僕の弁明と、その約束……。
僕は今、ソファに妻とならんですわっている。
美紀はこう言った。
「私、見ちゃったの…。孝平が金髪の女と手をつないで駅のホームを歩いているところ…」
「それは誤解だよ、美紀…」
と僕。
「どう誤解してるっていうのよ!ちゃんと説明しなさいよ!!」
「話せば長くなるけどいいか…?」
不安気な感じでそう言ってみると美紀は、
「短く、わかりやすく言ってよ!」
妻はかなり興奮している…。
でも、説明しないとわかってもらえない…。
愛のことまで話してもいいけど、愛への想いは言うわけにはいかない……、せめて今は…。
「うーん……。要するに、今、研修中の後輩がその金髪の女性と友達らしいんだ。それで、その女性は目があまり見えないらしくて、頼まれたんだ、その後輩に…」
「何て頼まれたの?」
「私の家まで連れて来てほしい、ってね。それで、仕方なく連れてくるために手をつないだだけなんだ…」
「私のメールに返信なかったのはどうして?」
と、美紀は不思議そうな顔つきで僕をにらんでいる。
「残業と、その金髪女をさがしていたんだ…」
僕は段々、説明するのに疲れてきて嫌気がさしてきた。
未だ、不満げな表情で美紀はこう続けた。
「ふーん…。残業は仕方ないとしても、その女をさがしていて返信できなかったなんて、何か感じ悪い…。ひどいよ、孝平……」
妻は先程とは態度がうって変わり、ボロボロと涙を流しながら泣きだしてしまった。
「ごめん、美紀……。全部、僕のせいだ…」
「孝平の…、孝平の好きな肉料理だって作って待ってたのに……」
美紀は悔しそうな、悲しそうな、どちらともとれる表情で号泣していた。
「料理に関しては、ありがとう。今から二人で食べよう?」
「もう、冷めちゃったよ…!」
「もう一度、温めなおそう?」
なおも、美紀は泣き続けている。
僕は優しく妻の髪の毛をなでた。
「……もう、変なマネしないって約束して…!」
そう言いながらこちらを凝視している。
「うん。わかった。約束する」
僕は美紀の目を見ずにそう答えた。
しかし……。
僕が、美紀以外にも好きな人がいるとは、今の段階では到底、口にできない。
万が一、そんなことを口走ったら…、
妻は……、
美紀は…想い余って、自殺するかもしれない……。
もし、そんな事態に発展したら、二人だけの問題じゃなくなる…。
そう考えると僕はゾッとした……。
孝平は後輩の愛への想いをどうするのか……!?