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転生したら乙ゲーのモブでした  作者: おかる
婚約編
68/80

閑話:提案してみた

【ジェリク視点】


サフィール侯爵家で、フローライト辺境伯家の兄弟妹とリリウムの兄妹のお茶会に参加した。

その日は、マリア嬢の父上であるギルフォード・フローライト辺境伯とリリウムの父上であるゼフィラス・サフィール侯爵が私の父上である国王陛下にマリア嬢とラジェル殿の婚約を報告しに行っている。

ちなみに母親たちは、ウキウキと観劇に行った。

こんなに早く行く必要などないのではないかと思う。

そんな私の考えが分かったのか、ラジェル殿がそっと耳打ちしてきた。


『母上たちは観劇の前にお買い物の予定です。ドレスと装飾品をお願いするのだと張り切っていました』


なるほど。結婚式には白いドレスだが、婚約式やお披露目は暗い色以外は何色のドレスでもかまわないからな。

リリウムの時は、王家の伝統に沿って王宮のお針子たちが頑張ってドレスを縫い、王家御用達の職人たちが、これもやはり王家の伝統に沿って装飾品を作成した。

フローライト辺境伯夫人は唯一の娘だから力が入るし、サフィール侯爵夫人は跡取り息子の嫁になる令嬢だから力が入るのだろう。

リリウムの時は口を挟む余裕がなかったからな。申し訳ないことをしたとつくづく思う。


お茶会は終始和やかな雰囲気で終了した。

途中で、ラジェル殿とマリア嬢が二人で席を外して、庭園の散策に行ってしまったが。

まぁ。姉上やリリウムから聞いたところによると、ラジェル殿はずいぶん昔からマリア嬢のことが好きだったらしい。

年上の男性だが、結婚したらマリア嬢の尻に敷かれるんじゃないか?

まぁ人のことは言えないが・・・私などはリリウムに一度も勝てたことが無いしな。

ちょっと話しがそれたか。

お茶会が終了し、両家の親たちがサフィール侯爵邸へと戻ってきた。

父親サイドは、普段通りだった。フローライト辺境伯に関してはサフィール侯爵邸を出発する前と比べると、格段に元気になっていた。ちょっと安心した。

母親サイドは出発前よりもかなり高いテンションで戻ってきた。

観たはずの劇については一切触れないあたり、買い物は二人が満足する内容で終わったのだろう。



サフィール侯爵邸で、晩餐をご馳走になりリリウムと一緒に王宮へと帰る。

馬車に乗り込む前、リリウムの寂しそうな表情にチクリと胸が痛んだ。

訳のわからないことばかりを口にする令嬢を受け入れてくれる修道院が見つからないため、未だに王都にある屋敷に閉じ込められているらしい。

ボーナイト騎士団長からの報告では、その令嬢は何度も屋敷からの脱出を図っているらしい。

男爵家周辺は騎士団から監視を派遣している。

リリウムやマリア嬢に万一のことがあっては大変だからな。

特に、マリア嬢になにかあったらと思うと・・・

サリエル殿と辺境伯の怒りが・・・想像するだけでも体が震える。

私としては、リリウムと過ごす時間が増えて嬉しい限りだが、悲しい顔をさせたくない。

一時避難が解除されないと、リリウムは家族と離れて暮らし続けなきゃならない。

それにはまず、一時避難する原因となった令嬢を受け入れてくれる修道院を探さないと。

あそこまで礼儀もマナーもなっていない非常識な令嬢だからな。

父上や宰相が候補に入れていなかった、アノお方のいる修道院はどうだろうか。



翌日、リリウムと一緒に登校してくるマリア嬢とサリエル殿を待っていた。

他愛ない話しをしていると、前からジョージがやってきた。

・・・マズイな。昨日、リリウムと一緒にサフィール侯爵家へ行ったことがバレているみたいだ。

私としては、危険がある状態でリリウムを一人でサフィール侯爵家へ帰すわけないだろう?

