第23話 第四章 捏造
第四章 捏造
「何してるの?」
「おや、珍しい。こんな時間に君が起きてるなんて。」
「うん、ちょっと考え事。」
ソウマはハルしか足を踏み入れないはずの墓の前立ち、空を見上げていた。
ハルはその隣に立ち、ソウマと同じように空を見上げた。
「今日あんまり星見えないね。雲が多いや。」
「それでもいいんですよ。風に当たりたいんです。ハルは眠れないんですか?」
「寝てたんだけど目が覚めちゃって・・・。ソウマも?」
「少し考え事をね・・・。」
「そっか・・・。」
ハルは包帯で巻かれた手を見つめた。
シギの攻撃で傷ついた手は少し熱く痛みがあった。
「薬・・・飲むの止めようかな・・・。」
「どうしました急に?」
「全然集中できないって言うか・・・感覚を研ぎ澄ませないって言うか・・・。ボーっとしちゃうんだ・・・。」
(つけられてることも気が付かなかったし。)
「君がそれで大丈夫なら止めるにこしたことはありませんよ。」
「そっか、なら明日は飲まない・・・。」
そんなハルにソウマは優しげな視線を送り、声をかけた。
「あの、明日のことなんですが・・・、トオルさんに会いにいこうと思うんです。」
「え?」
「鷹紋家に乗り込んで情報もらいに行きませんか?」
「え?本気で言ってる?」
「ええ、本気です。」
「それって、トオルさんを利用するってこと?」
「ええ。使えるものは何でも使います。」
「・・・わかった。」
それが世の中で卑劣な手段といわれていても反対する気にはならなかった。
人の心など無用の長物、そんなもの踏みにじる。
それがこの組織の日常茶飯事だった。
「そうだ、ルカから聞いたよ。キスしてたって。人前で。」
「ええ、しましたよ。彼女が話の中で公園でキスしたいって言ってたのでね。」
感想を聞こうとしたが、返ってくる答えなどないような気がして、ハルは質問を換えた。
「相手が誰でも出来る?」
「ええ。何言ってるんですか?今更。」
ソウマにあまりにも然としていわれてハルは空を見上げた。
「今日トオルさん、一体何があったの?」
「母親に朝一番に王城まで連れてこられたものの、どうしても嫌で逃げだしたと言ってましたが。」
「何が嫌だったんだろ?」
「だから明日訊きに行きたいんです。何かいい情報が得られるかもしれません。」
「うん・・・。分かった。じゃ、私、先戻ってるね。おやすみ。」
「ええ。おやすみなさい。」
ソウマを置いて組織への入り口をあけた。
この時間でも今から任務に旅立つ隊が装備の確認をしていた。
ハルはその隣を抜けて自室へと向かう。
けれど、何か気配を感じて振り返った。
(誰もいない・・・のに・・・見られてた?)
気味が悪くなった。
もしかしたらシギと会っていたのを見られたのかもしれない。
『お前誰かに見られてないか?』
そんなシギの言葉が甦って来た。
下手をすれば、自分も捕らえられて皆の前で引きちぎられるかもしれない。
自分のいる組織の奥深さを確認させられ、体が震えた。
急いで廊下を進み、曲がろうとして人にぶつかった。
「・・・何?どうしたの?慌てて。」
静の女と男二人だった。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「震えてるじゃない。何があったの?」
「何でも・・・ないです。今から任務ですか?」
「帰ってきたところよ。今から食事しようと思って。」
女はハルを立たせると蒼白な顔を見つめた。
「ほら、あんたもおいで。何か食堂で温かいものでも飲みなさい。」
「え?でも・・・。」
後ろの男二人はお互い顔を見合わせそれからハルを見た。