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剣と創造のアリア  作者: 猫雲
1/2

#1 転生

感想、評価お待ちしてます!

(ここは、どこ?)

少年が目醒めたのは見たことのない部屋だった。

ウッド調の机、薄いピンクのカーペット、窓にかけられた白いレースカーテン。

どれも、16歳の少年の部屋としては異質なものばかりだ。

腰にかかるほどの金髪、黄色人種らしくない真っ白な肌。どれも、少年の知っている自身とはかけ離れていた。しかし、それよりさらに理解できないことに、白いワンピースを着ていた。

(さ、寝よう)

人は、自分に理解できないことがあると逃げるものだ。


少年が目を覚ます。その時には、すべてを思い出していた。

(死んじゃった……)

少年は、変わった子供だった。幸せな夫婦の間に生まれ、幸せな家庭で過ごしていた彼だったが、一つ大きな障害を抱えていた。

人はその障害をコミュ障とよぶ。頭ではいろいろなことを考えていても、いざ口に出そうと思うと、恐怖で控えてしまう。

そんな彼が意思の疎通を図る手段は、音楽だった。

言葉のように仔細な情報は伝わらないが、意思を表現するのには十分。そして、彼には幸か不幸か相当な才能があった。

庇護欲を掻き立てられる容姿も相まって数多の賞を総なめ。齢16にして音楽界に相当な激震をもたらした。

そして、有名になれば有名になる程、恨みを買う機会も増える。音楽以外にコミュニケーション手段を持たない彼はそれが特に顕著だった。

さらに不幸なことに、両親は変わってしまった。彼の稼ぎに、自分たちが働くのがバカバカしくなった両親は働くのをやめた。

(もう、普通の生活がしたい)

そう、願った時のことだ。

身の丈ほどもある照明が降ってきた。ネジが緩んでいたのか老朽化が原因か確かめようがないが、それが原因で死んだのは間違いない。


(多分僕は転生したんだだと思う)

幼少期の記憶がない転生など、珍しくないシチュエーションだ。

(普通の生活は……出来てないみたい)

つくづく不運なのか、転生した先でも澪は様々な問題を抱えていた。

一つに、この格好。これは別に澪の趣味なわけじゃない。父親から強要されてのことだ。

この世界は魔法もあれば、魔物もいる、物語のような世界だ。

それで、二つ目の問題だが澪には生まれつき魔力がない。

澪が生まれたのが一般家庭だったなら珍しくはあれ何ら問題はない。しかし、澪は貴族の三男。家族にも利用価値を求めるのが貴族なので、利用価値のない駄物として勘当されるところだったわけだが、彼にも需要があった。それも、相当な変態からの。

豚子爵という二つ名を冠する、メノス氏。彼は、エルフ唯一の貴族で、相当な好色家として有名だ。

彼は決して女の(・・)妻を娶らない。第一夫人、第二夫人とも男である。

年端もいかない可愛らしい少年を平民、貴族に関わらず家に連れ込む。そして、従者にしたり妻にしたりするのだ。

で、澪は彼のお眼鏡にかなったらしい。澪の家柄は貴族とはいえ男爵。子爵との繋がりが持てる機会は垂涎のものなのだ。

(逃げよう)

魔力を持たない澪は戦う力がないため、部屋から出ることが禁止されているとはいえ、見張りなどついていない。どうせ家の外に出る勇気などないと踏んでのことだ。

しかし、それも今日までの話。澪は、前世の記憶を取り戻したのだ。如何様にもなる。

(どうやって戦おう)

澪の家は、草原と森の分かれ目にある村を領地として与えられている。そのため、村から出れば草原や森の魔物との遭遇は避けられない。

(ステータス)

心の中で呟く。すると、頭の中に情報が流れ込んでくる。


****


レイ 16 ♂ 体力100/100魔力0/0


level1

腕力3

知力83

防御4

速さ6


スキル 事象創造 level 1

音楽技能 level uncounted


****


こんな感じだ。因みに、ステータスは誰にでもあり、自分のステータスなら誰でも確認することができる。

しかし、他人のステータスを見るには相当に高価な魔道具が必要らしいので、男爵家の三男坊風情に使うことは叶わない。

なら魔力がゼロなのがどうして分かったのか。それは、空気中の魔素と、体内の魔力が密接なつながりを持っているからだ。

魔力を持つ人間は、呼吸ですら魔力を放出する。これは、生体魔力放出と呼ばれる。そして、空気中に放出された魔力は魔素に還元されるため、少なからず周囲の魔素に影響が出る。

