夜会前日
長期休暇ってすばらしい!!学生の特権だね!宿題が発生するのは前世の学生時代と変わらないけど・・・
私は今、休暇を満喫中です。リフレッシュです!
一学期中に起こった騒動で精神的なナニかガリガリと削られてしまったからね(笑)
主に、お兄様の不機嫌オーラでヤラレテましたが。ナニカ?
今日は、お兄様と弟のマリエルと一緒に王都散策です。
領地の首都には、地元のモノしか店頭に並んでいませんが、流石は王都。
国中からモノが来ます。店頭には領地では見たこともない品が並んでいます。
ウィンドウショッピングが楽しい!!
気づけば、お兄様とマリエルが疲れた顔をしています。
マリエルはまだ、8歳だから仕方がないですが・・・
騎士科に在籍するお兄様までって・・・情けないですね~
「・・・マリア。そろそろどこかで休憩しないか?」
う~ん・・・もう少し見たいけどマリエルが可哀相だし、仕方がない。休憩にしますか。
本当は、明日に迫った夜会参加からの現実逃避の王都散策です。
行きたくないなぁ・・・でも、ドレスもお飾りの宝飾品も屋敷に届いちゃってるしなぁ・・・
なにより、夜会に社交界デビュー前の娘を連れて参加できるって浮かれている両親のことを考えると・・・
お兄様は、私の気持ちが分かるのか、気遣うような視線をたまに向けてきます。
大丈夫デスヨ?挨拶が終わったら早々にリリウム様の所へ避難しますし、屋敷に帰りたいと両親におねだりしますから(笑)
「そうですわね。マリエルも疲れたでしょう?」
「姉上。僕は大丈夫です」
うぅ~ん。マリエルったら強がっちゃって!!お兄様は苦笑してそんな弟を見ています。
近くにあるカフェに入ります。マリエルもやはり疲れていたようですね。
可愛い弟の様子に気づかないなんて姉失格です。
「マリア。明日の夜会は大丈夫か?本当は参加したくないんじゃないか?」
「お兄様・・・大丈夫ですわ。それに第2王子であるジェリク様直々の招待では、お断りできないではないですか。不敬罪に問われるかもしれませんのよ?」
「それはそうだが・・・夜会では父上と母上から離れるんじゃないぞ。リナライト男爵夫妻も夜会に呼ばれているらしいからな」
えっ!?お兄様・・・それ誰情報?
考えが顔に出ていたのか、お兄様がクスクスと笑いながら教えてくれました。
「イルバイト公爵家の次男マルスからの情報だよ。アラン・イルバイトの兄が同じクラスだと言っただろう?」
あぁ。アラン様のお兄様情報ですか。なるほどなるほど。
イルバイト公爵も夜会に参加しますよね~アラン様の婚約者はジェリク様の妹の第2王女だからアラン様も婚約者のエスコートのため参加しますよね。
それに、伯父様であるエメリア侯爵も参加するでしょうし。
う~ん何も起こらなければ良いのですがねぇ・・・
「兄上。姉上は明日、王宮の夜会に出席するのですよね?」
「そうだよ。マリエルは僕と屋敷で留守番だ。」
「兄上は参加しないのですか?」
「社交界デビュー前の子息令嬢は、両親と共に招待を受けた場合のみ、参加できるんだよ。それも、学園の普通科Aクラスに所属している生徒のみの特権なんだ。あとは、王族の婚約者のみだね。今回の夜会では、マリアと同じクラスにいる、ジェリク様の婚約者のリリウム嬢と第2王女の婚約者のアラン殿が参加だな」
「では、姉上は特別に招待されたということですか?」
「そうだよ。しかもジェリク様直々の招待だ」
「流石僕の姉上です!!」
・・・弟よ。そんなキラキラした純真無垢な瞳で見ないで欲しい。
そしてお兄様・・・笑っていないでマリエルを宥めてください。
リフレッシュするための王都散策だったのに・・・またしても精神的にナニカが削られていく・・・
なんだか疲れちゃったなぁ・・・もう屋敷に帰ろうかな・・・お部屋に引きこもって良いよね?
屋敷に戻ってから、自室に引きこもりましたとも!
そうしないと、明日の夜会乗り越えられそうにないんだもの(泣)
マリアが、王都散策でリフレッシュしているのかしていないのか分からなくなってきている頃、サフィール侯爵家ではリリウムが塞ぎこんでいるのを家族全員で心配している状況が続いていた。
学園が長期休暇に入る数日前からリリウムは塞ぎこんでいて、婚約者のジェリクがサフィール侯爵家に訪ねてきても、リリウムの対応は上の空だった。
「リリウム。大丈夫かい?ここ数日、心ここにあらずといった感じだが・・・調子が良くないのなら、明日の王宮での夜会は欠席するかい?」
「・・・お父様。いいえ。私は大丈夫ですわ。それに急に欠席するなんてジェリク様に失礼ですもの」
「大丈夫なら良いんだが・・・無理はするんじゃないよ?お母様も兄妹たちもみんな心配している」
今世の家族も本当に優しい人たち・・・乙ゲーのシナリオとは違ってきているんだから・・・ヒロインであるエリカを虐めなければ良い。大丈夫・・・私だって前世であのゲームをプレイしていたんだから。
今は、リリウム・サフィールとして生きている現実なんだから・・・
リリウムが気持ちを切り替えて、無理に作った笑顔でない事を感じた家族はホッと安堵の溜息をついた。
サフィール侯爵夫妻は、翌日の王宮での夜会を心待ちにしていた。
愛娘のリリウムを冤罪から守ってくれた令嬢が参加するからである。
ジェリク王子から、国王と王妃の許可を得て、王宮の夜会にマリア・フローライトを両親と共に招待したと聞いたときにふと考えた。
跡継ぎである息子の婚約者になってくれないかな?と。
フローライト辺境伯家なら、家格もほぼ同じ。マリア嬢には婚約者がいない事も報告にあった。
辺境伯がOKするかは甚だ疑問だが・・・
夜会で挨拶した時に、それとなく打診してみるか・・・幸い、息子は社交界にデビューしているしな。
侯爵がそんな事を企てていることを知らないリリウムとマリアは、そんな夜会前日を過ごしていた。




