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8年の時が流れ、キースの身長はぐんぐんと伸びて父を追い越しそして、周りの友人たちよりも長身となり、声はぐっと低くなり筋肉質になったかわりに、少年らしい線の細さや頬の丸みはまるでなくなった。
黒い髪と緑の瞳…それだけが同じ。
寄宿舎を出たその年のこと…
本格的に社交界に出たキースは…そこでレオを見つけた…。
侍女勤めを始めた姉のマリーの元を訪ねたキースは、王宮で近衛騎士の制服を着ているレオの面影を残した人物を見つけたのだ!
遠目にもすらりとした肢体に、美しくうねる輝く金の髪。
「姉上…あれは誰だ?」
マリーはキースの目線を追うと、そこに王妃の背後に控えて歩くきらびやかな近衛の女性騎士たちを見た。
「ああ、やはり目立つわよね?金髪の女性騎士でしょ?レオノーラ・ブロンテ伯爵令嬢よ。本当に素敵よね」
…レオノーラ・ブロンテ…だと?
伯爵令嬢だって?…
あれは…多分いや、確実にあのレオ…ではないのか?
夕方…騎士たちの仕事が終わるのを待ち王宮で待ち伏せた…。
「レオ」
女性の騎士同士で話しながら、王宮の建物から出てきたレオノーラを待ち伏せていたキースは試しにそう声をかけた。
レオノーラははっとキースを見た。
「俺を覚えているか?」
レオノーラは少し頷くと
「キースだろう?」
と微笑みを浮かべた。
周りの女性騎士たちは、レオノーラから離れない。きっと、レオノーラを待ち伏せする男が他にもいたのかも知れない。
残念ながら混みいった話は出来そうにない。
「正解だ…」
キースは覚えていてくれたことに喜び笑って答えた。
確実に、レオノーラはあのレオだ。
「ひさしぶりだな?」
背の高いキースと比べて、頭半分より少し下の背のレオノーラは、女性にしてはかなりの長身だ。
しかし、女性らしいラインを描く肢体はもはや男を装えるはずがない。
「そうだなキース、黙っててすまなかった」
それが何を指すのか…
きっと、女だと告げなかった事だろう。とあたりをつけた。
「ああ、でもこうして元気な姿を見れて嬉しかったよ」
それは間違いなく本音だった。
「ありがとう、わざわざ会いに来てくれたんだな?」
レオノーラが微笑んだ。
「じゃあ、行くから…」
レオノーラは宿舎に向かって他の騎士たちと歩いていった。
封印したはずの、想いが再びふわりとキースの奥底から漂ってくる。
何より、道ならぬ恋ではなかった…!
その事にキースは、笑えてきた。
なんだ…俺は、おかしくはなかったんだ…。




