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スクール内の木陰にある芝生で 上着を脱いで寝そべっていると、

「キース」

呼び掛けられて、目を開けると真上からレオが覗き込んでいて、キースはその美しい眼差しにドキリとされられた。

「…どうした?」

「どうしたじゃ、ない。授業が始まるってディーンたちが探していた」

あぁ…。サボるつもりで隠れて寝そべっていたとは、なぜかレオには言えず、差し出された手を握って起きあがった。

その手の細さにもまたキースは、ドキリとした。


なんだって、いうんだ…さっきから…

レオを見ると、動機がして顔が火照るのがわかった…。


脱いでいた上着の埃を払い、きちんと着る。

「タイが曲がってるぞ」

レオが手を伸ばして、整えてくれる。

至近距離にあるレオの顔。長い睫毛が、白い頬に影を落としていて美しいその顏にキースは見とれた…。


見とれた…って、俺は…まさか。まさか。まさか。俺は、…そっちだったのか…!!


「あ、ありがとうレオ。お前も行かないと遅れるぞ」

「走れば大丈夫だ」

ニヤリと不敵に笑うレオは、言うや否や、小鹿のように駆け出した。キースも後を負うように駆け出した。

前を行くレオの背で金髪が跳ねて揺れる。すらりとした脚が軽やかに地面を蹴る。


キースは後を追いながら、またしてもその姿にどぎまぎして次の授業は、どうやって受けたのか記憶が乏しかった…。


そっち…とはいわゆる、女より男が好きだというあれだ…。

キースは落ち込んだ…。

アークウェイン家はキースで途絶えるんだ…。


「…キース…おい、キース!」

近くで誰か呼んでいた。

ずいぶんと呼ばれていたらしい事に気づいて慌ててアルバートを見た。

「帰らないのか?」

見ると、教室の中はがらんとしていて、アルバートとディーンがキースを見ていた。

「帰る…悪いぼんやりしてた」

歯切れの悪いキースに、みんな心配顔をしていた。


どんよりとした気持ちのまま、寄り道もせずにキースは家に帰った。

一つ年上のマリーだけが、キースの家族だった。

「どうしたの?暗い顔をして!」

マリーがキースの頬を思いきり引っ張った。

「姉上、それ痛いし」

キースは細い手を払った。

父が物静かな人で、その影響かアークウェイン邸内はシンとしていて空気さえひんやりと感じる。

友人たちの家を訪れたキースは、自分の家はあまりにも無機質な雰囲気だとうちは変わってるんだ…と自覚した。


そのせいかも知れない…自分がおかしいのは…。


もうすぐスクールは終わりキースは寄宿舎に行く。

この家にマリーは独り残される。

「姉上…この家に一人なんて心配だな…」

「16になったら私も、侍女になって家を出るわ。だからそれまでは我慢するの」

にっこりとマリーは言った。

「侍女になれば、お金も入るし住むところもあるし…。だから心配いらないわ」

前向きな姉にほっとする…。


むしろ、途絶えてしまえばいいのか…こんな家など。


宿題をさっさと済ませてしまうとキースは、街に行って、姉の好きな綺麗なお菓子を買っていく事にした。

ふと見ると、下級生が街の子供に絡まれている…。


キースが近寄ると

「貴族の息子だからって、お前らが偉い訳じゃないだろ」

「遊んで暮らせていられるなんて、いいよなお前らは」

「ほら、言い返せよへなちょこ」

とからかっている。

「おい、やめろよ。貴族の息子に生まれたのも俺らが選んだ事じゃない」

赤色のタイは最下級生。

ちらりとみると泣きそうになっている。

一番目立つ少年は金髪に青い瞳でいかにも貴族の息子らしい整った顔だ。必至に泣くのをこらえようとして、睨み付けている。

一年目のお坊っちゃんなら、それも仕方ない事だ。

「偉そうにいうな!」

彼らは、背の高さで勝るキースに少し怯んだが、数では上なのでまだまだ優勢を信じて突っかかる。

キースは下級生たちを背後に守るように押しやると、いつ飛びかかられても良いように、準備をした。


向こうは5人…。

キースは1人…。

やばいなと思いながらも、放ってはおけなかった。

一人が殴りかかってきて、キースは避けつつ、肘を相手の腹部にいれ、もう一人を蹴りとばす。

その間に、パンチが頬に飛んできて、避けるともう一人のけりがキースの腹部に入った。

「…くっ…!」

やばいな…


と、一人が顔にもう一度パンチを放ったのを見ていると、突然の援軍がやって来た。

相手が攻撃を、受けてそこからはキースと援軍…それはレオだった。キースとレオは、一気に彼らにやり返した。

逃げていく彼らを見送り、爛々と目を光らせているレオに怪我が無いことにほっとする。

「ありがとうございました!」

「…あ、ああ。気を付けて帰れよ」

こくんとうなずくと、下級生たちは足早に立ち去っていった。


喧嘩のために、やや乱れた髪と服。家族に怒られるかも知れない。キースは怒る人も、いないが…。

「一緒に謝ってやろうか?」

「大丈夫だ、勝ったなら怒られない、と思う」

レオが言った言葉にキースは笑った。

「それ、レオの父上が言うわけ?」

レオはうなずいた。

「いつも言うんだ。勝ったんならそれでいい。負けたならもっと鍛えろって」

なかなか好きなタイプの父上だ。

くすっとキースは笑った。


レオの素直で伸びやかな気性はキースに眩しく映った。


父と会話なんていつしただろう?ふと思ったが、いまさら何を話せばいいのかわからない。

レオは、キースに色々な気持ちを呼び覚まさせる。


「レオ、そういうのなんかいいな」

キースは眩しくレオを見つめながら言った。

「そうか?うん。俺もそういうの、悪くないと思ってる」

にこっと屈託なく笑うレオが、可愛く見えた。


おい。キース、お前脳ミソ大丈夫か…!


きっと女の子が近くにいないからに違いない…。




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