プロローグ
いままでまともに書いたことがあるのは中学生の卒業文集が最後です。
今回はひょんなことから物語を書いてみようと思い筆を取らせていただいた次第でございます。
つたない文章で、読み難いかと思いますがお付き合いしていただければ幸いです。
気が向きましたら是非最後までお付き合いください。
それでは始まります。
「えっと……彼女が話しに聞いていたあれですか?ていうかここ凄い臭いなんですが
こんな場所に生き物が住めるんですか?」
暗く狭い、いわゆる牢屋のような部屋の入り口で男の声が聞こえる。
聞きなれない声だ。
時間にしても食事は先ほど支給されたし。
教育といわれている物も今日はないはずだ。
普段なら入ってくる人間はみな事務的な内容しか話さない。
会話のような会話など数年前に他界した母との内容くらいのもだ。
そんな環境で育った私だからか、それともただ興が乗ったからか。
鎖でつながれた足を引き摺りながら、入り口へと向かった。
入り口では、監視員二人がぎょっとしたような目でこちらを見てきた。
それはそうだろう、普段なら部屋の奥から自ら来ることはない。
我ながらおかしな話だがここを気に入っているし別段出ようとも思ったこともないのだから。
だが、おそらく声の主であろう青年は違った反応をした。
私を見ると少しおどろいたような反応をしながらも、人のよさそうな笑みを浮かべこう言った。
「君がアインだね?これから一緒に旅をすることになったアッフェ・ル・ノアだ
よろしく!」
青年はそう言うとにっこりと笑い扉の隙間から手を差し伸べた。
人当たりのよさそうな顔、そしてある程度身分の高そうな装いの青年だった。
アポなしで私の領域に近づきあまつさえそこに手を突っ込んでくるなんて。
怪訝な表情を浮かべながら私は答えた。
「あなた・・・・・・私のことを知っていて声をかけているの?
私の領域だと知ってその手を差し出しているの?
食べてもいいのかしら?」
それを聞くと監視員はあわてた様子で青年を扉から放そうとしていたが、あまり乱暴なことをできる相手ではないのか離れてくださいや、手で制すだけで強行手段には出ようとしていない。
青年はそれを気にした様子もなく少し困ったような笑みを浮かべながら、言葉を選ぶように思考している。
返答しだいでは本当にこの右手だけでも食べておやつにしようと思いながらも、いつもと毛色の違う来訪者に少しだけ期待を抱きながら青年の返答までは待ってやろうと思った。
すると青年は何か思いついたように満面の笑みを浮かべながらこう言った。
「僕の手を食べるのはいいですが、その代わり、僕と友達になってくれますか?」
あまりにすっとんきょな回答が飛んできたものだ。
正直予想していたものとはまったく違っていた。
謝ってくるか、はたまた恐怖のあまり逃げ出すか。
私という存在を知っている者であれば間違っても『友達』なんてことを言ってくる人間はいない。
「フフッ……」
「あの、僕何かおかしなこと言ってしまいましたか?」
青年は困った顔を浮かべながらオロオロしてどうしたらいいのか悩んでいる様子でこちらを伺っている
自分の存在を考えると正直笑えてきて仕方がない。
竜である私と友達。
しかもたかが人間という矮小な存在が私と。
「いいえ、失礼いたしました。あまりにも想像していた答えとはかけ離れていた上に面白かったのでつい笑ってしまいましたわ。
ごめんなさい。気を悪くしてしまったなら謝りますわ。ただ先ほどの答えであなたに興味が出たのも確かですわね。もう一度名前をおっしゃってもらってもよろしいかしら?」
青年は自分の名前を聞かれたことがうれしいのか、私の表情が柔らかくなったことに安堵したのか。
最初と同じようなやさしい笑みを浮かべながらこういった。
「僕の名前はアッフェ・ル・ノアだ。君の名前はアインでいいのだよね?これからよろしくね」
「そう、私はアインで間違いないわ。これから、というのがよくわからないけどあなたとの出会いは面白かったわ」
これが私とアッフェとの出会いだった。