2, なあ、ゲームしないか?
あの状況の、ちょうど3時間ほど前のこと。帰りのホームルームを終え、学校に置いていく教科書を選別していたとき、後ろの奴が声をかけてきた。
「なぁ裕二、VRMMOって興味ある?」
「人並みには」
そりゃ家に完全没入デバイスが一応あるんだから、嗜み程度ではやるさ。と返答する。健太はそうかそうかといいながらニヤニヤとしながらうなずきまくる。
「そりゃちょうどいい。最近ハマってるのがあってさ、パーティー組んでくれないかな」
目線があざといといえばいいのか。そんな顔、声色で言われたら、女子の頼みかのように断れない。仕方ないから行こうと思う。
「いいけど……今日から始めるけど、それついていっても大丈夫なの?」
「大丈夫。過疎ゲーだから最悪誰でもいいんだ。それに、裕二なら絶対にいけると思うし」
いけるとは? なにか悪いことを企んでるのではないかと疑ってしまうが、健太に限ってそんな騙すような真似はできないと信じている。健太はいつもバカ正直なやつで、良い友だ。
「……なら行くわ。んでどうすれば」
「じゃあ、これが招待コード。そのサイトを見ればわかるから。チュートリアル終了後のログインすぐの広場で待ってるよ、できるだけ早くね」
そう早口で言いながらノートの切れ端を押し付け、逃げるように帰っていく。基本無料ゲーらしく、家に帰って落としたらすぐに行くことになった。VFFというタイトルらしいが、バスの中で検索したけど公式のページとダウンロードページしかなく、Wikiなどは引っかからなかった。それどころかニュース記事もない。過疎とは言っていたが、どんだけの過疎ゲーなんだろう。まあ健太がリードしてくれるだろうし、不安は残るが大丈夫だろう。
電車に揺られながら、唯一の情報源である公式サイトをチェックする。グラフィックはリアルとアニメのちょうど間くらい。そんなに地雷ゲーな予感はしない。PVもまあ女アバターが強調されてたけれど、この可愛さは宣伝に使わない手がないよな。キャッチコピーは「あなたを、新天地へ連れて行く」だそう。いかにもな感じのよくあるゲームだ。
なんというか、プレイするのに招待コードが必須ってそれのせいでダウンロード数が伸びずに過疎ってるんだろ、と思ってしまう。β版でもないのにどうかと思う。
なにはともあれ、やってみないとよくわからなそうだ。家の最寄り駅に着くのを、そわそわと待つ。サンタクロースが来る夜のように、わくわくしている。
次話は明日(21日)の昼12時に投稿予定です。5000字までは1日2回行動を目指してます。