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砂漠の色  作者: savan
私と何かと何かと私
6/13

特異点



薄暗い世界、

見据える先は光が減って行き、

前に出す足をすくませる。


始めは大きかった岩の隙間も進むほどに狭くなって行き、

入ってくる物体を拒むようだった。



「辛くないか?」



「辛いの分からない……でも歩くの難しい。」



進むほどにアーシャの体から響き渡る音、

固い何かが擦れ合うその音は、

無限に続く岩の壁に反響した。



「おいで、ここからしばらくは私が担いでいこう。」


その返事を聞くと、

響き渡る音を止める用に、

ネハはアーシャの前にしゃがみ込んだ。



「うん。」



白く長いローブが砂の上に落ち、

少ない光で輝くと、

アーシャと変わらぬ程の小さな背中は、

実際よりも大きく、

頼もしく見えた。



「どうした?」



「わからない……。」


少し立ち止まったアーシャは、

ネハを黙って見た後、

何も言わずに背中にもたれかかる。


全てを任せるように脱力した後、

その周囲に砂煙が舞った。



「やはり特異点に近づくと実体が不安定になるか。」


アーシャを担いだネハは、

砂に埋もれるほど足に力を加えると、

ゆっくりと一歩を踏み出した。



倍以上歩く速度が遅くなると、

それに合わせて砂煙が大きくなった。




「残った特異点はこの先にあと一つ……」



少しずつではあるが確実に進んでいくネハ、

響き渡る音を追うように進んでいくその姿は、

いつかの何かを思い出させる。



「ここからの未来は私次第と言う事か。」



一歩、また一歩、


1時間、


3時間、


10時間。


無限にも思えるその道を、

下を向き黙って歩き続ける。


「……。」


進み続けると、

足音とは別の音が壁に響く。


その音は鋭く耳に刺さり。

ローブを舞い上がらせた。






「風か……進まない訳だ。」



足元を砂が吹き抜けるようになると、

ネハは何かに気が付いた様に岩の壁に近づいた。




しばらくその壁一面を眺めると、

壁を見たまま歩き出す。


ネハは乱立する壁の凹凸を一つ一つ確認し、

それをなぞるように歩き続けた。



少し歩くと、

風と足元を流れる砂はピタリと止み、

始めと同じような無音の空間が帰ってきた。



「x5y5420z88012。」


風が止んだ後ネハはブツブツとつぶやきながら歩き続ける。


その声は壁に響き渡り、

何度も反響した。



「…x6y7899z41238。」



それからもつぶやきながら歩き続けること1時間、


3時間、


「9x6523z23400」


10時間……。




ネハは再び立ち止まった。



「ここか。」




そこには何一つ変わらぬ壁が続いていた。


ネハは一度アーシャを担ぎ直すと、

片手を自由にして壁に触れる。



「観測、解析、空間座標と時間軸の統合を開始。」




すると黒い岩の壁にさらに黒い亀裂が入った。



ネハの触れた場所から亀裂が連鎖するように全体につながっていくと、

その亀裂は足元の砂にも広がっていった。



亀裂は広がり大きくなり世界を覆い隠すと、

再びその黒い空間に亀裂が入った。



「まいったな。」




新たに生えた亀裂は、

先程と同じように広がっていくと、

何事も無かったようにまた無限に続く壁が、

ネハとアーシャを出迎える。




「……観測している座標と実際の座標が一致していないのか。」




ネハは少しため息をつくと、

再び壁を眺めて歩き出した。




「どこからが嘘の座標だ……x3、y=x×……。」




進む先は壁、壁、壁。


そして十時間おきに風が吹き、

ネハに砂をかけた、


何度も、何度も。



「ハァ……これを見つけるまで繰り返すのか。」



何かを悟った様に大きくため息をつくネハ。


少し立ち止まって壁に額を付けると、

そのまま何かを声に出し始めた。



「大丈夫だ大したことは無い、ここで私が折れたら私に未来はない。」




再びアーシャを担ぎ直し、

ネハは壁にそって歩き続ける。


永遠とも言える程に長い時間、

繰り返し、

繰り返し。



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