第1話 もどかしい心の闇
他人の目というのは、自分が思っているより冷たく、温かく、あまり見られていないのかもしれない。なにか始める時、人はみんな、初心者だ。少しずつ慣れていき、それで上達していく。出来てるところを切り取れば、それがわからない。たとえ、偽物だとしても…。
人は皆、謙遜する。ほとんどの人はなぜか、自分を低く見積もる。なりたい自分は、いつも高みにあるのに。さらに、高みに登ることが出来なければ、人は、現実逃避する。妄想だ。
しかしこの物語は、その妄想とあることをして、自分の夢を叶えていく。実態のない妄想は、時にイメージトレーニングになる。そして、そのイメージトレーニングをすでにある実態になることが出来れば、それは、本物になる。だが、それは儚い。
中学3年である有馬 優斗は、日々の暮らしに満足していなかった。豊かな暮らし、仲間と過ごす時間、平凡な日常なのに、とある点で憂鬱としていた。
それは、己がみんなから見れば、真面目で優しそうで、しっかりしていると思われていることだ。
本当はみんなから、破天荒なことをして注目を浴び、スターになりたい。そんなことをして、人の役立ちたい。有馬は普通の人にはなりたくなかった。
しかし有馬は、気が弱かった。小学生の頃、少年野球チームに所属しており、そこの監督の指導が怖く、いつしか萎縮してしまった経験があるからだ。
だけど有馬は、どういう訳か、萎縮しながらもそのチームの中心選手だった。
現実逃避をしていた。有馬は自身を某プロ野球選手に見立てて野球をしていた。その選手になりきることで、
(僕はプロだぞ!分かっているのか?どれだけすごいか!)
と思い込んでいた。
最初は心を落ち着かせるためその選手になりきったが、時が経つにつれて、不思議とプレーが良くなっていた。
小学校でも有馬は、萎縮していた。小学一年生の時、女の子に鼻くそをほじっている姿を見られ、キモイと言われた経験があるからだ。
しかし有馬は、女の子に対して傍から見れば、萎縮しているようには見えなかった。それは、女の子に好感を持たれるように、また自分を真面目でいい人になりきる。そう、なりきるということをしていたのだ
嫌だった、本当の自分をだせないのは。
それでもなりきることで、事なきを得ていることは、事実だった。
有馬は好きな女の子がいる。佐伯 陽菜という学年のマドンナだ。でも、告白することはないだろう。
告白することで、単純にみんなからヤジられるのが嫌だからだ。告白してる奴はいるのに。有馬は心が傷つかないナニかになりきった。