平行線を辿りそうだったが、リリウムが助け舟を出してくれた。

渋々ながらも、ジョージは納得してくれた。

念のため、受け入れ先の修道院が見つかったのか確認したが、やはり決まっていない。

宰相もジョージにグチを溢すほどか。


「ふむ・・・では私から父上にちょっと提案してみるかな」


私の一言にジョージが反応した。


「ジェリク様にはどこかお心当りがあるのですか?」


「まぁ・・・サルファー宰相も父上もアソコに送るのは可哀想とか考えていそうだが、私としては二度と目にしたくないからな。多少厳しくてもと考えている」


「まさか・・・エピドート夫人の修道院か?」


そのまさかだ。ジョージは幼い頃に一度、エピドート夫人の指導を受けたことがある。

一切の妥協を許さない、その教育方針は『厳しい』の一言につきる。

お祖父様が、中々勉強やレッスンをしない。それどころか逃げ出す父上を見かねて、王宮で礼儀作法とマナーを教える教師として、白羽の矢がたったのが【カトレア・エピドート夫人】だ。

父上と一緒に側近候補の子息たちも揃って夫人の指導を受けたらしい。

『らしい』というのは、私たちは夫人の指導を受けたことがないから。

夫人が王宮に教師として勤める際にお祖父様いくつか条件を出したそうだ。

父上と側近候補以外は王宮では教えない、父上を捕まえておくこと、教育が終了したら修道院へ入ることを許可すること。らしい。

お祖父様はその条件を呑んで夫人に父上に礼儀作法とマナーを教えてくれるよう頼んだ。


現在は修道院の院長をしているがその傍ら、令嬢たちに礼儀作法やマナーを教えている。

ちなみに母上は、夫人の指導を受けたことがあるらしい。

夫人は一人一人令嬢の屋敷を回って教えることはしない。

当時は中継ぎの女侯爵だったこともあるが、エピドート侯爵邸で指導を行っていたらしい。

そこにはリリウムの母上やマリア嬢の母上も同じ位の時期に通っていたらしい。

それを聞いたとき、なるほどと思った。

リリウムや妹のイリス嬢、シンディ嬢の礼儀作法・マナーは完璧だ。

入学してからしか知らないが、マリア嬢も礼儀作法・マナーは完璧。

それはひとえにエピドート夫人の指導を受けた、母親たちが自分の娘に同じように教育を施したからだろう。

未だに、教師として勤めて欲しいという依頼の手紙が引きも切らずに院長をしている修道院へと届いているらしい。

自分のところの令嬢を指導して欲しいなら、夫人がいる修道院へ行けば良いだけなのにな。

修道院では週に2日、夫人による礼儀作法・マナー講座が行われているのだから。

多少、厳しいくらいじゃないとアノ令嬢は更生しないと思う。

だから、父上に提案してみようと思うんだ。


学園から戻ると、父上に時間をくれないかと侍従を通してお伺いをたてる。

数分後、侍従が少しなら時間が取れるからとの父上からの伝言を持って戻ってきた。

私は早速、執務室へと向かう。

そこにはちょうどサルファー宰相の姿もあった。


「失礼します。父上、サルファー宰相」


「うむ。ジェリクよどうしたんだ?急に時間をくれないかとは」


「はい。リナライト男爵令嬢を送る修道院の選定についてご提案があります」


「提案ですか?それはどのような?」


「はい。私はカトレア・エピドート夫人が院長を務める修道院はいかがかと思います」


私の提案に父上も宰相も目を見張る。

それはそだろうな。お二人とも夫人の指導を受けたことがある。

夫人の厳しさを身を持って体験しているのだから。


「エピドート夫人の修道院か・・・それはリナライト男爵令嬢にはちと厳しいのではないか?」


「そうですよジェリク王子。夫人の指導はとても厳しいのです。とてもリナライト男爵令嬢が夫人の指導に耐えられるとは思えません」


「厳しいから良いのではないですか?この国では幼い子供ですら知っていて当たり前の常識すら持ち合わせていなかったのです。生半可な院長がいる修道院では令嬢の更生は出来ないと思います」