しかし、レイの場合影響が見られないとして、魔力がないということがばれてしまったわけである。

とはいえ、普通親にはステータスを話すものだが、レイのコミュ障は世界を越えても健在だったようで、明かされなかった。

まあ、それはともかくとして、澪の目下の目標は逃亡。変態貴族のおもちゃなど死んでも願い下げだった。

(事象創造……?モノを作れるってことかな?)

澪は、今一番ほしいもの、ピアノやバイオリン、ハーモニカなど楽器を想像するが、何も起こらない。

(違うみたい。じゃあ、これは?)

澪は、鉄を創造する。製品がダメなら素材ならとの考えだが、これもダメらしい。

(事象……。つまり、その動きがわかるようなことじゃないとダメということ?あれ、なんかこんがらがってきた)

澪は、目の前の机が回るところを想像する。しかし、依然として微動だにしない。

(声……?声に出さないとダメなのかな?)

1人なら独り言だからコミュ障も関係ない。

「机、回る」

(あ!動いた!)

さっきまでうんともすんとも言わなかった机がその場でゆっくりと回りだした。

(やっぱ、声に出さないとダメみたい。人前じゃ使えないな)


〈スキル「事象創造」のlevelが上がりました〉


(あ、スキルは使えばlevelが上がると考えればいいのかな?)

急に脳に響いた声にかるくビビった澪はそう考察する。

(でも、このスキル、どこまでできるんだろう)

「バイオリン、現る」

しーん。

「木、現る」

しーん。

「机、回る、速い」

ぎゅーん!

(うーん。いまいちよく分からないけど、予想はできたかな)

バイオリンが急に現れたり、木が現れたりするのはその過程が分からない。けど、机が速く回るというのは、その過程に当たるわけだから、創造できたのだろう。

例えば、バイオリンを手に入れるには材料を集め、正しい手順を言ってやれば創造できるのだろう。

(じゃあ、次の実験)


「机、回る、速い、ジャンプ」


〈スキルlevelが足りません〉


「机、回る、ジャンプ」


机は、回りながら一回跳ね、着地と同時に動作を終了した。


「机、ジャンプ、回る」


机は、ジャンプしながら跳ね、着地した後も回り続けた。


(うん。だいぶわかってきた。今のところ同時にできる操作は二つまで。そして、二つ動作を言った場合、最後に言った動作が終わったと同時に創造は終了する)

ジャンプという動作は、一度地面に着けば終了する。しかし、回るという動作には終わりがないため、いつまでも回り続ける。

(あ、でもいつまでもとは限らないか。どのくらい持つんだろう?)

「机、回る」

そして、待つこと2分。机は回るのをやめ、完全に停止した。

(持続時間は2分。levelと関係がありそう)

同時操作は2つまで、持続時間は2分、そしてlevelが2とのことなので、関係があるとみて間違いない。

(でも、この能力はうれしい。これさえあれば楽器も手に入るかも……あ!あれも確かめないと)

窓際にとまった小鳥を見ながら呟く。

「小鳥、飛ぶ」

能力は発動しなかった。

これで、意志のあるものには通じないということも分かった。

(最後に……)

隣の部屋を見て、呟く。

「本、落ちる」

が、反応なし。動作の対象は実際に見る必要があると実証された。

(だけど、この能力は実戦では当てにしないほうがいいかも。テンパると僕は何も話せなくなるから、実戦で余裕があるとも思えないし)

便利な能力だが、戦いでは役立たなそうという結論に達しかけたそのとき、ある考えが浮かんだ。

(そうだ、僕にはあれがあるじゃないか!)

草原と森の間の村の中心。ひときわ大きな木の館の二階で、澪は人知れずニヤニヤしたのだった。



読んでくれてありがとうございます。

設定は徹底しているつもりですが、穴があったりしたら教えてくれると幸いです!

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