報告翌日の学園で
陛下への報告をし、両親とお兄様からの質問をうやむやのうちに回避成功した翌日は、学園に登校です。
いつものようにお兄様と一緒に登校すると、なぜかリリウム様とジェリク様が待ち構えていました。
「おはようございます。リリウム様」
「おはようございます。マリア様」
いつにも増して、ご機嫌がよろしいようで・・・
そんなリリウム様を上機嫌に眺めているジェリク様。
はいはい。愛しの婚約者様の機嫌が良いので嬉しいのですね(笑)
クラスへ向かっていると、先方から宰相子息のジョージ様が歩いてきます。
朝の挨拶もそこそこに、昨日の報告について話しはじめました。
周囲にいる生徒たちは興味津々で、聞き耳をたてています。
「マリア嬢、サリエル殿。おはようございます」
「おはようございます。ジョージ様」
「おはよう。ジョージ殿」
「昨日、フローライト辺境伯とサフィール侯爵が陛下に婚約の報告に行ったみたいだね」
「はい。両家の当主が陛下へご報告にまいりました。母たちは揃ってお出かけしましたので、昨日はサフィール侯爵家で、両家の子供たちだけでお茶会を致しました」
「そうなんだね。じゃあ、ジェリクがそのお茶会に参加したのはなんでかな?」
ジョージ様はにっこりと笑ってジェリク様を見ましたが・・・
目が笑ってませんね。昨夜の質問タイム中のお母様たちのようですよ?
「リ・・・リリウムを一人でサフィール侯爵家へ帰すのは危険だと判断したからだ!」
「危険?何が危険だと言うのです?確かにアノ令嬢は未だ送り先の修道院の選定が終わっていないので王都のリナライト男爵家にいますが、男爵家の周囲を騎士団が監視しているのですから逃げ出すことなどできないでしょう?ただ単に、リリウム嬢と一緒にいたかっただけでしょうが!」
おぉぅ・・・ジョージ様はひどくお怒りのご様子ですね(笑)
リリウム様を一人で帰さないとは思っていたからなぁ~
特に違和感も疑問もなかったことに今更ながら気づいたよ。
ちらりとお兄様の方を見ると、私と同じだったようで二人して肩を竦めるのみです。
あまりのジョージ様の剣幕に、ジェリク様が可哀想になったのかな?
リリウム様が援護します。マジ天使ですね!
「申し訳ございませんでした。昨日は私がジェリク様にお願いして帰宅にご同行していただきましたの」
「リリウム嬢・・・ジェリク様を甘やかしてはいけません。すぐ調子に乗ってしまいますから」
「ジョージ。まだアノ令嬢の受け入れ先が見つからないのか?」
「そうですよ。父上がどうしようかと毎日グチってます」
「ふむ・・・では私から父上にちょっと提案してみるかな」
「ジェリク様にはどこかお心当りがあるのですか?」
「まぁ・・・サルファー宰相も父上もアソコに送るのは可哀想とか考えていそうだが、私としては二度と目にしたくないからな。多少厳しくてもと考えている」
「まさか・・・エピドート夫人の修道院か?」
エピドート夫人?誰だそれ?初めて聞くお名前ですね。
そしてその名を出したジョージ様の顔色が若干ですが悪いですよ?
え・・・なにそんなに怖い人なの!?
陛下や宰相様がそのお方がいる修道院を候補として上げてすらいないほど!?
ちょっと気になったので、そのお方を知っていそうなリリウム様へこっそりと聞いてみましょう。
「あの・・・リリウム様。エピドート夫人とはいったいどのようなお方なのかご存知ですか?」
「えぇ。カトレア・エピドート夫人は、長年王宮で礼儀作法・マナーを王族に教えていた教師ですわ。陛下はそのエピドート夫人に教わっていましたの。ルピリア様や王太子様からは現在の教師になりましたが・・・陛下が王妃様以外で頭の上がらない唯一の方です」
最後の一言は本当に囁くような小声でした。
そうか・・・陛下は王妃様に頭が上がらないのか。
お兄様も、エピドート夫人のことはご存知ではなかったらしく、私と一緒にリリウム様のお話しを聞いていました。
「まだ、陛下が王太子だった頃は側近候補の子息たちも一緒にご指導を受けておられたので、サルファー宰相もエピドート夫人をご存知のはずです」
「ですが、宰相様は陛下とご一緒に指導を受けておられたのですから分かりますが、ご子息のジョージ様が顔色を悪くされる理由がわかりません」
「それはですね、ジョージ様の教育係が体調を崩して長期療養に入ることになった際に、替わりのものが見つかるまで一時的にエピドート夫人がジョージ様に礼儀作法やマナーを教えていましたから、夫人の厳しさを宰相様もジョージ様もご存知なのです」
なるほど。躾に厳しいご夫人というわけですな。
エリカ様は夫人のご指導についていけるのでしょうか?
