お返事しました
お母様の黒オーラから退避した兄弟と双子姉妹が、避難先の庭園で恋話と暴露話に花を咲かせていた頃、サロンでは私とラジェル様のお話しになっていました。
お父様は相も変わらず不機嫌なまま。
・・・そろそろお母様の堪忍袋の緒が切れますよ?
ちょっと腰が引けてしまっているのは、仕方がないはず。
たとえサフィール侯爵夫妻とラジェル様が平然としていたとしても!
怖いものは怖いのですから!
「・・・あなた?そろそろお話しを始めたいのですがよろしいかしら?」
ひぃぃっ!お母様のコメカミがピクついてきてますわ!
お父様!!そろそろお母様の不機嫌度がMAXになりそうです!
「・・・あの。お父様?晩餐まであまりお時間もありませんし、そろそろお話しをして頂きたいのですが・・・」
「・・・・・・」
ぅおいっ!スルーされた?婚約者候補としたのはお父様でしょう!?
今更、『納得できません!』ってな感じの態度を取られても困るのですが?
「・・・お母様。サフィール侯爵様には申し訳ございませんが、お父様は体調が優れないようですので、寝室でお休みいただいたらいかがでしょう?」
「そうね。大急ぎで王都まで来ていますから、お疲れが出たのでしょう。サフィール侯爵様。申し訳ございませんが、主人を休ませてもよろしいでしょうか?お話しは私がさせていただきます」
ラジェル様は動じてないけど、両親のやり取りにサフィール侯爵夫妻はポカーンとしてます。
まぁ・・・サフィール侯爵夫人はお父様と学年が同じでしたから、学園時代のアレコレを知っていると。
そして、夫であるサフィール侯爵も当時婚約者だった夫人から学園でのアレコレを聞いていたと。
・・・もっとも、そのアレコレの内容は両親からもラジェル様からも聞けませんでしたが。
再起動はサフィール侯爵よりも夫人の方が早かった。
「あなた。ギルフォード殿の体調が優れないのであれば、お休みいただき、フェリス様とお話しさせていただきましょう。いかがですか?」
「ぁ・・・あぁ・・・そうだな。領地からの強行軍なら、大分お疲れでしょう。ゆっくり休んで頂いて、陛下へのご報告などの日程については、フェリス夫人とお話ししよう・・・」
お父様の顔が絶望に染まりましたが・・・自業自得ですね。
そもそも、お父様がしっかりと対応していればお母様を怒らせることなどなかったのですから。
お母様が使用人を呼んで、お父様を寝室へと強制退場させました。
我が家のラスボスはお母様ですね(笑)
「・・・失礼しました。では、お話しを進めましょう」
「そうですな」
「新年祝賀会後に、主人からサフィール侯爵様宛に一通の書状をお送りいたしました。マリアの婚約者候補として、ご子息のラジェル殿をと考えていると。ラジェル殿のお気持ちの確認をして頂きたいと。了承のお返事を頂いていますが、それは変わりないと言うことでよろしいですか?」
「はい。私はマリア嬢を学園卒業後に妻として迎えたいです」
ラジェル様のお返事を聞いて、お母様は満面の笑みです。
先ほどまでの、貼り付けたような笑顔とは違いますね。
「わかりました。では、マリア。あなたはラジェル殿との婚約についてはどう考えているの?返事については手紙が来ていたけれど、答えは変わらないと言うことでいいのかしら?」
「はい。お母様」
サフィール侯爵夫妻とラジェル様は、私の返事については薄々気づいていたみたいだけど、改めて自分の口で告げるのは恥かしいな・・・
でも、ちゃんとラジェル様に伝えないとね!
「ラジェル様との婚約をお受けします」
返事を聞いたラジェル様は、私を抱きしめてきました。
親がいるの分かってますか!?恥かしいのですが!?
・・・お父様がこの場に居なくて良かったかも。
「アラアラ。ラジェル殿は情熱的な方ですのね」
「お恥かしい限りですわ。息子はずっとマリア様のことを想っておりましたから。かれこれ8年の片思いが実るのですから、嬉しくてしょうがないのでしょう」
侯爵夫人がサラっと暴露話を混ぜてきてる・・・
そしてラジェル様は、そんな事は耳に入ってきませんとばかりの様子。
サフィール侯爵に視線を向ければ、苦笑していらっしゃる・・・
侯爵夫妻が気にしてないならいっか。ちょっぴり投げ遣りかもしれないけど、一々気にしていたら身が持たない(主に胃が)
「それでは、陛下へラジェル殿とマリアの婚約についてのご報告はいつにしましょうか?それに婚約式や婚約のお披露目を必要ですからね。マリア。これから忙しくなるからね?」
うっ・・・陛下への報告はお父様とサフィール侯爵がしてくれるから問題ないけど、婚約式とお披露目・・・イヤだなぁ~あまり目立ちたくないんだけどなぁ~
そんな私の内心を敏感に読み取ったラジェル様が
「陛下のご報告は父とフローライト辺境伯様にお願いいたします。婚約式とお披露目については、あまり派手に行わずに親しい友人と親族のみで行いたいです」
「えぇ~・・・ラジェル、それではマリア様がお可哀想じゃないの」
「あ・・・あの。できれば私としても親しい友人と親族のみで行いたいです」
「あら。どうして?大々的に行えば、変な輩が寄ってこなくなるわよ?」
「お母様・・・それはそうかも知れませんが、私は学園で色々なことに巻き込まれて注目を集めてしまってます。これ以上の注目は不要ですわ」
経験者(?)であるお母様が言うことは、まぁ至極ごもっとも。
だけど、お母様はお父様と婚約してからもちょっかい出されていたんじゃなかったっけ?
アスター伯父様が暴露してくれてますよ?
伯父様曰く
【フェリスがギルフォード殿と婚約して、お披露目まで済んでるのにさぁ~諦めの悪い一部の子息が父上を通してチョコチョコとちょっかいを掛けてきててねぇ~それはもうフェリスが怒り狂ってたよ~】である。
ちなみにその筆頭が現国王陛下だったりする。
だから、お父様は王都の屋敷にお母様や私を連れて来るのを嫌がる。
領地の運営に忙しいということもあるようですが・・・
とりあえず、晩餐会でお父様と兄弟と双子姉妹に報告しないとね




