妻の嫉妬!?と、僕と後輩の女の子の心の距離。
妻の第一声は?
美紀が言い出した内容は、
「私、思うけどさ、普通後輩なら手を振るんじゃなく頭を下げるべきじゃない!?」
というのに対し僕は、
「まあ、確かにそうかもしれないけど、なついてくれてる証拠じゃないのかな」
そう返答した。
「こ…、孝平。あなた本気でそう思ってるの?単になめられてるだけよ?」
「そうかなぁ…。慕ってくれてるのかと思ってるけど…」
僕は不安げにそう言った。
「バカじゃないの?だって、孝平から聞いた情報しか私は知らないけど、入社してまだ、ちょっとしか経ってないんでしょ?」
美紀は意地の悪そうな顔つきで言い、僕が喋ろうとするのをさえぎるかのように、こうも言った。
「そんな短期間で慕われるわけないと私は思うけど」
それで僕も段々、腹立たしくなってきたので、
「ずいぶん、ズケズケと言うんだな。どうして、そんなに怒るんだよ」
「別に怒ってるわけじゃないわよ。ただ、その後輩の教育が全然行き届いていないから言ってるだけよ。孝平の後輩じゃなければ、どうだっていいわ、そんなガキ!」
妻の言い方が明らかに怒っているな、と思いながら僕はこう言った。
「まあ、徐々に成長してくれると思うよ。何たって、僕が教育するんだから大丈夫なはずだ!」
「お!ずいぶん自信あるじゃない!まあ、頑張ってよ!」
ようやく、妻の口調が冷静になってきたので僕は少し安心した。
美紀にはまだ、言ってないが教育と言ってもいろんな意味での教育だ。
妻は仕事上の教育だと思いこんでいるようだが、僕も野澤愛も別な意味で教育を受ける・受けないと思っているのだから。
そして、翌日。
いつものように出勤して、愛にあいさつされた。
「おはようございます!」と。
それに対し僕も、
「おはよう!」
とあいさつをした。
「研修期間が終わるのもう少しですね!」
相変わらず、明るく元気な様子の愛が休憩室にいた。
今は午前8時頃。
タイムカードを押すのは8時30分前だ。
「そうだな。がんばるぞ!」
と、気合いを入れて言った。
「研修期間終わったら、何か美味しいものでも食べにいきませんか?」
相変わらず積極的な彼女だ。
僕はそういうところも好きだ。
僕の妻は、叱る分には積極性が垣間見えるが、女としての愛おしさはあまり感じないような気がする。かと言って、美紀のことを好きじゃなくなったわけではないが。
「よし!そうだな。行こうか」
時刻も8時過ぎになったので、白衣に着替えた。
これからの展開が、面白くなってきそうな雰囲気だな、と僕は思った。