それに、エリカ様のデキによってはエピドート夫人が匙を投げてしまうかもしれないですしね。
はっきり言って、ご自分に都合の良いことしか聞かず、考えずでしたしね。
なによりも未だにこの世界が現実ではなくゲームだと思い込んでいたら・・・
それはもう、修道院ではなく病院では?と思ってしまう。
すると、それまで黙って話しを聞いていたお兄様がジェリク様の意見に賛成しました。
「私はジェリク様のご意見に賛成です。リナライト男爵もアノ令嬢を引き取ってから学園入学までの間に、家庭教師をつけて礼儀作法やマナーは教えていたはずです。それなのに一学期・二学期を通して問題をおこしているのです。みっちりとエピドート夫人にご指導いただいた方が良いと思います」
「サリエル殿もそう思いますか?」
「はい。リリウム嬢やマリアのように幼い頃から教育を受けて来なかったというのは言い訳になりません。それに身分制度については、貴族・平民関係なく子供でも知っていることを理解していないみたいでしたから」
「「あぁ・・・」」
ジェリク様もジョージ様も心当たりがありすぎなのですね(笑)
まぁ、入学式直後からAクラスにチョコチョコと顔出していたようですし。
自宅謹慎中は屋敷を抜け出して学園に来た上に、クラスに乱入しましたしね。
それも今となっては良い思い出なのでしょうか?
長話をしてしまいましたね。
授業に遅れないようにしなければ。
特にお兄様は騎士科だから建物も違いますからね。
お兄様とはこの場で別れ、リリウム様・ジェリク様・ジョージ様と一緒にクラスへ向かいます。
教室へ入ると、アラン様が珍しい組み合わせでいる私たちを面白そうに見ています。
「ジェリク様おはようございます。リリウム嬢とマリア嬢も」
「「おはようございます。アラン様」」
「おはようアラン。・・・何か言いたげだな?はっきり言ったらどうだ?」
「いやぁ~ジェリク様がリリウム様と一緒にいるのは分かるんだけど、なんでジョージ殿とマリア嬢まで一緒なのかな?って。それに珍しくサリエル殿がここまでマリア嬢を送ってこなかったし。だからなんでなのかなぁって」
まぁそうでしょうね。
不思議でしょうねぇ~私だって当事者じゃなかったらアラン様と同じことを思うし、それが仲の良い友人ならなおのことだよね。
「アノ令嬢のことでちょっと話していたんだ。授業に間に合わなくなると困るから、サリエル殿にはそのままご自分の教室へ行ってもらった。私とジョージがいれば安全だろう?」
「なるほど。で?話題の令嬢を送る修道院は決まったの?」
「まだだ。だから、今日戻ってから父上に私から提案をしようと思っている」
「それは私が聞いても差し支えないのかな?」
「構わない。私は前王宮マナー主任教師カトレア・エピドート夫人がいる修道院にアノ令嬢を送ってはどうかと考えている」
「カトレア・エピドート夫人の修道院へ!?それは・・・決まったらお気の毒なことだね」
「夫人のいる修道院を選定の候補に挙げていないはおかしいと思わないか?父上たちは確かに、かの夫人に扱かれたかもしれないが、貴族令嬢として最低限のマナーすら出来ていなかったのだからこれを機に学び直せば良いだろう?」
「・・・そうだね。後は陛下と宰相様の判断だよね」
アラン様も夫人のことをご存知だったのですね。
まぁ。アラン様のお家は公爵家ですからね。
陛下と一緒に夫人のご指導を受けていたのでしょう。
とりあえず、早く修道院を決めてもらってリリウム様がサフィール侯爵家に戻れると良いなぁ。
ラジェル様と二人きりで出かけるのも楽しいと思うけど、やっぱり女の子だけでゆっくりしたいとも思うのです。




