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死んでもいいわ
「ねぇ、今日の月は──」
いつものように、横顔が見たくて嘘をつこうとした。
でも少しだけ欲張りだったらしい。
月は柚乃の顎をくいと持ち上げ目を合わせた。
「ボクは君のためなら死んでもいいよ」
目をぱちくりとさせる柚乃に、今度は月が微笑む。
「最近知ったんだ。この言葉の意味も、それの返答も──」
月は空を見上げた。
「ユノがこうして月を見上げるボクを見ていることも。違うかい?」
「あ、あってるよ」
柚乃は顔を真っ赤にして俯いた。
「なぁユノ。今日は月が綺麗ですね」
「私、死んでもいいわ」