「ふむ・・・ジェリクの言うことも最もだな。ニコラス。カトレア・エピドート夫人の修道院も候補にいれておいてくれ。できれば早々に夫人に令嬢の受け入れが可能か確認してくれ」


「・・・わかりました。陛下がそう仰るのなら夫人にお伺いしてみましょう」


とりあえず、夫人の修道院が候補に入ることになった。

あとは夫人が受け入れてくれることを願うだけだ。



【ジョージ視点】


ここの所、宰相である僕の父上がグチをこぼす。

理由は簡単。今年学園に入学した直後から問題を起こしていた男爵令嬢が、陛下の前で失態を犯したから。

僕は、王宮の騎士団訓練場で行われたクラスメイトのマリア・フローライト嬢の兄上サリエル殿と騎士科1年の騎士団長子息ライアン・ボーナイト殿の決闘を見学することは出来なかった。

本来ならば、学園で行われる予定だったが、想定外のアクシデントにより騎士団訓練場で行うことになった。

想定外のアクシデントとは、アラン殿の婚約者でジェリク様の妹ロベリア様が決闘を見学したいと言ったことがきっかけで、会場の変更を余儀なくされた。

その為、普通科は関係者以外NG。騎士科の生徒たちは全員見学OKなのに不公平だよね。

まぁ。過ぎたことをとやかく言っても仕方がない。

その訓練場での決闘は、陛下もご臨席されていた。

そこに関係者でもない令嬢がいて、なおかつサリエル殿の婚約者だと嘘を言った。

リナライト男爵令嬢は、貴族家同士の婚約には王家への報告が必要だと知らなかったのだろうか?

報告も無いのに『自分はサリエル・フローライトの婚約者なのに、決闘の見学に誘われていない』などとライアン殿に言って、騙されたライアン殿の口利きで騎士団訓練場へと入り込んだ。

そもそも、Eクラスの令嬢が王宮に入ること自体が問題。

そんな非常識な行動をした令嬢は、学園を退学。修道院へ送られることになったのだけど、中々決まらないらしい。

リナライト男爵家は養子を迎えて、その子に跡を継いでもらう。

その養子の選定・手続きはもう終わっているのに、令嬢の送り先だけ決まっていない。

そのため、連日父上はグチっている。はっきりいってウンザリしている。


そんな中、マリア嬢とリリウム嬢の兄上であるラジェル殿の婚約が整った。

学園がお休みの日は、次期宰相候補として僕も父上と一緒に王宮へ行って、ジェリク王子の公務を手伝っている。

アストル王太子には年の近い側近候補がいるので、その方たちが手伝っている。

ところが、リリウム嬢がフローライト辺境伯家の兄弟妹とサフィール侯爵家の兄妹でお茶会をするので、それに参加するべく侯爵家へと戻って行ったのだが・・・

なぜかジェリク様はお部屋にいない。執務机の上には僕宛の手紙が一通おいてあった。

そこには一言だけ綴られていた。

【リリウムと一緒にサフィール侯爵家のお茶会に参加するから心配するな】

・・・別に心配はしていない。護衛の騎士がついているのだから。

僕が心配しているのは、今日の分の公務はどうするのか?ということだけ。

・・・・・・僕が関係各所に頭を下げて回ったのは言うまでもない。


翌日、学園でジェリク様を待っていたが中々来ないので、学園の入り口に向かうことにした。

リリウム嬢と一緒なのはいつものこと。今日はそこにサリエル殿とマリア嬢も一緒なのでちょっと驚いた。

とりあえず、ジェリク様には一言申さねば気がすまない!!


