吊り橋効果?
エリカ嬢の2回目の襲撃翌日、私は寝不足でフラフラしながら登校しました。
お兄様が心配そうに見ていますが、原因はお兄様ですからね?
夕食のときにラジェル様のことをどうするのか聞いて来るからですよ?
いつものようにお兄様のエスコートで登校すると、昨日とは違ってなんだか静かです。どうしたんでしょうかね?
不思議だなぁと思いつつ、クラスに到着。お兄様のご自分のクラスへと向かいます。
クラスメイトたちは相変わらずなので気にしない事にします。
気にしたところで何も変わらないだろうしね。
人間、開き直りも必要でしょ(笑)
今日も美しいリリウム様となるべく接する機会を持ちたくない攻略対象ズが来ました。
「おはようございます。マリア様」
「おはようございます。リリウム様」
皆様と挨拶すると、ジョージ様が今朝の学園の激変ぶりについて説明してくれました。
「今朝、登校してきたときに妙に静かじゃなかった?」
「はい。昨日はずいぶんとざわついておりましたので驚いています」
「でしょう?あれね、サリエル殿とマリア嬢が兄妹だって先輩たちや、他クラスの生徒が知ったからなんだよ」
はぁ?・・・っていうか何で今までみんな知らなかったの?
入学してから結構経つよ?兄妹だから顔立ちも似てるのに・・・
唖然としてしまいますよ!アホ面になってしまっても私悪くないよね?
「・・・そうでしたの」
リリウム様と攻略対象ズ・・・笑いを堪えてますね?
プルプルしてますよ?・・・クラスメイトたちも!笑いたいなら笑えばいいさ!(泣)
「このクラスはサリエル殿と同じクラスに兄がいるアラン殿もいるし、マリア嬢がサリエル殿の事を『お兄様』って呼ぶから知ってたけど、他はそうじゃないからね」
だとしてもだ・・・気づくの遅いよ。この国の次世代を担う子息令嬢がそんな事で大丈夫なの?
正直、この国の行く末が心配になってきたよ・・・
「昨日のエリカ嬢のことで、クラスメイトたちも先輩や他クラスの生徒たちに質問攻めにされたらしくってね」
「そうでしたの・・・クラスの皆様にはご迷惑をおかけしてしまったのですね。・・・申し訳ないことをしました」
すると今度はアラン様が面白そうに続けます。
「マリア嬢が謝る事はないよ。クラスメイトたちはサリエル殿とマリア嬢が兄妹だって先輩たちに話したら、一様にポカ~ンとした表情をされたって。それはもう楽しそうに話してたよ」
周りに視線を向ければ、クラスメイトたちは揃って頷いてます。
それもすっっごいイイ笑顔で!
・・・そっかぁ~面白かったのかぁ~ちょっと見てみたかったかも・・・
遠い目になっても仕方がないよね?
「それに、マルス兄上に聞いたけど、騎士科の3年Aクラスじゃ婚約者が決まっていないクラスメイトがこぞってサリエル殿にマリア嬢のことを聞きにきたって?」
「そうらしいですね・・・私もお兄様から伺って驚きましたわ」
食事をノドに詰まらせそうになる位にな!
なんかもぅ・・・新学期始まったばかりなのになぁ~
新学期初日から色々ありすぎでしょ~
「マルス兄上は、サリエル殿が徐々に不機嫌になってきて恐ろしかったって言ってたよ」
・・・アラン様?なぜそんなに楽しそうなんでしょう?兄上様が怖がるほどの不機嫌って・・・
お兄様どんだけ怒っていたのでしょう?
帰るときに怖かった原因は、エリカ嬢の叫び声だけじゃなくって、ご自分のクラスメイトからの質問攻めがあったからなのか・・・
「マルス様にはお兄様が大変申し訳ないことをいたしました」
「気にしないで。恐ろしかったって言ってたって、マルス兄上はそれはもうイイ笑顔だったよ?面白いモノ見つけた!って感じで」
マジでか!?不機嫌なお兄様を見て、面白いモノ見つけたって・・・
・・・マルス様大物だわ。その感覚にちょっと引きそうだけど・・・
朝の変化については、クラスメイトたちのおかげとわかりました。
いやぁ~良いクラスメイトに恵まれたわ(喜)
激変したのは、朝だけじゃりませんでした。
休み時間や教室移動などの時に、他クラスの女生徒や先輩から声をかけられる事が多くなりました。
こっそりとリリウム様に聞いてみると、案の定な答えが返ってきました。
「マリア様にお声をかけていらしたご令嬢ですが、皆様婚約者が決まっていない方ばかりですわ」
やっぱりかぁ~お兄様狙いだよねぇ・・・
その中にエリカ嬢が混じってないことにはビックリしたけど。
普通科1年の女子生徒のみの授業も、ちゃんと出席してますよ~
・・・変わりすぎでしょ?
私からお兄様へエリカ嬢の奇行が報告される可能性があるから大人しいんだろうなぁ~
まぁ・・・先輩たちのように積極的に声をかけられても困るけど・・・
平穏な学生生活を送れれば、もぅそれだけで良いわ・・・
な~んて思ってたけど・・・まさかあんな目に合うなんて思ってもみなかったですよ。
新学期が始まって早2ヶ月が過ぎました。おおむね平和です。・・・一応ですが。
相変わらず、お兄様狙いの女生徒が事あるごとに声をかけてきます。
ついでにラジェル様狙いの方もですが・・・
正直、ラジェル様狙いの令嬢はリリウム様に声をかけるべきじゃなかろうか?
リリウム様は妹ですよ~?私はただのお友達ですよ~?
・・・まぁリリウム様の傍には常にジェリク様がいらっしゃるので声をかけづらいのでしょうが・・・
もっとも?お兄様狙いの令嬢と、ラジェル様狙いの令嬢がお互いに牽制しあっているので、私の見える範囲では特に問題は起こってませんでした。
ある日、先生からラジェル様が学園に来ていて、私を呼んでいると言われ応接室へと向かってました。
階段を降りていると背中に衝撃が!!
あっ!と思った時には階段から落ちそうになってました。
そう。『落ちそうになってた』です。落ちてません。
なぜなら、応接室にいるはずのラジェル様が抱きとめてくれたからです。
「大丈夫ですか!?マリア嬢」
「あ・・・ありがとうございます。ラジェル様のおかげで助かりました・・・」
うわぁ~めっちゃ心臓バクバクいってるよ~
ラジェル様と一緒にいた先生が、階段を駆け上がっていきましたが、私を突き飛ばした人物は見つからなかったようです。
「マリア嬢、歩けますか?」
歩けるか聞かれたけど・・・スミマセン・・・腰が抜けました・・・
私の状態に気づいたラジェル様は
「失礼。マリア嬢」
そう言って私を横抱きにしました。
いわゆる『お姫様抱っこ』です!!
いぃやぁぁぁ~恥ずかしい!!なにこの羞恥プレイ!!
私の顔はきっと真っ赤でしょう・・・恥ずかしくって顔上げられない・・・(涙)
応接室に到着し、ソファにそっと降ろされました。・・・が。
耳が熱い・・・心臓のバクバクも治まらない・・・
ラジェル様から話しかけられても、曖昧な返事しか返せない・・・
これってもしかして・・・いわゆる『吊り橋効果』ってやつなのでしょうか?




