恐怖の帰宅路
父親たちが王宮から、母親たちが観劇からサフィール侯爵邸へと戻ってきました。
朝の段階では、鬱々とした雰囲気だったお父様がいつも通りの状態に復活したのに一安心し、母親たちのテンションの高さは見ないことにした私を含む子供たち一同。
ただ、なぜこんなに自分たち(ジェリク様を除く)の母親のテンションが高いのかわからない。
「母上、フローライト夫人お帰りなさい」
「ただいま戻りました。ラジェル、今日のお茶会はどうでした?」
「とても楽しかったですよ。この後、晩餐もご一緒してもらうよう手配しています」
「まぁ。お気を遣わせてしまって申し訳ありません」
「お気になさらず義母上」
私の婚約者様から【義母上】と呼ばれて更にテンションが上がるお母様に、お父様もお兄様もマリエルでさえも苦笑してます。もちろん私もですが。
サフィール侯爵家の子供たち。特に双子姉妹は兄の婚約者一家と晩餐までまだ一緒に過ごせることを大いに喜んでいます。
(ちなみに、ギルフォードが通常状態に復活したのは、国王(実際は王妃と宰相)に娘の婚約の報告をしたからである。要は諦めの境地に至ったためである)
その後、ジェリク王子も含めての晩餐会は和やかな雰囲気で終了しました。
ただ、ジェリク王子とリリウム様は王宮へと戻らなければなりません。
リリウム様を見送るサフィール侯爵様の笑顔が怖かったです。
リリウム様とジェリク様は8年前に婚約しているのにまだ納得されていないようです(笑)
帰りの馬車に乗り込む前、ラジェル様と次に会う約束をしました(照)
「マリア嬢。今度のお休みの日は二人きりで出かけませんか?」
「は、はいっ!ラジェル様とのお出かけ楽しみです!」
ヤバイ・・・力が入りすぎてしまった。恥ずかしいなぁ~もう・・・
視線を巡らせてみると、反応はそれぞれです。
真っ赤になってしまった私をラジェル様は優しい眼差しで見ています。
そしてお母様とマグリア夫人と双子姉妹はニマニマと私たちを見ています。
お兄様は、マリエルにはまだ早いとばかりにそっとマリエルを目隠ししました。
お父様とサフィール侯爵に至っては【勝手にしろバカップル】と言いたげな呆れ顔です。
はっきり言って、リリウム様とジェリク様が既に王宮へ戻っていて良かったです。
でないと、ロベリア様からの質問攻撃に負けたジェリク様が、お茶会から晩餐会までのことを白状してしまいそうですからね。
あ。ちなみにルピリア様にはラジェル様から婚約した旨を認めたお手紙を送ったそうです。
もちろん、来られても困るからロベリア様からの近況報告の手紙で満足するようにと一筆添えたそうです(笑)
馬車に乗り込み、一路屋敷へと戻ります。
ただ、その馬車の中でお兄様からの質問に返答に困ってしまう私・・・
「ねぇマリア。この前学園で先輩女生徒から呼び出されたって本当?」
「えっ!?お兄様・・・なぜそれをご存知なのですか?」
「・・・ふぅ~ん。本当なんだ。何で僕に教えてくれなかったのかな?」
「えっと・・・その・・・今まで色々あったのでご心配をかけたくなかったのです・・・」
「今日のお茶会でリリウム嬢とジェリク様から聞かされた僕の気持ち分かる?」
「あ・・・あの・・・ごめんなさい。お兄様・・・」
お兄様・・・そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないで~
罪悪感ハンパナイです(涙)
「で?その先輩は、なんでマリアを呼び出したのかな?」
「えっと・・・私の婚約者がラジェル様以外のご子息だと勘違いされていたらしくって・・・どのお家のご子息と婚約したのかと問い詰められました・・・」
「へぇ・・・それはどこの家のご令嬢なのかな?」
「そうだな。それはお父様も知りたいな」
ひぃっ!?ななななんでお父様まで参戦するの!?
前門のお兄様、後門のお父様!?
お母様に助けを求めようと視線を向けると【お母様も知りたいわ】と目が言っている・・・
これは先輩の名前を言っちゃダメだ・・・
お兄様だけでもヤバイのに、お父様とお母様までだなんて・・・
「あの・・・えっと・・・先輩のお名前は存じ上げないのです」
く・・・苦しい言い訳だな・・・
お父様もお母様もお兄様も納得してない。
マリエルはよくわかっていないらしくキョトンとしていた。
これ以上は馬車の中では聞けない(マリエルがいるから)と判断したのか、お兄様はそれはそれは美しい笑顔でこうのたまった。
「そっか。じゃあ、屋敷に着いたら思い出すかもしれないから、帰ったらゆっくりと話しをしようか?」と・・・




