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男の子の7歳と10歳の差は大きい。
卒業を迎えたキースたち、上級生。
学舎では、卒業を迎える生徒たちが喜びの顔を浮かべていた。
キース自身としても、身長も伸びたし学んだ事もたくさんあったが…。
何より、最後の年にレオと出会えたことはキースの中でとても大きな変化をもたらした。
レオに恥ずかしくないように、サボりもしなくなったし、剣の稽古も毎日朝に晩にするようになった。勉強も取り組んだ。
おかけで成績はぐんと上がり、教師たちも驚いたくらいだった。
キースは、目立つ存在ではあったが模範生とはほど遠かった。
勉強にしろスポーツにしても、ほどよい手抜きをしてそつなくこなしていたキースはすっかりなりを潜め、懸命に取り組む姿が見られたのだ。
キースは卒業を祝う下級生の中にレオを見つけて、近づいて言った。
「レオ、俺は寄宿舎に行って待ってるからな。来年入るだろ?」
キースがそういうと、レオは曖昧に返事をした。
「わからない。まだ決めていないんだ」
「えっ?」
このスクールの生徒の大半は王都の寄宿舎に進む。
「キースには正直に言うけれど、事情があってさ。行けないんだ」
レオは悲しそうな緑の瞳をキースに向けた。
今まで見たことのない、その弱々しい瞳の力にキースは胸の奥がざわざわした。
「なんで…事情ってなんだよ」
「ごめん!」
レオは踵を返して去っていった。
キースは、足が地面から生えた何かに絡めとられたかのように動けなかった。
ただ、去っていくレオの後ろ姿が小さくなるまで見ていた。
春と夏とレオのいた時はたったそれだけ。
その間にレオはキースに、大きな影響をもたらして、嵐が過ぎたあとのように…何もなかったかのように…姿を消したのだった。
キースは、厳しい寄宿舎入ると毎日が必死だった。上級生たちは厳しく、規律は多くて窮屈だった。身の回りの事から、何から何までしなければならない。
キースの入った寄宿舎は、中でも一番厳しいと有名だった。
翌年エドワードたちが入学してきたが、やはりレオの姿はなく、エドワードたちもキースの卒業と時以来わからないということだった。
もちろん、寄宿舎に入らないという選択もあるがキースは寂しく思った。
こんなことなら、家がどこかきっちり聞いておくべきだった。
これは未練なのか…?
どちみち、道ならぬ想いを抱いてしまっていた。
レオの事は思い出として、しまっておくべきなのだ…。
キースは、淡く経験した初恋…だったと思う…。それを封印することに決めた。
疼くような痛みをキースに与えて嵐が去るようにいなくなったレオ…。
儚すぎるキースの青春の思い出…