私の性への想いと夫への想い、そして…
私の名前は、相澤美紀、27歳。孝平の妻。
私達には子どもはいない。欲しいと思ったことはあるけれど、今は夫との生活に満足している。
でも、それは私の気持ちであって、孝平は満足しているのかな。
以前、結婚してからの話しになるけれど、私は孝平の夜の誘いを拒否したことがある。
理由は、汚らしいからと答えた。
彼は納得がいかない様子でいたからその翌日の夜に訊かれた。
「昨日のことだけど、どうして汚らしいと思うの?」
という、孝平の質問に私は、
「た…、体液が混ざり合うのが汚いと感じるの…」
しどろもどろになりながらも、そう答えた。
彼は私の返答に納得いったかどうかはわからない。
だって、それ以降も変わらず優しいから。
でも、これは憶測だけど孝平は男だし、ストレスもたまってくると思う。
自宅にいる女の私でさえストレスを悪い意味で感じる時がある。
だから、それを処理していかなくちゃいけないと思う。
だからと言ってほかの女性とそういう関係はもってほしくない。
お金で解決するなら、風俗という手段も考えたけど、正直、良い気はしない…。
そんなことを私は家事の合間の休憩中に考えていた。
時刻は午後2時をまわったところ。
孝平はだいたいいつも午後6時半前後に帰宅する。
ちなみに今日は給料日だから、なにか美味しいものでも作ってあげよう。
なので途中だった掃除などを済ませてしまおうと思い立ちあがった。
あれから、部屋の掃除をし、浴室も洗い、トイレもキレイにした。
それから買い物に出かけて食材などを買ってきた。
今日のメニューは、酢豚とほたてのバター焼きと、シンプルに塩・こしょうで焼いた鶏肉。
孝平は肉料理が好きなようで、いつも美味しいと言いながら食べてくれる。
調理も終わったところで一休み。
壁の時計を見てみると、午後6時を過ぎたところ。
いつもはあまりしないけど、今日はなんだか気分もいいし、美味しそうにおかずも作ったから、孝平にメールでも送ろう。
そう思い、スマホを手に取り打ちこんだ。
お仕事お疲れ様でした!
今日は給料日というのもあって、おかずを孝平の好きなものばかりにしたよ。
だから、早く帰ってきてね。
くれぐれも、居酒屋などにはよらないように!(笑)
という内容で送信した。
そして、昨日レンタルしたCDをラジカセに挿入し聴き始めた。
私は夫が帰ってくるまで少しだけと思いソファに横になった。
それからいつの間にか寝入っていたことに気付いた私は頭を少し傾げ時計を見た。
驚いたことに、時刻はすでに午後8時をまわっていた。
だが、孝平の姿がない。
携帯電話を確認したけれど、メールの返信もない。
一体、どうしたというのだろう…。
まずは、孝平に電話をしてみた。
呼び出し音は10回以上鳴らしたけど、つながらない…。
一瞬、私の心に不安がよぎった。
結婚してから何の音沙汰もなく、仕事の帰りに居酒屋かどこかに寄るということは一度もなかった。
私は思い立ち、走って家を出た。
向かった先は、いつも利用している地下鉄の駅。
20分ほど歩いただろうか、駅のホームに到着した時、列車が入ってきた。
そこから最初に出てきたのは若い金髪の女性と、その横にはなんと、夫の孝平がいた。しかも、手までつないでいる。
一瞬、自分の目を疑った。
まさか、孝平が他の女性と…だなんて、ありえない。
そう思った。
でも、いつの間にか私の目は涙であふれ、そして流れ落ちた……。
何かの間違い……!
と、思いながら私は走ってその場を去った。