入学式
王侯貴族の子息令嬢が通う事を義務付けられているアダマンティ王立学園。
その学園に入学するために、領地から王都にある辺境伯家の屋敷に引っ越してきました。
入学式に参列するため、両親と弟も一緒です。
入学式後、数日滞在して両親と弟は領地へ帰り、王都の屋敷には私と兄と使用人のみになります。
学園では生徒たちは揃いの制服を着用する事になっています。
今日、その制服が届いたので家族にお披露目です。
制服なんて、前世で高校生の時に着て以来だわ~テンション上がる!!
「いかかがでしょうか?」
「よく似合っているよ。マリアも学園に入学する年齢になったんだなぁ・・・」
お父様が涙ぐんでいますね。あれ?気づけばお母様まで・・・
そんなに?って思うかもしれないけど、学園を卒業後に結婚する令嬢が多いためですね。
でも、それは入学前に婚約者がいる場合のみです。
私に婚約者はいません!
領地にいた時に、何件か申し入れはあったみたいだけど、お断りしてもらいました。
前世の感覚が抜け切らないのもあるけど、学生時代を満喫したいし、なによりヒロインちゃんの監視もしなきゃならないしね~
まぁ、そんな事は言えないので、
『私にはまだ早いと思うの』
って瞳ウルウルの上目遣いでお父様に言ったらお父様は
『そうだよな!まだ早いよな!』
と言ってお断りしてくれました。
王都の屋敷で、家族と過ごすこと一週間。
ついに学園に入学する日がきました。
入学式が行われる大広間へ向かう前にクラス分け表を見にいきます。
ゲーム通りなら、侯爵令嬢と騎士団長子息以外の攻略対象者たちとヒロインちゃんは同じクラスのはず。
ですが・・・
(あれあれ?ヒロインちゃんの名前が侯爵令嬢たちと同じクラスにない・・・)
ちなみにクラス分けは入学前に試験を受けてその成績によって分けられます。
筆記試験で貴族としての常識を、面接で礼儀作法について見られます。
まさかとは思うけど・・・ヒロインちゃん勉強しなかった?
ゲーム通りに、侯爵令嬢と王子は普通科のAクラス。私も同じAクラス。
念のため他のクラスを見てみるとあった!!ヒロインちゃんEクラスだ・・・
呆然としていると、少し離れたところから甲高い声で喚いている女の子がいます。
「何で私がAクラスじゃなくてEクラスなの!?おかしいわよ!」
声がする方を見ると、居た!ヒロインちゃんだ!!
まわりから奇異な目で見られている事に気づかないあたりKY?
クラス分けに納得していないヒロインちゃんはブツブツ言いながらも大広間へと移動します。
お兄様は騎士科のAクラスですから、合同授業は普通科Aクラスと一緒に行います。
つまり、ヒロインちゃんは合同授業で攻略対象者たちと接する事ができないわけです。
でも、まだ安心はできないわ。だって、ゲーム補正という名のご都合主義が発生しないとも限らないからね!!
大広間へ生徒全員と新入生の家族が揃った所で、入学式が始まります。
そっとEクラスの方へ視線を向ければ、ヒロインちゃんキョロキョロしてます。
きっと、攻略対象者たちを探しているのでしょう。
学園長や来賓の長々しいお話しが終わると、在校生からの祝辞です。
ちなみにお兄様は騎士科で成績が主席なので、騎士科の在校生代表です。
お兄様が壇上に姿を現すと、ヒロインちゃんが首を傾げています。
そりゃそうだ。ゲームではお兄様は普通科主席で普通科の在校生代表として登場するはずだったんだから。
でも、ヒロインちゃん・・・お兄様を見る目がギラギラしてるよ~怖いよ~(笑)
騎士科、普通科の在校生代表の祝辞が終わると、今度は新入生の答辞。
騎士科の新入生代表は騎士団長子息、普通科の代表は侯爵令嬢だった。
あれあれ?ゲームでは普通科の新入生代表は第2王子だったはず・・・
入学式から、何だかシナリオとはちょっと変わってしまってるなぁ。
ちなみに、騎士団長子息を見る目はお兄様を見る目と同じでギラギラしてる~
そして、侯爵令嬢を見る目は・・・ヤバイ・・・今夜夢で見ちゃいそう・・・めっちゃ睨んでる~
そんなヒロインちゃんの近くにいる同級生たちは空気と化してる!!(笑)
ヤバイ!ヤバイわ!!笑いを堪えられなくなりそう!!
どうにか笑いを堪えることに成功した私は、式が終了すると自分のクラスへと移動する事にしました。
その時にお兄様が声をかけてくれたんだけど・・・
お兄様・・・勘弁してくださいませんか?ものすごく注目されてる!!
そしてヒロインちゃんがめっちゃ私を見てる!!
あっ!!騎士団長子息もだ!!
冷や汗を流す私のところへ両親と弟まで来ちゃったよ~やめて~見られて恥ずかしいよ~
「マリア。入学式お疲れ様。この後クラスへ移動でしょ?案内するよ」
「そうしてもらいなさい。サリエルと一緒ならお父様も安心だ」
・・・私もう13歳なんだけど・・・前世と合わせたらアラフォーなんだけど・・・
がっくりと項垂れてしまいそうになるのを何とか堪えてニッコリと微笑むことに成功しました。
「ありがとうございます。サリエルお兄様。お願いしてもよろしいですか?」
「もちろんだよ。父上、マリアに変な虫が付かないように目を光らせておきますからご安心下さい」
「頼んだぞサリエル。じゃあ、マリア頑張るんだよ」
そう言って、お兄様と私を残して両親と弟は屋敷へ帰って行きました。
「じゃあ、マリア行こうか?」
「はい。お兄様」
エスコートする兄と私を騎士団長子息とヒロインちゃんがジッと見つめていることは見ない事にした。




