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GANG!!  作者: あかつき
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第18話 ねちっこい視線

「ハル!起きろ!ハル!」

「あ・・・。夢・・・。」

(嫌な夢・・・みちゃった。)

「目が・・・覚めてよかった。夢・・・か。」 

「何寝ぼけてんだ?」

ハルは覗き込んでいたルカの顔を見て安心し笑みをこぼした。

いつの間にかルカの膝枕で眠ってしまっていたようだった。

「うなされすぎ。」

「ごめん、ごめん。」

悪夢のせいか背中が汗で濡れていた。

起こす気力がなくその場で息を吐く。

「大丈夫か?」

心配そうにルカは掌をハルの額に乗せた。

その重みが妙に優しく思えた。

ハルはルカのその手を確かめるかのようにその手の上に自分の手を重ねた。

「結構寝てた?」

「おう、寝てたぜ。まあ、お前が寝てたおかげでばっちり観察できたけど。」

「ならおっけえだよね。帰ろうか?」

ハルは起き上がろうと体の向きを変えた。

けれどすぐにうっとりと目を細めた。

「すごい・・・。」

「え?」

「ね、壁が光ってる。」

傾きかけた陽の光を受け、正門を囲む白い城壁が金色に輝いていた。

その光は自分をまるで包み込んでくれるかのように優しい光で、悪夢で穴の開きかけていたハルの心を満たすのに十分なものだった。

「・・・綺麗・・・。」

「ほんとだな・・・。」

二人は手を重ねたまましばらくそれを眺めていた。

「そろそろデートどうなったか見に行くか?」

「うん。」

ハルは体を起こすと回りにいるカップルを見回した。

絶好のタイミングと踏んだのかここぞと口付け合う恋人達がたくさん周りにいた。

ハルは思わず呟いていた。

「人前でキスか・・・。いいなあ。」

「したいのか?ん?するか?」

「しないよ!何でルカと!」

「ひでえなあ。」

ルカは笑って先ほど来た道を戻ってゆく。

大通りはまだこれから長い夜を楽しもうとする若者で溢れていた。

「あれ?いない。」

先ほどの店にもう二人の姿はなかった。

「仕方ないな。報告を後で聞くとするか。で、ハル。気づいてる?」

「え?何?」

ハルは涎でもついているのかと自分の顔を袖でこすった。

けれどルカはハルの鼻を摘まんで笑った。

「やっぱ、気がついてないのか。俺らさあ、さっきから誰かに目えつけられてるみたいだ。今日の視線はえらくねちっこい。どうする?」

「・・・まく。」

「だな。お前右。俺左。目処は三十分後、いつもの三叉路。」

「うん、じゃあね。」

二人は夜の街に繰り出す若者の集団を見つけるとその影に隠れて分かれた。

(ほんとだ・・・気づかなかった。)

ハルは全速力でわき道を走りぬける。

大通りから一本入っただけで人通りが全くといっていいほど消えた。

自分を追いかけるのは一人、けれど、気配はぴったりくっついいた。

(こいつかなり訓練されてる?)

ハルは角を曲がって更に速度を上げて走った。

徐々に相手との差が狭まる。

(やばい!追いつかれる!)

目の前に大通りが現れハルはそこへ飛び出した。

行き交う人の間をすり抜け駆け抜ける。

けれど、人ごみのせいで相手の小さな気配が感じられなくなった。

ハルは薬を飲んだことに後悔していた。

全く感覚が研ぎ澄まされなかった。

(何処?)

自分の正体がばれて追いかけられているのかトオルに関わった為に追いかけられているのか、見られているだけか、攻撃されるのか、負の可能性を考え出したらきりがなかった。

ハルは相手を確認するためにもう一度脇にそれた。

細道に入っても気配は全く感じなかった。

(いない?)

けれどすぐに嫌な気配を感じた。

体すべてを舐めるように見られているかのような視線。

背中に悪寒を感じ、身を守るため壁にもたれる。

けれどハルが上を見ても左を見ても右を見ても誰もいない。

「どこ・・・。っつ!」

ハルに小刀が飛んできた。

身を翻しかわしたものの、その動きを予測していたように次の攻撃が目の前まで迫っていた。

「!」

体を仰け反らせ、地面に手をついてよける。

けれどその手さらにもう一本小刀がかすった。

血が手から滴る。

(無理、私より格上・・・。)

けれど逆に小刀の軌道から大体敵の位置は把握できた。

ハルは銃を握ると大通りの向こうめがけて撃ちはなった。

弾はほんの一瞬人の切れた大通りを横切り垂直に進んでゆく。

気配が消えると、ハルは逃げ切る可能性に賭け走り出した。

どれだけ押さえても、切れた皮膚から走るごとに血が落ちた。

血をたどれば居場所が見つかる。

角を三つ曲がってハルは鞄からハンカチを出して押さえた。

(早く止血して、逃げないと・・・。)

けれど視界の端に人が立っているのが見えた。

(嘘!早い!)

慌てて銃を構える。

しかしその手はつかまれねじりあげられた。

一瞬のことで相手の姿も何も見えなかった。

逃れようともがくと壁に体を押し付けられ体に痛みが走る。

「死にたくて、そんな遅いのか?」

声を聴いた瞬間ハルからは全ての力が抜けた。

「何で・・・。この声・・・。」

目だけ後ろを振り返る。

自信家の細い目がそこにはあった。

「・・・シギ・・・。」



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