帰りの馬車で
男子会(笑)と女子会(?)が終了し、来るときを同じようにラジェル様たちと馬車に乗ってお家に帰ります。
リリウム様は女子会(?)が楽しかったのか、終始ニコニコとされています。
ラジェル様も同様ですが・・・お兄様は何故そんなに不機嫌なのでしょう?
「お兄様?いかがされました?何かございました?」
「・・・なにもないよ」
イヤイヤイヤ!絶対に何かあったでしょう!?
不機嫌MAXで黒オーラこそ出していないけど、顔から表情が抜け落ちてますよ?
「あの・・・ラジェル様?お兄様に一体何があったのでしょう?」
お兄様から聞き出すのを諦めてラジェル様に聞いてみます。
不機嫌なお兄様の雰囲気すらものともしないラジェル様なら教えてくれるはず!
「ルピリア様のご夫君のヘリオス皇太子が、今回ルピリア様と一緒に我が国に訪れているくらいです。マリア嬢たちがお茶会を催している間、我々はヘリオス皇太子と親交を深めていただけです」
良い笑顔でラジェル様は仰いますが、お兄様の不機嫌は治まらず正直どうしようかと悩んでしまいます。
しばらくするとお兄様が復活しました。
「今日はとても有意義な時間だったよ。ヘリオス皇太子ともお会いしたしね」
お兄様?なぜそんなに良い笑顔なんでしょうか?
そしてラジェル様は苦笑してますが、なぜ?
「それよりマリアとリリウム嬢はどうだったのかな?そちらはルピリア様はじめ王妃様も同席されたとか?」
あ~・・・やっぱり聞かれますよね~
どう話せば良いのやら。私が悩んでいるとリリウム様が暴露しました。
「私達は温室でお茶を頂きながら、マリア様とお兄様の婚約についてお話ししましたわ」
リリウム様、めっちゃ良い笑顔で言い切ったよ・・・
恥ずかしいなぁ~そして、それを聞いたお兄様とラジェル様もめっちゃ良い笑顔だよ。
「それは有意義な時間だったね。マリア?」
「そ・・・うですね。有意義な時間でした」
若干私の目が泳いだのをお兄様は見逃しませんでした。
お兄様鋭すぎるよ!
そしてリリウム様?なぜご自分が王宮に避難していたことも話題に上ったのをスルーしているのでしょう?
「それに、ロベリア様からリリウム様が王宮に一時避難していたこともお手紙でお知らせされていたようで、そのこともお話ししました」
その瞬間、上昇していたお兄様のご機嫌が下がりました。
エリカ嬢のことを思い出したのでしょう。
正直、馬車から降りて逃げ出したいです。オニイサマコワイ・・・
「そう。まぁアノ令嬢はもう二度と私たちの前には現れないだろうね」
「お兄様?それは一体なぜですか?確信があるようですが・・・」
「母上から、私たち兄妹のマナーや礼儀作法は、母上がエピドート夫人から受けた指導をそのまま施したを言っていただろう?物心つくまえから数年かけて母上から指導を受けていても、母上から合格点を頂けていないのはマリアもよく分かっているだろう?」
「はい。ですが、それとどのよな関係があるのですか?」
「学園入学前に家庭教師がついたにも関わらず、アノ令嬢はマナーも礼儀もなっていなかった。であれば、エピドート夫人から直接指導を受けても矯正はされないと思うよ?」
お兄様・・・物凄く良い笑顔で言い切りましたね。
エリカ嬢が前世でプレイしていた乙ゲーと同じだと思ったまま何の努力もしなかったし、現実だと認識できなかったのも自業自得ですね。
ですがそれでエピドート夫人が被害を被るのは別問題だと思うのですが?
はっきり言って、一番の被害者はエピドート夫人だと思います。
「そういえば、ラジェル様はご存知でしたか?エピドート夫人は社交界では『伝説』とまで言われている方だったみたいです。本日のお茶会で初めて知りました」
「そのようだね。私も社交界に参加してから何度か耳にしたことがあるよ。とても厳しい方のようで、夫人の指導を受けて認められた令嬢は皆、高位貴族や王族に嫁いだみたいだし・・・だから『伝説」と言われているのでしょう。何よりも、逃げ出す陛下を捕まえてマナーと礼儀作法を教えた方だからね」
おぅ・・・ラジェル様も知ってたのですね。
まぁ。サフィール侯爵夫人マグリア様もエピドート夫人の指導を受けた令嬢の一人ですからね。
きっと私たち同様、マグリア様にエピドート夫人とはどのようなお方なのか聞いたのでしょう。
そんなこんなで、私とお兄様には疲れるだけの一日でしたが、概ね平和な一日でもありました。




