リリウム様も転生者でした
王宮に夜会での侯爵様の衝撃発言以降、特になにも起こらず休暇が過ぎていきます。
・・・ウソです。何も起こらなかったわけじゃないです。
夜会以降、ラジェル様がお時間があるときに外出しようとお誘いがきます。
休暇の課題を早々に終わらせてしまっていたので、正直失敗したと思いました。
課題が終わってなかったらそれを理由に断れたのに!(泣)
というわけで、私はラジェル様とサフィール侯爵家でお茶をしています。
二人きりじゃないですよ?リリウム様とジェリク様も一緒です。
正直、アウェー感が半端ないです。ジェリク様とリリウム様はナゼソンニウレシソウナンデスカ?
ラジェル様とくっつける気満々!?
いや・・・ラジェル様良い人デスヨ?リリウム様のお兄様だけあってイケメンですし?
ただなぁ・・・令嬢たちの視線がなぁ・・・それに、このままだと攻略対象たちと接する機会が増えそうだしなぁ・・・正直それはイヤダ・・・
「マリア嬢大丈夫ですか?具合が悪いなら部屋を用意しますよ?」
「大丈夫ですわ。ラジェル様どうぞお気遣いなく」
「マリア様遠慮することはございませんわ。いずれサフィール侯爵家の人間になるのですから」
リリウム様ヤメテ!!マジでヤメテ!!ジェリク様も笑ってないで、自分の婚約者の暴走を止めて!
そんな会話を繰り広げていると、侯爵様が夫人を共に来ました。
これ以上はキャパオーバーです・・・勘弁してください。冗談抜きで・・・
「マリア嬢ようこそ。お茶会は楽しんでますか?」
「はい。本日はお招きいただきましてありがとうございます」
「いやいや。本当ならばラジェルのパートナーとして夜会に出席して頂きたいところですが、それはまだ無理ですからな。個人的に開くお茶会ならばと思ってお招きしたのですよ」
ヤバイ・・・ラジェル様の嫁としてロックオンされてる・・・・・・孤立無援状態なお茶会ってどうなんだろうか・・・
「父上。マリア嬢が困っていますよ」
「おぉ悪い悪い。では後は若い者たちで楽しんでくだされ」
「ありがとうございます」
侯爵様一体何がしたかったんだ?一人首を傾げていると、リリウム様から爆弾発言が飛び出しました。
「そういえばマリア様。お母様から伺ったのですが、最近夫人たちのサロンではお兄様とマリア様の事が話題になっているそうですわよ」
えっ!?なにそれ?初耳ですよ?私とラジェル様の話題ってナニ?
まさか夜会での侯爵様の発言のこと!?それとも私の恥ずかしい発言のこと!?
「お兄様の婚約者がようやく決まったと専らの噂ですわ」
やめて~リリウム様なんでそんなに嬉しそうなの!?侯爵様や私の発言どころか噂が一人歩きしてる!!
どうしよう・・・外堀が埋められてしまった・・・しかも徐々に内堀も埋められ始めてないか?(汗)
「リリウム。そんなに噂になっているのかい?」
「えぇ。王宮での夜会の時にマリア様とお兄様3曲も踊ってらしたでしょう?それで夫人たちがようやくお兄様に婚約者が現れたと」
ヤラレタ・・・道理でラジェル様が連続して踊りたがった訳だ・・・
このままじゃ内堀も埋め尽くされてしまう・・・
リリウム様嬉しそうだなぁ・・・あっ!そういえばリリウム様が転生者かまだ確認してない!!
どうしようかなぁ~あと数日で休暇が終わっちゃうよ~
「あの・・・リリウム様少々二人だけでお話ししたいのですがよろしいでしょうか?」
「二人だけでですか?私は構いませんが・・・ジェリク様お兄様よろしいですか?」
「「構わないよ」」
「それでは少々失礼します」
リリウム様と一緒にお茶会の席を立ちます。
どうしよっかなぁ~あっ!庭園に東屋があるからあそこでいっか。
リリウム様と庭園内の東屋に向かいます。周囲に使用人の姿はなし・・・よし!
『乙ゲーのシナリオの裏じゃこんな事になっているんですね~驚きです』
『本当に・・・って・・・え?日本語??』
「リリウム様・・・転生者ですね?しかも、この乙ゲーのプレイヤーではありませんでしたか?」
「マリア様・・・いつ気が付きました?」
「エリカ嬢がクラスに乱入してきて、先生に連行されるときに日本語で呟いていたのを聞いてしまったのです。それでリリウム様も転生者かなって」
「私もって・・・マリア様も転生者なのですか?プレイヤーだった?」
「いいえ。前世での私の妹がプレイしていたんです。妹は内容をそれはもう熱く語ってくれたのである程度のことは知っています。エリカ嬢もあの発言からするに転生者で間違いないでしょう。自作自演したあの騒動のときも好感度がどうのこうのと言ってましたし」
「そうですか・・・やはりエリカ嬢も・・・私はシナリオ通りに進むと、国外追放か死亡エンドです。しかもサフィール侯爵家は没落の憂き目にあいます。今の家族は優しい人ばかりですから、シナリオ通りに進む訳にはいかないのです」
「わかります。しかもエリカ嬢は逆ハーエンドを目指しています。恐らく隠れ攻略キャラのサリエルお兄様を狙っているのでしょう。正直、私はエリカ嬢を義姉を呼びたくありません。母もエリカ嬢をフローライト家に迎えることはないと仰っていました。最も、エリカ嬢は攻略対象たちの対応が社交辞令と気づいていません。むしろ好感度が上がっていると勘違いしています」
「それは・・・なんというか・・・残念な思考回路ですね」
「残念というか・・・あそこまでいくともう『電波娘』です。本当にナニを受信しているのか・・・乙ゲー世界に似ていますが、これは私たちが生きる現実世界です。強制力も働いていませんし・・・学園内では出来るだけエリカ嬢を監視しておきますから、リリウム様はできるだけジェリク様と行動を共にしてくださいね。あと、教室移動の授業などでは必ず誰かと一緒に行動して決して一人にならないで下さい」
「わかりました。ですがマリア様は大丈夫なのですか?エリカ嬢に目を付けられてしまっているのでは?」
「大丈夫です。私とリリウム様が別々に誰かと行動を共にしていればエリカ嬢も早々手を出せないでしょうから」
こうして私はリリウム様が転生者だという事を確認しました。
ラジェル様との事をすっかり忘れてしまっていた事は秘密です。
だって、下手に行動したって噂があらぬ方向に行ってしまいますからね・・・




