第36話 それぞれの夜
「こんなに早いなんてな・・・。」
ルカは部屋で自分の武器を装備していた。
刀に苦無、手榴弾。
ソウマも手裏剣を何種にもわたって装備していた。
あえて二人ともハルには触れなかった。
ハルはただ静かに手を洗っていた。
「決まったぞ、集まれ。」
メンターは部屋に入ると地図を開いた。
先ほどまでメンター会議を行い各隊の状況を把握した上で配属が決まった。
「戒は裏門から突入し敵の霍乱を行う。できるだけ神の御剣を殺せ。」
ソウマがメンターにハルはといった合図を送るとメンターは頷いた。
「ハル。お前も聞け。ここで手柄を立てれば謹慎もなしだ。俺が掛け合う。」
「俺はこんなやつ要らない。」
ルカは冷たく言い放った。
けれどハルは何も言わず地図を見た。
「お前は来んな。足手まといだ。」
「行く。」
「二人でやる。お前は要らない。」
ルカはもう一度強く言うと、ハルを突き飛ばした。
けれどハルは負けなかった。
すぐに銃、手榴弾を装備し、小袋をいくつも外套の下に装備した。
「霍乱は各門一隊ずつ、門の敵を排除すればそこから二隊潜入してゆく。それ以外にも重火器部門が空と陸から定期的に爆撃を行う。注意しろ。作戦を終え国王を暗殺し終えれば赤い狼煙があがる。そうすれば組織に戻って来い。」
(勝つ以外、帰れない。)
ハルは唇を噛み、爪が食込む程拳を握った。
「よし行って来い!ついでに私情は捨てろ。いいな。命令だ。」
メンターは笑っていた。
三人は頷くと入り口へと向かった。
既に数隊が姿を見せていた。
「何でシギなんだよ。何であいつが神の御剣なんだよ。」
「ルカ私情は捨てなさい。死にますよ。」
「くっそ!」
ルカが思いっきり蹴った壁にはルカの足型がしっかりついていた。
「ハル。君が変な行動をすれば私たちが君を殺します。」
「分かってる。でも、でも二人のことだけは何があっても裏切らないよ。」
「もう十分裏切られた・・・。」
ルカはそう吐き捨てるとハルを見ることもなく外へ出た。
「えらく怖い顔をしてるんだね。」
総裁は寺の中で手を合わせていたが足音を聞き振り返った。
「当たり前だ。何でハルをつけさせた。」
「公開処刑されなかっただけでもありがたいと思って欲しいね。」
カイクは総裁を睨む。
総裁は笑ってもう一度手を合わせた。
「お前ハルを殺すつもりだったのか?」
「当たり前だ。元からそのつもりだ。ハルは今日ここには戻ってこれない。暗部にはハルの暗殺を命じた。残念だったな。お前のお気に入りだったが、情をかけすぎたな。」
カイクは何も言わず部屋を出て行った。
「お父様何処へ?」
「ああ、城で緊急会議だ。」
トオルは何か言いたそうに父を見ていた。
「どうした?言いたいことがあれば言いなさい。」
「でも、今からお仕事でしょ?」
「気にするな。言いなさい。」
「あの・・・結婚をやめたいんです。」
「好きな男でもいるのか?」
トオルは小さく頷いた。
「自分の立場は分かっています。でも、でも、私・・・。」
「今は良く見えているだけかもしれない。恋は盲目というからな。」
「・・・でもそれを見極めることすらできないんですか?もしかしたら運命の人かもしれないんです・・・。あの人が・・・。」
トオルは強い眼差しで父親を見ていた。
「初めてだな。お前が親にたてつくのは。」
「ご、ごめんなさい・・・。」
すぐに不安そうに一歩身を引いた。
「いや・・・。嬉しいものだ。では、これが終わって落ち着いたら家に連れてきなさい。私が見ていいと思えばアヤを説き伏せよう。」
「お父様!ありがとう!」
トオル嬉しそうには父親に抱きついた。
父は娘の顔を撫でて出て行った。
「あら、トオルそこで何をしてるの?」
「え・・・。あの、」
「お父様は?」
「今出て行かれました。」
「あら・・・会議の資料忘れていったわよ。」
アヤは持っている封筒を下男に預けた。
けれどトオルはそれを自分が握った。
「私、行きます。」
「こんな時間に?」
「ええ、届けるだけですもの。」
「じゃあ、国王様にご挨拶も忘れないで。」
そういわれると一瞬行く気が失せたが今は父のため役に立ちたかった。
「行ってきます。」
「くれぐれも国王様に・・・。」
「はあい。」
トオルは下男が馬車を用意するや否や飛び乗って城へと向かった。




