悪役令嬢に転生って・・・
今回はリリウム様視点です
私はリリウム・サフィール。サフィール侯爵家の長女です。
アダマンティ王国第2王子ジェリク様の婚約者でもあります。
突然ですが、私には前世の記憶がございます。
前世の記憶が蘇ったのは、ジェリク様との婚約が決まった時でした。
前世でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと分かった時には、3日間泣き続けて今世の両親やお兄様や妹たちに酷く心配をかけてしまいました。
だってそうでしょう?このままでは、私は婚約破棄された上に実家は没落。私は良くて国外追放エンド。悪ければ死亡エンドを迎えるのですから。
優しい今世の家族を不幸にしないためにも、ヒロインを虐めることだけは決してしません。
前世で大学生だった私は、友人との待ち合わせ場所であるカフェに向かう途中、信号待ちをしているときに居眠り運転のトラックが突っ込んできた。
そのトラックに跳ねられて私は20歳で人生の幕を閉じることになってしまった。
翌年の成人式のときに着る振袖が届いたばかりだったのに・・・
前世の両親に出来なかった親孝行を、今世の両親にしたいと思った。
それからは、家族が心配するほどにお妃教育を頑張った。婚約破棄されたら意味がないけど・・・
ジェリク様は私の頑張りを褒めてくれるし認めてくれてる。仲も悪くない。
5年後にジェリク様と共に学園に入学した。
ここで、おかしな事に気づいた。
ヒロインが同じクラスにいない。しかも、新入生の普通科代表がジェリク様ではなく私。
在校生の騎士科代表にサリエル・フローライトが登場した。
壇上でヒロインを探すと・・・いた。凄い目つきで私を睨んでいる。
あまりお近づきにならないようにしようと思った。
ヒロインは同じクラスの攻略対象たちと交流しているようだが、攻略対象たちの態度は明らかに社交辞令。
軽くあしらっているようにしか見えないけれど、本人は気づいていない。
クラス交流会では、Eクラスの彼女が一人で紛れ込んでいて驚いた。
そうだったそうだった。ヒロインのデフォルトの名前はエリカ・リナライトだったわ。
エリカは先生にドナドナされていった。ちょっと笑いそうになったけど、何とか堪えた。
事件が起こったのは、生徒交流会の時だった。
ジェリク様たちと話していると、グラスを持っている方の腕に衝撃が。
グラスから飲み物が零れて、エリカのドレスにかかってしまった。
エリカは私がわざと飲み物をかけたと言い始めて謝罪を要求してきた。
隣にいるジェリク様や他の攻略対象たちの冷ややかな視線がエリカに向けられているが、本人は全く気づいていない。
なんて残念な子なんだろう・・・そして空気読めなさ過ぎじゃない?
気づくと、先生がエリカを連行していくところだった。
次に騒動が起こったのは、教室移動の授業があった日だった。
クラスへ戻る途中、Eクラスでエリカが泣いていた。
私がエリカの教科書や制服を破いたと訴えている。
同じクラスのクラスメイトたちは訝しげにエリカを見ている。
それはそうでしょう。私は今まで授業を最前列で受けていて、その教室からは一歩も出ていなかったのですから。
先生方がEクラスへ入っていき、エリカが着替えるために先生に連れられて行った。
その時、同じAクラスのマリア・フローライトが先生に話しかけているのを見た。
どうやら、忘れたお道具をクラスへ取りに行ったときに現場を目撃したらしい。
私は冤罪がかけられそうになった所をマリアに助けてもらった。
その事をジェリク様やお父様に話した。
お礼をしなければならないですからね。私からもお礼をしますが、やはりお父様からもお礼をして頂いた方がよろしいでしょう。
話しを聞いたお父様は、早速フローライト辺境伯へ、感謝の手紙を送ってくれました。
ジェリク様に到っては、王宮での夜会にマリアをご両親と共に招待したそうです。
マリアには夜会の時に、直接お礼を伝えましょう。
休み明けにエリカがAクラスへ乱入して、マリアを攻め立てています。
ちょっと待って・・・『シナリオ』?『モブ』?エリカも転生者って事?
私は無意識に日本語で呟いてしまった。マリアに聞かれているとも知らずに。
『やっぱりここ乙ゲーの世界なんだ・・・ヒロインも転生者っぽいし・・・どうしよう・・・』
次に起こった騒動は、エリカの自宅謹慎明けでした。マリアの机に花が置かれていました。
ずいぶんと幼稚ですね・・・置いた人物を誰も目撃していない事から、恐らく生徒たちが登校する前に置かれたのでしょう。
生徒たちが帰った後に先生方が見回りをしますからね。
気づけば、クラスの後ろの入り口でイヤな笑顔を浮かべたエリカがいました。
・・・犯人はエリカですね。嫌がらせのターゲットをマリアに変更したのでしょうか?
最も、当事者であるマリアは平然としていました。エリカは悔しそうにしていますね。
高位貴族の令嬢に嫌がらせをする下位貴族の令嬢・・・
このクラスには、宰相のご子息であるジョージ・サルファー様がいます。
ジョージ様の婚約者はマリアの母君のご実家であるエメリア侯爵家のご令嬢です。
つまり、マリアの従妹が婚約者なのです。前回の事もありますし・・・
宰相閣下とエメリア侯爵様が動きそうですね・・・大事にならなければ良いのですが・・・




