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ザ☆旅行記 外伝 バーン・カニング列伝  作者: 小宮登志子
第2章 運河とオクトハーブ自由市の歴史
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どこまで歩く

 ちなみに、ここは路上。

 チャーリーは寝不足で血走った目をこすりながら言った。

「ちぃ、一体、いつまで歩けば着くんだよ」

 荷物の届け先であるオクトハーブ前男爵の館は市庁舎の裏手にあり、市庁舎は港から程近いところにある。ゆえに、バーンたち一行は、すぐに目的地に到着し、荷物を渡し、仕事を終えるつもりでいた。

 ところが、なかなか前男爵の館にたどり着かない。確かに、市庁舎の入口までは、港から10分程度であった。ところが、そこからは(市庁舎や館を囲むのであろう)高い壁が延々と続くだけで、壁に沿ってどこまで歩いても、館の入口らしいものは見えない。

「泣き言を言うんじゃない。とっとと歩け」

 ジギスムントはチャーリーをにらむ。ジギスムントはストイックな性格で、自分にも他人にも厳しい面があった。チャーリーは「ちっ」と舌打ちして、黙ってしまった。「喧嘩しようにもドワーフの戦士が相手では勝てない」とでも、思ったのであろう。

 そうこうしている(壁に沿って何度も角をまがっていく)うち……

「あっ、あれは! 前男爵の館の入口じゃない?」

 十何回目かの角を曲がってすぐのところ、エディが言った。

 エディの指さす方向には、大理石の門柱や彫像、華美な装飾等々により構成された大きな洋風の門構えが見える。その門の両脇には、門番であろうか、完全武装の戦士が二人、槍を構えて立っていた。

「ようやく到着したようですね」

 サイラスはやれやれという顔で、額の汗をぬぐった。


 こうして、ようやくオクトハーブ前男爵の館に到着したバーンたち一行であったが……

「遅いっ! 一体、いつまで待たせるんだ!!」

 今度は、バーンが大きな声を上げた。

 館の門を前に待つこと数十分、まだ門は閉ざされたままであった。ただ、これは前男爵側から来訪を拒否されたわけではない。門番の曰く「ただ今、前男爵に確認してまいりますので、しばらくこのままでお待ちください」の「しばらく」が、数十分にわたって続いていたのであった。

「仕方がないわ、バーン。ここはどう考えても、『入っていいよ』と言ってくれるのを待つしかないでしょう」

 と、マリーナ。彼女は今日もバーンのなだめ役である。

「この将来の大騎士、バーン・カニングを待たせるなんて、許されない!」

「ちょっと、それはダメよ、バーン!」

 頭に血が上り門を蹴飛ばそうとしたバーンを、マリーナが体を張ってとめようとした、その時、繊細なレリーフが施された門扉が音も立てず動き出した。


 そして、門扉が完全に開いた先には、

「ようこそ、オクトハーブの町へ。遠路はるばるご苦労さまです。私が事実上の当主と言いますか、フランク・ヴィンセント・ハンフリー・オクトハーブでございます」

 オクトハーブ前男爵自身が、場違いな感もあるが護衛の戦士を大勢従え、バーンたちを出迎えていた。

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