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砂漠の色  作者: savan
私と何かと何かと私
3/13

観測者



しばらく白い何かはそんな事を繰り返していると、

思い出したように黒い何かに近寄り音を出す。




「そうだ!なによりまずは挨拶からだったな、私の名前はネハ、この瞬間の為だけに生まれてきた観測者だ、よろしく頼む。」





黒い何かはそれをじっと見つめ、

ただじっと見つめた。







「そうか魂が無いから何もわからないのか……はしゃぎすぎて忘れていたよ。なにしろ誰かに声を聴いてもらうのは初めてでな、舞い上がって気が動転しているんだ。」








そして落ち着いた白い何かが、

黒い何かに触れると……








「聞こえるか?今私から聞こえるこの音は、声……そう心の音だ。」





「……」






「何を言ってるのかはまだわからなくていい、しかし話しかけられてる事、私が君に想いをぶつけている事は分かるだろ?」






何かは理解した。




理解という概念を理解し、

自分の聞いている音が音では無いということを。






「……ギギギギ」





何かは思った、

声という名の心の音をもっと聞きたいと。




歩き続けて初めて思うという概念を理解し、

願望を持って身体に力を加え、

意識を持って考え願った。






「改めて自己紹介しよう。」




そう言って白い何かは、

全身を包む白いローブから手を出すと、

その手を黒い何かに差し出した。





「私の名前はネハ、観測……いや元観測者だ、よろしく頼む。」





その声を聞いた何かは今まで一度も使ってこなかった身体パーツを動かし、

必死に行動を起こす。




「わあたnamaえ/・  ・  ・  ・  ネ^-は/ネha……かんそぐじゃ」






何かはその声を必死に真似し、

差し出された手を時間をかけて、

しっかりと力強く握った。






「ゆっくりでいい、時間だけは無駄にあるからな。」





ネハは強く握られた手を、

もう片方の自身の手で包み込む。




その手はとても冷たく、

柔らかく、

何かの硬くて燃えるような手とは対照的だった。





「ギ・・ッギギギ……ねは」





そこから何も起こらずに38時間、

ネハは黒い何かに話しかけ続け、

黒い何かはそれを組み替えて復唱し続けた。






「ネハ……観測者……私自己紹介。改めて、分からなくていい、時間は無駄。君は私で心の音…・・・」





「そうだ、私がネハ。ちなみに時間は無駄ではないぞ。」




灼熱の砂漠で太陽に照らされて120時間。


強く握られた手は離されることは無く、

ネハもそれに答えるように言葉の投げ合いに付き合った。






「ネハ、手冷たい私、手熱い、身体、熱い。」





「そう君は熱い、これが熱いという感覚だ。そして私は冷たい、これが冷たいという感覚だ。 」





それから161時間程話した辺りで、

初めて何かは手の力を緩めた。






「私は人、ネハは元観測者で、ここは砂漠……砂漠が熱いのは太陽のせいで、私が熱いのは太陽のせい。なら、太陽、嫌い。」




「私も太陽はあまり好きではない、しかし君達をずっと見続けてきたのは私と彼だけだ、だからあまり邪険にはしないでやってくれ。」




「彼は太陽、邪険……分からない。」




「嫌いにならないでくれと言う事だ。」





何時からか会話が成立し始め、

分からないことは自身から聞くようになった何か、

ここまで来るともはや何かは何かではなくなっていた。






「自意識の構築に161時間か……まぁこれは観測開始してからは予想通りだな。」





ネハはそう言うと同時に何かの手を引いて、

そのまま腰に手をまわし優しく立ち上がらせた。






「思ったより軽いな、こればっかりは観測予想ではどうにもわからなんだ。」




二体が立つとその背丈は互いに変わらず、

黒いローブと白いローブが混ざり合うその光景は、

この何もない世界ではとても美しく見えた。





「では切もいいしここいらで君に名前を作らないとな。」




「名前、私の名前。ネハ、ネハがいい」




「それでは名前の意味がないだろう。」





嬉しそうに話すネハは、

何かをゆっくりとその白いローブで包み込み太陽から隠すと、

静かに頭の横でささやいた。







「君の名前はアーシャ、希望だ。この世界に色を取り戻す、最初の希望だ。」





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