第14話 第三章 欺瞞
第三章 欺瞞
「さて王城にどうやって忍び込むかですよね。」
ソウマは王城目当ての観光客で溢れかえったカフェのテラスでまるでこれから何処へ観光に行くか考えてるかの様に呟いた。
ルカはクリームソーダのアイスを味わいながら観光客に写真をせがまれる兵士達を見、ハルは王城の周りを見ていた。
「でもなんかいつもより兵隊の数が多い気・・・するかも・・・。だっていつも塀の上には十秒おきに一人回ってくるぐらいだったけど、今日は五秒に一回、周りにも普通の軍人が歩いてる。」
「参りましたね。情報が漏れてるんでしょうか?そうなるとこれはかなりまずい話なんですけどね・・・。」
ハルは城壁から目をおろすと、兵隊の持っていた書類に目を凝らした。先ほどから通る兵士たちは何か同じような紙を持っていた。
「ルカ、目いいよね。何持ってるかみて。」
「たまにお前って変な集中力発揮するよな。」
「そこがハルのすごいところなんですよね。」
「ね。」
ハルはソウマに相槌を打って躊躇いなくルカのアイスにスプーンを突っ込んだ。
ルカはアイスを半分喪失したことに気付くことなく目を凝らす。
「写真・・・わかんねえ。白黒。」
「写真?」
「人の写真。」
「二・五の視力でもっと頑張れませんか?」
「無理、遠い。」
目を戻すと長いクリームソーダ用のスプーンを持って凍りついた。
「アイスが減ってる。」
隣のハルの唇には少し白いアイスがついていた。ルカの目に気がつきハルは慌てて口の周りを拭く。
けれどルカはハルのショートケーキにそのスプーンを差込み四分の一程度奪った。
「あ、ちょっと取りすぎ!」
「うっせえ、ばあか!」
「しかし、いつも君たちは仲良しさんですね。うるさいぐらいに・・・。ハハッ。」
ソウマは笑いながら周りを警戒する。
二人の声に兵士たちが数人三人に視線を送っていた。
けれど、すぐに若者の笑い声と理解したのかまた去っていった。
「で、さあ。入り口って全部で四つでしょ?正門と裏門、右と左。」
ハルは市販のガイドマップを開いた。
そこには大まかに観光客に開放してある正門や祭典用の建物の形は書かれていたが細かくは分からなかった。
本当の潜入用地図はソウマが装備していた。
「とにかくあんまり時間もないしな。早速潜入すっか?」
「待ってくださいもう少し見張りの兵士を見ないとね。交代などで人のいなくなる時間、むしろ多い時間。調べないと入ったはいいですが、出られませんよ。」
「そうだよ。ルカははやとちりだね。」
「はいはい。どうする?散って調べるか。」
「観光客を装って三人で堂々、正門から入ってみるってどうです?」
「そうだな。俺王宮って入ったことねえや。そういえば。どんなのかなあ。お宝いっぱいあるのかな。」
すぐそばの王宮の正門は入場待ちの観光客が列を成していた。
並んでいる者たちの方言からして地方出身者がほとんどのようだった。
「結構混んでるな。いつもこんなんなのか?」
「順番待つの・・・面倒だね。眠いや。ルカだけ並んできてよ。」
「はあ?お前が並んでこいよ!」
ソウマは暫く列に視線を送っていたがすぐに気がついたように目を戻しお茶を口に含んだ。
「入り口で身体検査してますね。最近暗殺が流行ってますし。ここの人たちも警戒するようになったんでしょう。今は昼下がり、こうなれば閉場前に来ましょうか。きっと少ないですよ。」
「むしろその方が動きやすいか。観光客多いと俺たちの動き見られるかもしれないし。」
「ですね。今行けば本当に観光して終わるでしょう。城の中では素晴らしい絵画や工芸品画陳列され、見学できるそうですから・・・。」
「工芸品なんて興味ねえや。そんなもん見てるなら体鍛えるほうがいい。」
すると隣でハルが小さな声で筋肉馬鹿とつぶやいた。ルカはそんなハルの頭を軽く叩いた。ハルもそれに応戦して叩き返す。
「ほら、二人とも子供みたいなことやめて。では今は城の周りを散策のフリをして兵隊さんの動き観察しましょうか。」
「じゃ、何処に行こう?」
「よっしゃ。俺次チーズケーキ。」
「え?食べ物?もう無理だよ。」
「あの、私ロールケーキ食べたいです。」
「ロールケーキかあ、それもいいなあ。」
ルカは答えてから慌てて振り返った。
ハルの声ではない知らない女の声。
ソウマとハルも思わず声のするほうに視線を送った。
ソウマとハル、二人の若い見たこともない女が一人立っていた。