レオの変化
レオノーラは、これまでどんな事でも、自分が勝っている。と、そして絶対に負けないと思っていた。
しかし、今日の模擬戦を指揮をしていたキースは、堂々とチームを率いていた。作戦を立てて、勝利を得るために味方を鼓舞した。
キースは将来の自分の立場をわかった上で、行動しているとわかったのだ。
だから、たとえレオノーラに敗れて悔しがっても、すぐに負けを認められるし、そしてまた勝とうとするが、そこにこだわってもいない。
それは、将となるものは一番早く走れなくても、一番強くなくても、大切な事は味方を勝たせる。その事の方が大事だからだ。
その事をキースはまるで息をするかのように自然に、その考えが身に付いているんだ。とレオノーラは気づかされたのだ。
普段キースは、そんな責任感のある行動をしているわけではない。しかし、下級生は助けようとしたし基本的な所でおさえる所はおさえている。
レオノーラは身をもって、例えば剣で、喧嘩で負けたわけではない。
しかし、やはり違うものだ…と思い知らされたのだった。
近所の子供たちとは違い、やはり貴族の子弟たちの根底には、この国の貴族の男たちにある〝高貴なる責務〟…それがあるのだ。
レオノーラは急に自分が恥ずかしくなった。
思い上がりも甚だしい。
「父上…」
レオノーラは覚悟を決めて、声をかけた。
「レオノーラか、どうした?今日も模擬戦に勝ったと聞いたが…」
アルマンは言葉を切った
「どうかしたのか?浮かない顔をしているな?」
「父上の言う通りです。私は男じゃない…たとえ、剣では勝てたとしても、やっぱり違うんだ」
レオノーラは悔しげに言った。
「目先の勝ち負けだけにこだわってた俺は、すでにキースに負けていたんだ…」
アルマンは驚きの目を向けた。
アルマン自身、こんな形でレオノーラが敗北を感じるとは思っていなかった。
「今年のスクールが終わったら、辞める。言うことを聞くよ」
「そうか、私自身はそれが良いと思う。お前は女の子だ、どうしたってそれは変えられない…。いつまでも子供ではいられないんだ」
アルマンは、そっとレオノーラを抱き寄せて少し大人びた目になった娘を慰めた。
レオノーラがそう決意をしたが、今期いっぱい行くことを望んだのは、スクールが単純に楽しくて離れ難かったからだ。