見てしまいました
色々と予想外の騒動が起こった生徒交流会からおよそ二ヶ月が経過しました。
ようやく授業にも慣れてきて、クラスメイトたちとも良好な関係を築きつつあります。
乙ゲー世界とはいえ、今の私が生きる現実世界でもあります。
学園生活を満喫するために、入学前に婚約者を決めなかったのですから、楽しまねば!!
攻略対象とは距離を取っていますが、リリウム様は別です。
同性でクラスメイトですからね。仲良くしなければ!それに、実際に話してみるとリリウム様は超良い子でしたよ!!
彼女が悪役令嬢なんて・・・絶対にありえないですね。大変なお妃教育も帰宅後やお休みの日に行っているって言ってました。
良い子で頑張り屋さん!!前世の妹を思い出すのよね~これはお兄様同様に私が守ってあげないと!!
さて、今日の授業は教室移動があります。1年普通科の女子生徒のみの授業です。
男子生徒は別教室でまとまって授業を受けています。
クラスのある階には私一人です。
なぜかって?
授業に必要なお道具をクラスに忘れてしまったので取りに来たのですよ。
Eクラスの担任をしている先生の授業なので、問答無用で取りに行かされています(笑)
誰もいない筈の1年普通科の階ですが、どこからか何かを破くような音が・・・
え?ナニコレ?心霊現象デスカ?ポルターガイスト?学校の怪談??
ビクビクしながら音がする方へ向かうと、Eクラスに女子生徒の姿が!!
ひぃっ!?ゆゆゆ幽霊?
あ・・・違うわ。エリカ嬢だったわ・・・
あんまりな勘違いに一人悶えていると、エリカ嬢が誰かの教科書を破いています。
クラスに気に入らない方でもいるのでしょうかね?
Eクラスの扉の影からこっそりと様子を見ていると、エリカ嬢のつぶやきが聞こえてきました。
『王子以外の攻略対象の好感度はMAXだから、王子の好感度を上げて逆ハーを目指してるのに、何で悪役令嬢が私を虐めてこないのよ』
は?攻略対象?逆ハー??悪役令嬢???やっぱり、生徒交流会で先生に連行される時に聞こえてきたのは私の聞き間違いじゃないのですね。
しかし・・・攻略対象とかって単語を言ってるって事は、エリカ嬢も転生者なんだ・・・
しかも、言っている内容から察するにプレイヤーだったんだ~
・・・これは冗談抜きでリリウム様を守らないとなぁ~サフィール侯爵家とは何の関わりもないけど、交流会での事を思い出すと冤罪でっち上げそうだわ~マジ引くわ~
あっ!!今度は制服を破き始めたよ~そういや、授業が行われる教室にエリカ嬢は最初からいなかったなぁ
先生が探しに行かなかったって事は、この授業に出なくても良いって先生が判断した何かがあった?
とりあえず、早めにお道具を取りに行って戻らなきゃ!!
エリカ嬢の自作自演行為をのんびりと見ている場合じゃないわ~
教室移動を伴う授業が終わった時に、騒動が起こりました。
Eクラスが騒がしいですね~何事でしょうか?
ふとEクラスを覗いてみると、エリカ嬢が床に座り込んで泣いているみたいです。
ん?なんだなんだ?
とりあえず、近くにいたEクラスの生徒に聞いてみます。
「あの・・・どうされたのですか?」
「あ、マリア様。実はクラスに戻ってきたらエリカ様が泣いてらして・・・どうやら私たちが教室移動で誰もいない時間にエリカ様の教科書が破られたとか・・・」
「教科書が?」
「はい。それも、リリウム様が破いたと・・・その際にやめて欲しいとエリカ様がリリウム様に言ったら『ジェリク様に近づかないで』と仰って、制服も破られたと・・・」
はぁ???リリウム様と教室移動したよ?私。
授業中に教室からリリウム様一歩も出てないし・・・
あっ・・・先生方が走ってきた。
「エリカ・リナライト。どうしました?」
「・・・先生・・・私の教科書が・・・リリウム様に破かれたのです。制服も・・・」
あ・・・先生が怪訝な表情してる。
そりゃそうだわ。だってさっきまでリリウム様この先生の授業受けてたんだから。しかも最前列の席で。
「・・・とりあえず、学園にある予備の制服を渡すから着替えてきなさい」
「はい・・・」
エリカ嬢は他の先生に連れられて、クラスを後にしました。
う~ん・・・巻き込まれるのはイヤだけど、このままじゃリリウム様が悪者にされそう・・・
変なウワサとか流されたら可哀想だしなぁ・・・仕方がないか。私が見た自作自演行為を先生に報告しておくか・・・(涙)
「あの・・・先生。少々よろしいでしょうか?」
「何だ?マリア・フローライト」
「あの・・・実はですね・・・私見てしまったんです・・・」
ここまで言って、先生は私の発言を止め別室に同行するよう促します。
あ、他の生徒がいるからか。そっかそっか。
先生に連れられて、面談室へ向かいます。
「それで?マリア・フローライト。何を見たんだ?」
「あ・・・はい。本日の教室移動を伴う授業で使用するお道具を忘れて、クラスへ取りに戻ったときなのですが・・・」
私が見たエリカ嬢の自作自演行為を説明しました。
ひぃぃ~先生の額に青筋が!!般若再び!?
「そうか・・・わかった。マリア・フローライトはクラスに戻りなさい。また詳しく話しを聞くかもしれないからな。それと、わかっていると思うが、他の生徒たちには他言しないように」
「はい。わかりました。それでは失礼します」
私は足早に面談室から離れます。
だって先生怖すぎ!!私が怒られている訳じゃないのに涙だ出そうだよ~
その日の放課後、エリカ嬢のご両親が2回目の呼び出しを受けたのは言うまでもありませんでした。