チャンスの神様の前髪を鷲掴みしましょう
色々なことが有り過ぎたのか、婚約についてどうすれば良いのかお兄様に聞いたあたりから記憶がありませんでした。
衝撃告白の連続で私の脳内処理が限界を迎えたのか、気づけば自室のベットに寝ていました。
どうやら、今は明け方に近いようですね。
窓の外が薄っすらと明るくなってきていますよ。
「あ~・・・気を失ってそのまま寝ちゃってたのかぁ~」
私の婚約者候補がラジェル様・・・
う~ん・・・実感が湧かないなぁ~確かにラジェル様は私にとても良くしてくれてたけどさぁ。
ただ、私の知らないところで話しが進められていたのがちょっと・・・
無意味にベットの中で右に左にゴロゴロとローリングしてしまいました(笑)
気が済むまでローリング(笑)して、ふと大事なことを確認するのを忘れていたことに気づきました。
そう、マリエルの婚約者候補の確認!!
お父様とお母様がお選びになった令嬢なら、エリカ嬢のような困ったちゃんではないと思います。
お兄様も反対していない様子なので、家格・性格はお兄様基準を満たしていると考えて間違いないでしょう。
しかし・・・お兄様は弟妹の私たちが先に婚約者候補が決まってしまっても大丈夫なのでしょうか?
私は女だから『嫁き遅れにならなければ良いなぁ~』位にしか考えてない。
マリエルは次男だから、ゆくゆくはお父様の跡を継いだお兄様の補佐をすることになるでしょう。
しかし、お兄様は我がフローライト辺境伯家の次期当主になるのだから、早く婚約者を見つけなければならないのでは?と思う。
・・・冗談抜きにお父様にお兄様に婚約者候補を見つけてもらうようお手紙しましょう。
そんなことをツラツラと考えていたら、起床の時間になりました。
なんとか着替えて朝食の席へと向かいます。
ダイニングにはお兄様がすでに座っていました。
「おはようございます。お兄様」
「おはようマリア。体調はどうだい?」
「はい。もう大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ございません」
「いや。昨日は色々なことがあったからね。今日一日ゆっくりと休んだほうが良いだろうね。明日からはまた、学園で授業があるわけだしね」
「・・・あのお兄様。私の婚約者候補についてのお話しなのですが、お返事はいつまでにしたらよろしいのでしょうか?」
「う~ん・・・なるべく早めの方が良いと思うけど、無理に決めなくても良いんじゃないかな?父上も、本当はラジェル殿を候補にするのがイヤみたいだしね」
お兄様は苦笑していますが、若干黒く見えるのは私の目の錯覚ですよね?
よほどお父様はウザかったのでしょうねぇ。
でも、そっかぁ~早めにお返事した方が良いのなら・・・
女は度胸!!チャンスの神様は前髪しかないのだから、この機会を逃しちゃだめだよね!
チャンスの神様の前髪を鷲づかみにしないとね(笑)
「それでは、私はこのお話しをお受けしようと思います」
「マリア。無理してない?」
「無理していませんわ。確かにラジェル様とお会いするようになって一年にも満たないですが、その短い期間でもラジェル様とご一緒した時間を信じたいのです。それに、候補がラジェル様だとお聞きする前までは、婚約者が決まったらラジェル様とお会いできなくなるのをイヤだと思ったのです」
「そうか。マリアの気持ちは分かったよ。すぐに父上に手紙を送るよ。マリアがラジェル殿との婚約を了承したとね」
「お願いいたします。・・・それでお兄様?お兄様は良い人はいないのですか?私やマリエルより先に後継であるお兄様にこそ婚約者候補が必要なのでは?」
「ふふ。そうだね。特に僕は騎士科だから、普通科に比べると出会いは少ないかな」
「でしたら、私からお父様とお母様・・・にお手紙を書きます。お兄様にも婚約者候補を探して下さいって」
とっても良い笑顔で言った私の一言でお兄様が慌てています。
多分、お父様だけだったらここまで慌てないでしょう。
お母様にもお手紙を書いてしまうと、冗談抜きですぐにでも候補を見繕ってきそうです(笑)
「マリア・・・それは勘弁して欲しいな。父上はまだしも、母上に僕の婚約者候補を探して欲しいなんて手紙が届いたら、すぐにでも候補の令嬢たちをリストアップして送って来そうだからね」
「ふふふ。そうですわね。お母様には・・・・・お手紙を書くのはやめておきますね」
「そうしてくれるとありがたいな」
お兄様気づいてます?お母様には・・書きませんが、お父様にはお手紙を書きますよ?
だって最近、先輩令嬢からお兄様の好みのタイプを聞かれる事が多くてちょっぴり迷惑を被ってますからね?
ちょっとした意趣返しをしても、私は悪くない。・・・はず




