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砂漠の色  作者: savan
私と何かと何かと私
7/13

干渉


無限に続くとさえ思える暗い道、

歩みの音は反響し、

何重にも重なった。



少し前、

そうネハからしてみれば少し前は、

見渡す限り地平線で覆われた世界が広がっていた。



「……何処だ……何処だ。」




あれからどれだけ歩いただろうか?

数千時間?

否、それは違う。


では1.2465e+7時間?、

それも違う。




「……ここは何処だ。」



実に4.38e+7もの時間を、

ただひたすらに歩いて、

歩いて、

歩いた。


同じ速度で、

同じ歩数で、

同じ景色を見ながら歩き続け、

同じ回数アーシャを担ぎ直す。


何度も、何度も、何度も何度も。





「……何処だ……何処だ。」



同じ言葉を繰り返すネハ、

その声は足音と共に反響し、

自身に帰ってくる。



「……ここは何処だ。」


自意識を保つためか、

または自身に言い聞かすための言葉か、

真意はネハにしかわからない。



音のない世界で無理やり音を立てる、

一見無意味にも思えるその行為は、

ゆっくりと進むネハの足を助けている様にも思えた。




「……何処だ。」




何もない、何も起こらない、

しかし何かあるかもしれない、何か起こるかもしれない……そう

確率に絶対はない、

いつだって99%と1%の狭間で未来は揺らいでいる。



事実100%の確率で壊れていたアーシャは、

1e+20回の試行回数の末その確率を99%にした。


だがもしかしたらその後1e+20回連続でアーシャは動いたかもしれない、

そしたらアーシャの動く確率は50%まで跳ね上がる。


しかし50%を1e+20回連続で失敗すれば……


つまりそれだけ適当なのだ、

どのタイミングで結果を集計するかで、

確率は好き放題変動する。



「何処だ…。」


ならこの無限のように続く壁も、

永遠にたどって行けば何時か終わりがくるかもしれない。



だが何もせず歩き続けるだけでは、

外的要因に頼る以外未来を変える術はない。





「違う、アーシャが自身で見つけた特異点とは違う……私が見つけなければいけないんだ。」




そんな事はネハ自身がよくわかっていた。


未来が変わる瞬間を観測するだけなら簡単だ、

何かが乱数を引き当てるまで永遠に観測していればいい。



しかし観測する側からしてみれば乱数で起きた偶然も、

乱数を引き当てた側からしてみれば、

自身の行動によって起こった必然でしかない。



つまりネハが特異点を見つけるのは、

偶然ではなく必然でなければならないのだ。




「特異点を見つけた世界線の私は一体何をした……空間も時間もバラバラ、座標の算出は無駄、歩数呼吸回数行動時間その他出来るパターンは無限にある……。」



何もないこの空間でひたすらに試行錯誤を繰り返す、

考えればきりがないほどの些細な変化に希望をのせて、

ただひたすらに歩き続けた。






「クソッ……。」



実に歩き続けて8.76e+7時間、

太陽の動いてる世界であれば1万年程の時が経った辺りである。


あまりにも膨大なその時間も、

アーシャが特異点を見つけるのに要した時間に比べれば、

無いも同然の時間である。


しかしそれは観測するだけだった頃の話であって、

今のネハには時間以上の精神的負担がかかってる。



「後は何がある…私は何をすればいい。」



比較的やることが出尽くし、

ネハは苛立ちを足元の砂にぶつけていた。



蹴り上げた砂が自身をかすめて壁にかかる。

壁はその砂を受け止め、

砂は直ぐに下に落ちた。



「……物理。」



それを見たネハは、

確かめるように何度も壁に砂をかけた。



「フ……フフ」


その光景を見て震え始めるネハ。


「そうか……そう言えばそうだったな!」


今度はアーシャを下ろし、

砂を両手で持ち上げると、

それを砂時計の様に少しずつこぼし始めた。

 

「ハハハハハッハハハハハ!」


はたから見ればかなりの奇行ではある、

しかしこんな同じ事を1万年も続けていれば、

ネハ以外は遅かれ早かれこうなるのかもしれない。



「見つける時はあっけないものだな。」



全ての砂をこぼし終えると、

ネハは大声で笑いながら砂の上に寝転んだ。



「今の私は観測者ではない、つまりこの世界に干渉出来る……なぜこんな当たり前の事を忘れていたんだ一万年も!私は全ての私の中で一番の阿呆だな!」



それからうつ伏せになり砂を噛み始めた。



「これが不味いという感覚か、観測するだけという立場に慣れて私はまだ一度も、世界に干渉していなかったのだな……。」




しばらく黙り込んで砂の上で丸くなるネハ。


その光景は悪く言えば歪で、

前向きな言い方をすれば、

この世を堪能しているようだった。



「さて、解決法は分かった、しかしだ!」



ネハは一段落ついたのか、

立ち上がり砂を払うと、

顎に手を当て首を傾げた。



「問題はどうやってこの壁を物理的に破壊するかだな。」



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