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GANG!!  作者: あかつき
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第30話 第五章 妄執

   第五章  妄執

「あ・・・。」

ハルは足を止めた。

静のミツだった。

昼食時間を少し過ぎ、落ち着いたレストランの窓際に一人で座っていた。

ハルが窓を叩くと手を振ってくれた。

「こんにちは。」

「みつかちゃったわね。」

「ここですか。」

「そうよ。ここなの!」

相変らず女の言葉で話をする男は嗜好は男なのかブラックを飲んでいた。

「えっとね。あのあそこで今接客してる彼!可愛いでしょ。」

やはり見ても普通の男。

けれどミツの顔は輝いていた。

ハルは断ってから前に座った。

「これからデートなの。まあ、公に手をつなぐことは出来ないけど、一緒にいられたら幸せよね。」

「いいなあ。一緒にいられるって。」

「フフ、そうね。お腹はすいてる?何かご馳走してあげるわ。何がいい?」

「え?いいんですか?嬉しい!」

「どうぞ、ここのお奨めは、このキノコグラタン。おいしいわよ。」

「じゃあ、それで。」

男は嬉しそうに彼氏を呼んだ。

「この子にキノコグラタン。お願い。」

「この子は?」

「会社の後輩よ。可愛いでしょ。」

「ああ、そうだね。」

何処からどう見ても文句のない普通の男。

注文を聞き終え男が去ると二人きりになった。

「今日はどうしたの?お仕事?」

「あっ・・・いえ。任務までに情報収集をしないといけないんです。」

「他のメンバーは?」

「ちょっと・・・いろいろあって・・・。」

昨日は墓の隣で寝ていたはずなのに気が付けば布団の中にいた。

起きると既にルカの姿もソウマの姿もなかった。


「ってゆうか、あれ誰だよ。」

「ああ、静ですよ。友達じゃないんですか?」

「俺知らない!」

レストランを見渡せる屋根の上から、ルカとソウマの二人が覗いていた。

「で、暗部ですか。」

「おう。暗部につけられてるらしい。」

ソウマはため息混じりにハルを見る。

「何故、ですかねえ。また何かやってるんですかね?うちの姫は。」

「さあ、だからこうやって調べてんだろ?昔みたいな・・・二度とあんな真似させるか!でも、俺も腹減ったなあ。何かくいてえ。」

「朝ごはん、あんなに食べたのにですか?」

「ハルのやつ一人でうまそうなもん食いやがって・・・。」


「あの二人を幸せにしてあげたいのよね。」

「コウさんとルイさん?」

「ええ。今でも二人は好きあってる。ルイが任務につくようになってよく二人で泣いてたわ。コウは自分が守ってやれないことが悔しいみたいね。毎日自分を責めて。でも、私はどうしてあげることも出来ない。二人の気持ちがすごく分かるのに・・・。」

「お待たせしました。熱いから気をつけて。」

彼氏がハルの前に器を置いた。キノコ独特の香とチーズの焦げた匂いが鼻をかすめた。

「おいしそう!いっただっきまあす!」

グラタンを見てハルはスプーンを握った。

「グラタン、久しぶりです。」

「食堂ではでないもんね。」

はい。と答えるのと同時に口にグラタンを入れた。

熱さに顔を上げると遠くにいたウエイターの男と目が合った。

ほんの一瞬だけれども値踏みするような視線。

「あ、熱い・・・けど、おいしい!」

「でしょ!毎年私もこれ食べてるのよ。・・・ね、戒って情報収集が任務なの?」

「あと、霍乱です。神の御剣の。」

「うちは暗殺部隊なの。やっと中堅として認められた感じ。でも話によるとそれが八部隊あるらしいから。手柄を上げようとすれば時間との勝負よね。」

ハルはスプーンでグラタンを口に運ぶともう一度ウエイターに目を遣った。

普通に他の客と話をしていた。

「あの・・・彼氏さんにはどっちから?」

「それがね。びっくりしないでね!向こうからなのよ!毎日通いつめてるから気にしてくれてたみたいで。」

「いいですねえ。運命みたい。」

「でしょ〜。私もトキメイちゃった。」

ハルは微笑むと水を口に含んだ。

水が減ると男が水を持ってやってきた。

「もうすぐ上がりそうなんだ。いつものところで待っててくれる?」

「うん、分かった。」

ハルが気を遣いグラタンを掻き込むとミツは焦らないでいいよと笑った。

「さ、私は幸せだし。あの二人を幸せにするために頑張らなくちゃ。」

「あ、私も手伝います。」

「ありがとう。さ、行こうかしら。」

ミツはハルが食べ終えたのを見届けてから伝票を持って立ち上がった。

「じゃあね。」

「ご馳走様でした。ありがとうございます。」

ハルが頭をさげると男は振り返ることなく人ごみへと消えていった。


「やっと、飯終わったのかよ。何話してたんだ?ったく。」

「待ってください。」 

ソウマはルカの袖を掴んだ。

街を歩く若者と同じような黒のショートパンツ、黒のブーツ、紫のロングマフラーといった風体の少女の表情が一瞬にして組織の人間の顔になっていた。

ルカもそんなハルの様子に気づき周りを見て固まった。

「暗部だ・・・。」

ソウマが視線を右下に落とすとそこには黒い外套の人間が立っていた。

ハルが動くとそれも動き出した。

「まずいですね・・・。さ、行きましょうか?」

「おうよ!」

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