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IFファーストキス
「ね、キスしてよ月君」
とんとん、と柚乃は己の唇を指さしながら月を見つめた。
それを聞いた月の顔は真っ赤に染まる。
「そ、そんなこと言われても……じゃあ、せめて手の甲で勘弁してくれ」
これは忠誠を誓うための儀式だ。
そう自らに言い聞かせながら、震える手で柚乃の手をそっと持ち上げた。
高鳴る胸を抑え、ゆっくりと顔を近づけ目を閉じる。
「隙あり」
手の甲につく一秒前。柚乃は月の手を引き、そっと唇を奪った。
ちゅ、と軽く音が鳴る。
「もらっちゃった。月君の初めて」
困惑する月に、ふふっと笑いかけた。