ジェリク王子と口論になりかけたところで、リリウム嬢が仲裁に入った。

ご令嬢から謝られては、これ以上僕は何もいえない。

すると、ジェリク様から1つ提案がされた。

リナライト男爵令嬢を送る修道院の候補にカトレア・エピドート夫人が院長を務める修道院をいれてはどうかと。

かの夫人の指導はとても厳しい。僕も幼少のみぎりに一時期夫人の指導を受けたことがある。

今思えば、幼子に厳しすぎじゃないか?と思うが、おかげでどんな席にお呼ばれしても問題ないくらいの作法とマナーを身に着けた。

夫人は修道院院長になった今も、希望される令嬢に礼儀作法とマナーを教えている。

夫人が指導をし、認められた令嬢は良縁に恵まれている。

現在の高位貴族のご夫人方のほとんどがそうだ。

もちろん僕の母上も夫人の指導を受けた。ちなみに父上は陛下と一緒に強制的に受けさせられたらしい。

リリウム嬢の母上も、マリア嬢の母上も、王妃様も夫人にご指導いただき認められた。

だから、夫人の下には修道院に行った後も、頻繁に娘に礼儀作法とマナーを教えて欲しいという依頼の手紙が届いていたという。

本来ならば、僕は夫人の指導を受ける機会などないはずだった。

僕の教育係が体調を崩して、長期療養が必要になったから父上と母上が揃って夫人にお願いしたらしい。

二人の教え子に揃ってお願いされた夫人は、一時的とはいえ僕の教育係になった。

本当に夫人は厳しかった。夫人の名前を聞くだけで体に震えが走るほど。

そんな夫人の修道院をリナライト男爵令嬢の受け入れ先候補として提案するという。


ジェリク様が陛下にお願いするなら、僕も父上に同じように提案してみよう。

リリウム様を早いところお家に帰してあげたいしね。

時折、寂しそうな表情で溜息をついていることを知っているから尚更だよ。

ジェリク様も知っているはずだけど、ご自分がリリウム様と一緒にいたいからって見て見ぬフリをしている。

これを機に、令嬢の受け入れ先が決まれば、ジェリク様もちゃんと公務を行ってくれるようになるはず。

カトレア・エピドート夫人には申し訳ないけど、ぜひとも問題児令嬢を引き受けてもらいたいと思うんだ。



父上が王宮から戻ってきたので、時間を作ってもらった。

屋敷にある父上の執務室に入ると、早速ジェリク様の提案を父上にしてみる。


「父上。お時間を作っていただきありがとうございます」


「うん。それで一体どうしたんだい?急に時間を作ってくれだなんて」


「はい。リナライト男爵令嬢の受け入れ先となる修道院の候補についてです」


「あぁ。なるほど。ジェリク王子も今日、陛下に提案しにきたよ。カトレア・エピドート夫人の修道院だろう?」


「はい。ジェリク様はお帰りになってすぐに陛下へご提案したんですね」


「そうだな。夫人の指導に男爵令嬢は耐えられないとは思うが、陛下は夫人の修道院を候補に入れることを許可された。あとは夫人にお伺いするだけだな」


「夫人が受け入れを了承すれば、すぐにでも男爵令嬢を移送することになりますよね?」


「そうだな。そうすればリリウム嬢もサフィール侯爵家へ帰ることができるな」


「できればエピドート夫人には、受け入れを了承していただきたいですね」


「ん?なぜだい?」


「昨日、ジェリク様は公務をほっぽりだして、リリウム様と一緒にサフィール侯爵家のお茶会に参加したんです」


「あぁ・・・だからジョージが各所を謝って回ってたんだね」


父上は苦笑してますが、ジェリク様の尻拭いは大変だったのですよ?

しかも、晩餐までサフィール侯爵家でとっているから、ジェリク様のサインと判断が必要な書類がマルッと残っている。

期日に余裕があるとはいえ、なるべく早く書類関係は終わらせて欲しい。

今度の休みの日には、しっかりと書類を終わらせてもらわなければと思った。

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