第80章 第十章 五人
第十章 五人
「ここか・・・。」
山の中腹の洞穴の前まで来て四人は足を止めた。
月明かりの届かない穴は暗く、まるで虚無の空間の様だった。
息を一つ吐きハルは足を踏み出した。
けれどひんやりとした洞窟の中ですぐ古びた扉が行く手を阻んだ。
手をかけると重く、踏ん張ると傷が痛んだ。
「どけ。」
シギがその扉に手を掛け扉を開いた。
顔を見合わせ足を踏み入れると、ルカが指の先に炎を浮かべ明かりを作った。
中は下へと続く鉄の階段がつけられ、乾いた土の壁が続いていた。
階段を下りきるとドーム状の広い空間が広がっていた。
「歓迎していただいているようですね。」
ソウマが見回して笑う。
ざっと見て十人程の構成員が自分たちの前、横、上にいた。
「来ちゃったのね・・・。」
ルイが残念そうに呟く。
ハルはルイの目を見ながら小さく頷いた。
「私としてはあんたを殺したくはなかったんだけど、命令だし仕方ないのよ。ごめんね。」
「ここへ来たのは私の意志です。命令でもなんでもなくて、私が来たいから来たんです。だから何があっても後悔なんてしません。」
「意志か・・・。必要ないね、組織には。」
ルイはそう呟くと鞭を鳴らした。
それと合図として各構成員が武器を出す。
先手を取ったのはルカだった。
炎の魔法で爆発を引き起こし、避けた構成員にソウマの電撃が流れたシギの鋼線が絡みつく。
次々、炎を繰り出すルカを押さえようと撃ちはなった構成員の弾丸はハルの右の銃の弾丸に軌道を反らされ、驚く間もなく撃った本人はハルの左の弾丸に倒れた。
ハルの足にルイの鞭が絡まった。
鞭からは油の匂いがした。
ルイが指を鳴らすとそれを発火源にして火が鞭を伝わり足に炎が絡みついた。
ハルは身をよじってルイの肩を狙ったが、手裏剣がルイを守った。
そして足がふさがれているハルに手裏剣が飛んでくる。
それを塞いだのはルカの刀だった。
「おい、ハルの丸焼きになる気かよ!」
ルカはそのまま鞭を斬ると手裏剣を投げていたコウに切りかかった。
コウはルカの一撃を篭手で止めルカを殴り、ルカは衝撃で吹っ飛び壁に体を打ちつけた。
「ルカ!・・・!」
突然立っていた地面が割れた。
後ろでは構成員が拳を地面にぶつけていた。
ハルは飛び上がって宙返りしながら銃を撃ち、構成員の足に当てた。
けれど、そんなハルに別の方向から炎が襲った。