ? 今の私の話聞いてました?」
「僕は何度も何度も思ったんだ。サナ様と話をするたびに、サナ様の笑顔を見るたびに、それが君で良かったって。」
「……私で、良かった?」
「あの時、話しかけてくれたのが君で良かった。好きになったのが君で良かった。何度も何度も思ったよ。サナ様はアンサー様に対してそんな風に思ったことはあるの?」
「ないです……たったの一度も……。」
「なら僕のサナ様への気持ちとは全然違うね。」
「……レオン様……。」
「サナ様、真っ赤だよ。やっとサナ様が僕を意識してくれるようになったんだ。これからは遠慮しないよ?」
とても美しい顔をほんの少し赤くして微笑むレオン様が素敵すぎて、興奮しすぎた私はそのまま公爵家で気絶した。




