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大蛸亭にて

 大蛸亭は、1階部分が食堂(兼情報屋)、2階部分が宿泊施設と、冒険者の宿としては一般的な造りとなっている。建物はそれほど大きくはなく、1階は、カウンター席が10席程度、テーブル席も10席程度と、どこにでもある町の居酒屋といったたたずまい。マッチョなオヤジが一人で厨房を預かり、十人並みの看板娘がウェイトレス役を務めるという家族経営で運営が行われている。

 また、壁際の一角には大きなボードが立て掛けられており、そのボードには様々な仕事の依頼を記した紙片が張り出されている。受けたい仕事が記された紙片をはがし、その旨を店のオヤジに告げると、仕事の請負契約が成立する。ちなみに、この店で紹介されている仕事は、郊外の農村での農作業の手伝い、とある屋敷の大掃除の代行、債権の取立てなどで、RPG的な世界観としては珍しく、あまり危険な仕事は持ち込まれない。それだけ、平和な秩序が保たれているとも言える。


 バーンたち一行は、この日の宿泊の部屋を取ると、何はともあれ腹を満たそうと、1階の食堂に集まった。

「重い! どうして、こんなかさばる荷物を持ち歩かなければならんのだ」

 船を降りてから成り行きで荷物運びを押しつけられた格好となったチャーリーが言った。

「まあまあ、これは大切な荷物ですから、部屋に置いたままにできないでしょう。それに、シーフのあなただからこそ、安心してお任せできるという面もあるのですよ」

 サイラスがチャーリーを持ち上げた。ただ、言い換えれば、泥棒の手口は泥棒に聞けということになる。チャーリーはチッと舌打ちして、黙り込んでしまった。

 バーンたちはテーブル席を囲むと、とりあえず名物のウルトラ・ジャイアントケルプのコース料理とアルコール飲料を注文して乾杯。配達依頼達成の前祝いとばかりに、宴会が始まるのであった。


 そして、周囲の客の迷惑を顧みることなく、宴もたけなわ……

「この、将来の大騎士、バーン・カニングが来たからには……」

「やめなさいよ、バーン、みんな、笑ってるわ」

 酒癖の悪いバーンにブレーキをかけるのは、マリーナの役割である。なお、他のメンバーについては、エディは極めてアルコールに弱く、1杯も飲み干すことなく酔いつぶれて眠ってしまい、サイラスはコップを片手に店のオヤジや他の客と話をして見聞を広め、ジギスムントは無言で延々と飲み続け、チャーリーはその横でブツブツと愚痴をこぼし続けるという、これがパーティーの毎度のパターンである。

「お祭りが近いからかしら、本当に、変わった人たちばかり集まるのね、この町には……」

 店の看板娘は、パーティーのメンバーを遠目に見ながら、ため息をついた。

 すると、知識の収集に余念がないサイラスは、目を輝かせ、

「ちょっと失礼、今、『お祭り』とおっしゃいましたか?」

 このサイラスという男、実は、美人を愛する以上に知識の収集を好むという、今風に言うオタクのような性癖を持っていた。

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