ヒロイン襲来 2
クラスの入り口で待ち構えているエリカ嬢の下へと向かいますが・・・何だかいつもと雰囲気が違いますね
「お待たせいたしました。エリカ様、一体何のご用でしょうか?」
「あなたとサリエル様の関係を教えて欲しいんだけど?」
はぁ?お兄様との関係って・・・兄妹以外の何者でもないのに何を言っているんだろう?
・・・まさか私とお兄様が兄妹って知らないのかな?
「あの?関係と申されますと?」
「サリエル様がいるのに、リリウムの兄と婚約っておかしいんじゃない?」
おっかしいなぁ~入学式の日の帰りにお兄様は
『妹と帰る』って言ってたのになぁ・・・聞こえてなかった?
それにクラスに乱入した時に私のフルネーム叫んでたのに気づかなかったのか?
・・・だとしたら残念すぎる。
まぁ・・・ヒロインの立場からしたら、私なんてモブの1人。
攻略対象たちとリリウム様しか見えてないなら仕方がないのかな?
「あの・・・エリカ様?サリエルは私の兄ですが・・・」
「はぁ!?サリエル様に妹なんていないわよ?」
イヤイヤイヤ!いますよ!?しかも目の前に!!
『電波』で『残念思考』な上に思い込みが激しすぎる。
「あの・・・エリカ様が仰る『サリエル様』とは『サリエル・フローライト』でお間違いないですよね?」
「そう。この学園に『サリエル』って名前の生徒はサリエル・フローライトのみでしょ。あなた頭悪いんじゃない?」
出そうになる溜息をグッと堪えます。
クラスメイトたちはエリカ嬢を珍獣でも見るような目で見ていますね。
「エリカ様。サリエル・フローライトは私の血の繋がった兄です。私には兄と弟が1人づつおりますが?」
「えっ!?本当に妹!?」
「はい。ご存じなかったのですか?」
「・・・」
「・・・」
エリカ嬢・・・顔が真っ赤ですね~頭から湯気が出そうってこういう状態の事ですかね(笑)
「じゃ・・・じゃぁ・・・今までの事って全部サリエル様も知ってるって事?」
「えぇ・・・まぁ・・・両親は基本領地におりますので、在学中は王都の屋敷で私の保護者の代わりをしていますわ。ですので、先生方からの報告は全てお兄様へ行きます」
「いぃやぁぁぁぁ~っ!!」
エリカ嬢は叫びながら走り去っていきました。
廊下にいた生徒たちは何事かと、走っていくエリカ嬢を見ています。
・・・廊下は走ってはいけませんよ?
呆然とエリカ嬢を見送っていると、リリウム様が声をかけてきました。
しかも笑いを堪えて。私も盛大に噴き出しそうになるのを堪えてますから、2人して肩をプルプルと震わせてます(笑)
「・・・マリア様。大丈夫ですか?」
「・・・リリウム様。大丈夫ですわ。エリカ様は私とお兄様が兄妹だとご存知なかったようですね」
そういうや否や、クラスメイトたちは大笑いします。
紳士淑女にあるまじき大爆笑です。
・・・・・・まぁでも仕方がないよね?
私のフルネーム叫んでたのに、お兄様と私が兄妹と思わずに『関係は?』なんて聞いてきたんですからね(笑)
「これで少しは嫌がらせが減ると良いのですが・・・」
「リリウム様・・・私への嫌がらせが減って、リリウム様への嫌がらせが増えるかもしれないのですよ?」
そう・・・そうだよ!私からリリウム様へ嫌がらせのターゲットが移るのも困るんだよ!!
う~ん・・・学園では別行動でって話したけど、一緒に行動した方がリリウム様を守れる?
でもなぁ・・・それだとラジェルさまとの噂を肯定する事になるかも知れないしなぁ・・・
ヤバイ・・・八方塞り!?四面楚歌だよ!!
どうしようか悩んでいると、お兄様がクラスに迎えにきました。
「マリアお待たせ。帰ろうか?」
「はい。ではリリウム様。また明日」
「えぇ。マリア様また明日」
「「ごきげんよう」」
とりあえず、リリウム様に挨拶して帰ります。
学園を出てすぐにお兄様が先ほどの事について聞いてきます。
「マリア。先ほど、廊下で叫び声がしていたのは何?」
あれ?お兄様ちょっと怖いよ?
まぁ、エリカ嬢にナニかされた訳じゃないからいっか。
「エリカ嬢が私とお兄様の関係を聞きにクラスまでいらしたので、兄妹だと教えて差し上げたら悲鳴を上げて走り去っていったのですわ」
「・・・はぁ?」
お兄様・・・ポカ~ンとしてしまってますね(笑)
分かります。私も最初『ナニ言ってんだコイツ?』って思いました!
クラスの入り口で話してたので、やり取りを聞いていたクラスメイトたちが大爆笑した位ですしね!(笑)
「エリカ嬢は、お兄様がいるのにラジェル様と私が婚約したと勘違いしたようですよ?」
「・・・そもそもラジェル殿と婚約という話しも勘違いだしな」
お兄様不機嫌ですね~
それっきり屋敷に到着するまでお兄様は黙ったままでした。
両親とマリエルは夜会が終了した2日後に領地へと帰っていきましたので、夕食は私とお兄様だけです。
正直、気まずい雰囲気です(泣)
「マリア。ラジェル殿との事はどうするんだ?」
何ですか急に!?口に入れた食べ物をノドに詰まらせそうになったじゃないですか!!
「ゴフッ・・・何ですの?急に?」
「・・・今日クラスメイトから、マリアとラジェル殿の婚約は本当なのかと聞かれた」
はい?何でお兄様のクラスメイトからそんな事を聞かれるんだろう?
内心で首を傾げているとお兄様が不機嫌極まりないといった感じで続けます。
「聞いてきたのは婚約者がいない連中だ。マリアは婚約者が決まっていない数少ない令嬢で、王宮の夜会に特別に招待されたからな。・・・しかもウチの両親の娘だし」
??最後の方がよく聞き取れなかったのですが?
「ラジェル様はお友達ですよ?」
「マリアはそう思っていても周りはそう考えない。今日の学園での周囲の反応を覚えているだろう?」
「あ・・・」
お兄様が大きな溜息をつきます。
そんな残念な子を見る目で見ないで~
確かに噂が蔓延しきってるから、サフィール侯爵様からの申し出を受けるにしろ、断るにしろ早い方が良いのは分かってますよ?
でもなぁ・・・ラジェル様超イイ人なんだよなぁ・・・イケメンだし(笑)
一緒にいて楽なのって、家族以外では初めてなんだよなぁ~
自分の世界に入り込みそうになっている私を見て、お兄様がまた溜息をつきました。
「まぁ、どうお返事をするかはマリア次第だからね。一生のことだしよく考えると良いよ」
「はい。よく考えます」
夕食後、自室に1人になってから色々と考えるけど、結局答えは出ませんでした。
ラジェル様の事がイヤじゃないのが困りものです。
グルグルと考え込んでしまい、翌日は寝不足でした。