第81話 五人一組
「!」
炎は巨大な水の固まりにぶつかり水蒸気を上げた。
それと同時にふわりと大好きな匂いがした。
そして何かがハルを優しく包んでいた。
「何でまた俺を置いていくかなあ・・・。俺のこと嫌いなの?」
「そんなことないよ!でも、トウヤにおばちゃんのこと言いにくくて。」
「今まで離れてた分、一緒にいたいのが分からないのかな・・・。」
(あ、トウヤすねてる・・・。何か、可愛い。)
トウヤは口を尖らせながらハルを地面に下ろすと、後ろから来ていた敵に振り向くこともなく剣を投げた。
剣は正確に男の心臓を貫いた。
「あいつ・・・悪魔だな。」
シギがポツリと呟く。
その向こうでルカがコウの攻撃をかわしながら怒鳴った。
「おせえんだよ!このへらへら野郎。」
「はあ、五月蝿いなあ・・・。やっぱり一人で殺ってるほうが静かでいいかなあ。でもハルと離れたくないし。」
トウヤはハルに微笑むと後ろの構成員から剣を抜き、一瞬消えた。
次の瞬間本調子でないソウマと戦っていた構成員の首が落ちた。
そしてまたハルの隣に立った。
「・・・でも、それでも・・・信用できる奴らが側にいて、そいつらと一緒に戦える。それが一番贅沢だよね。」
トウヤはハルに嬉しそうな笑顔を向けた。
「支えて頼ってだな。」
シギはそういうと口の端を持ち上げる。
「お、お前からそんな言葉が出るなんてな。」
「ルカ、茶化すもんではないですよ。」
「お、悪い!さて、やるか!ほら、ハル!」
ルカはハルにおもむろに苦無の半分を投げた。
それを見てハルはニヤッと笑う。
「あ・・・まさか久しぶりにやるの?」
「おうよ!その為に持って来たってんだ!」
「昔、一回これやってメンターに勝ったね。」
ハルはシギにむかって走り出した。
シギは分かったようにハルの方を向くと手を添えた。
ハルはシギの手に足をかけ宙へと舞い上がと構成員たちに投げつけた。そして地上ではルカは苦無を水平方向に投げ、構成員たちはそれを避け苦無は縦横無尽に至るところに刺さった。
「苦無など、殺傷能力はない。」
ある構成員はそう言って笑った。
けれどその苦無にシギが鋼線を巻きつけ、トウヤの水の魔法が蛇のようにとぐろを巻き囲んでゆく。
まるで蜘蛛の巣のように三次元に張り巡らされた触れれば切れる鋼線の中で、水の蛇が追い詰めそして弾け、あたりを水で浸した。
「逃・・・げられない。」
コウは鋼線の中で呟いた。
ルイはただハルを見ていた。ハルもルイを見た。
「分かってますよね。今、電気流せば貴方たち死にますよ。」
ソウマの楽しそうな声が響いた。
彼らの足元は水浸し、上に逃げようにも触れれば身を切る鋼線。
電気を流されれば逃げる場所はなかった。
「一番若いとなめてかかったようだ・・・。暗部まで使っていたか・・・。」
コウは眼鏡をあげてハルを見て笑った。
「彼女だけでも助けてくれないか・・・?」
「コウ!何いってるの?」
穏かな顔をしているコウにルイは掴みかかった。