ドレスを試着しました
採寸から10日後、屋敷にサフィール侯爵家からドレスが届けられました。
試着して細かな手直しをするため、侯爵家御用達のお針子たちも一緒です。
ですが・・・なぜラジェル様が一緒に来ているのでしょう?
そしてなぜ、試着した私を満足気に見ているのでしょうか・・・
「マリア嬢。よくお似合いですよ」
「・・・ありがとうございます」
「う~ん・・・寸法は問題ないですね。あと少し刺繍を足しましょうか」
・・・は?『刺繍を足す』?イヤイヤイヤ!コレにお飾りがプラスされるんですよね!?
コレ以上は装飾過多ですよ!!
今だって『ドレスを着る』じゃなくって『ドレスに着られてる』感が半端ないのですが!?
ラジェル様の銀髪に合わせて、銀糸で細かな刺繍が入ってますが?
しかも、小さいとはいえ宝石も縫い付けられていますが?
それでも足りないと!?
「あの・・・ラジェル様?これ以上の刺繍は不要かと・・・お飾りもございますし・・・」
「そうですか?マリア嬢に相応しいドレスをと考えているのですが・・・」
あるぇ?へにょっと垂れた耳と尻尾の錯覚が・・・
それに私に相応しいドレスってなんだ?
私的にはもっと刺繍と宝石の縫いつけが少なくて良いのですが?
「どうしてもダメですか?」
「ダメというか・・・私としては、刺繍はもう十分です。とても綺麗なドレスですわ」
「・・・わかりました。では、今回は刺繍はこのままにします。マリア嬢は謙虚な方ですね」
謙虚とは違うと思いますよ?それに『今回は』って言いました?
ラジェル様の私に対するイメージって一体・・・
それに、王宮夜会や新年祝賀会に特別参加しなきゃならなくなってますが、私まだ社交界デビュー前ですからね?都合よく忘れられてます?
「あの・・・ラジェル様?私はまだ社交界デビュー前なのですが・・・デビュー後であれば問題ないのかもしれないですが、私はまだ学生の身分です。正直申し上げて、このドレスも分不相応な位ですのよ?」
「そんなことはないですよ。マリア嬢の心の美しさを体現できていないと私は思いますよ?」
そんなニッコリ笑顔で言われても・・・
なにこの羞恥プレイ・・・
耳どころか首まで真っ赤になってるわ・・・私・・・(泣)
うわ~・・・ラジェル様って天然タラシなのか?
お針子さんたちまで真っ赤になっちゃってるよ~メッチャ目が泳いでますよ~
どう返答したら良いか考えていると、お母様が来ました。救世主キタ~(笑)
「ラジェル様。この度はマリアのためにこのような素敵なドレスを作っていただきありがとうございます」
「礼にはおよびません。新年祝賀会に私のパートナーとして参加していただくのですから、当然のことですよ。それに美しく着飾ったマリア嬢を私が見たかったのですから」
ヤ~メ~テ~マジ勘弁してください・・・これ以上はもう耐えられません・・・
もう着替えたいなぁ~でもお母様とラジェル様が話し込んじゃってるからなぁ~
チラチラとお針子さんたちを見るけど、何故かシラ~っと視線を逸らされる・・・何故だ?
「お話中失礼します。あの・・・ラジェル様?試着も済みましたし、サイズも問題なさそうなので、そろそろ着替えようかと思うのですが・・・」
「あぁ・・・失礼しました。私としてはもう少し見ていたいのですが、仕方がないですね」
「では、ラジェル様。マリアの着替えが終わるまでサロンにてお茶でもいかがですか?主人とサリエルがラジェル様とお話ししたいと申しておりますし」
「わかりました。では、マリア嬢。サロンにてお待ちしておりますね」
「はい。では着替えたらサロンに参りますわ」
お母様とラジェル様がサロンに移動すると、ドッと疲れが・・・
精神的な疲れが・・・2週間後には新年祝賀会だけど私の精神力は持つのかしら?
お針子さんたちが手際よくドレスを脱がしにかかります。
正直、メッチャ恥ずかしいです(涙)
着替え終わるとお針子さんたちはドレスを持って帰って行きました。
うちの両親と兄弟それにラジェル様という、なんとも気が重くなる面子がそろっているサロンへと足取り重く向かいます。
次にあのドレスを着るのは新年祝賀会のときです。
・・・・・・刺繍増えてないと良いけど。
ラジェル様が移動する前にお針子さんたちに視線を向けてたのが気になる・・・




