衝撃の事実
エリカ嬢が襲来した日の帰路ではまたしてもお兄様が黙ったままです。
前回ほど怖くはないですが、気まずいことこの上ない!!
「・・・あの・・・お兄様?どうかされましたか?」
「ん?あぁ・・・ごめんちょっと考え事してたんだよ」
それだけ言ってまた黙り込んでしまいました。
本当に何なんだ?リリウム様の事も気になるし、夜会は憂鬱だし、最近ついてなさ過ぎないか?私・・・
ちょっと凹んできたところで、屋敷が見えてきました。
よかった~やっと開放される~
屋敷に到着すると、これから一旦領地に帰るお父様が待ち受けていました。
私とお兄様に気づくと突進してきました!!
ぐふっ!?何事!?
気づくと私はお父様に抱きしめられていました。
「お帰りマリア!!大丈夫だったかい!?」
え?何が?
状況がわからずワタワタしてしまいます。
見かねたお兄様が助け舟を出してくれました。ちょっと呆れたような視線は気のせいですよね!?
「父上?一体何事ですか?マリアがびっくりしていますよ?」
お兄様に声をかけられてようやく我を取り戻したようです。
そうですよお父様!一体何事ですか?・・・そしてお母様。笑っていないでお父様を止めてくれても良いのに!!
「あぁ。ゴメンゴメン。さっき学園から連絡があってね。マリアが変な令嬢に絡まれていたと」
あ・・・あぁ~エリカ嬢襲来のことかぁ~先生行動がめっちゃ早いね!アノ騒動のときもそうだったし。
ちょっと現実逃避気味になっても仕方がないよね?私悪くないよね?
「お父様。その事でしたらご心配には及びませんわ。先生方もすぐに駆けつけてくれましたし、お兄様もクラスへ駆けつけてくれましたもの」
心配をかけさせまいと、にっこりと笑顔でお父様へ告げますが、何でそんな目で見るのです!?
私は嘘は言ってないですよ!?
「本当に大丈夫かい?無理してないか?」
「本当に大丈夫です!なぜそんなに疑うのですか?お父様は私のことを信じて下さらないのですか?」
必殺涙目上目遣い攻撃(笑)を繰り出します。
効果は覿面です!フフフ今度はお父様が焦ってしまってますよ~
ここで一気に畳み掛けなくては!!
「お父様。本当に大丈夫です。学園の先生方やお兄様、クラスメイトたちもいますし。それに、サフィール侯爵家のリリウム様も私の事を気にかけてくださってますから」
「・・・・・・マリアがそう言うなら・・・サリエル。私はこれから一旦領地に帰らなくてはならない。しばらくの間、屋敷のことを頼むぞ」
「はい。お任せください父上」
お兄様の返事を聞いて、お父様はようやく安心したのか、領地へと帰っていきました。
次にお父様がこの屋敷に帰ってくるのは夜会前です。
自室で着替えた後、今度はお母様に居間へ呼び出されました。
えぇ~今度はナニ~?ゆっくりしたいんだけどなぁ・・・
私は数日前と同じような重い足取りで居間へと向かいます。
うわぁ・・・お父様以外の家族が全員揃って待ち構えているよ~なんなのよ~(泣)
「お母様お待たせして申し訳ありません」
「いいのよ~それより座ってちょうだい。マリアに今日のことを聞きたいのよ。もちろんサリエルからも」
「・・・はい。失礼します」
お母様の前のソファに腰掛けます。お兄様は私の隣に座りました。
「さてと。マリア?今日、学園で一体ナニがあったのかしら?」
うぅ~お母様・・・笑顔なのに目が笑ってないですよ?
お兄様はきっとお母様に似たのですね!怖い笑顔がそっくりです(泣)
「えっと・・・私にもよく分からないのです。自宅謹慎中だった女生徒がクラスに乱入してきて、急にわけの分からない事で私を攻め始めましたので・・・」
「サリエル。そうなの?」
「僕が駆けつけた時には、既に先生方が問題の生徒を注意していましたので・・・」
「そう・・・で?その女生徒の名前は?」
「「・・・・・・」」
あまりの怖さに私もお兄様も本能的に名前を言ってはいけないと感じました。
「マリア?サリエル?その女生徒の名前は?」
うぅ~どうしよう・・・お兄様に『言っても良いのか?』と目で訴えかけます。
お兄様は溜息を一つつくと、エリカ嬢の名前をお母様へ伝えました。
「エリカ・リナライト嬢です。母上」
「エリカ・リナライト?リナライト男爵家のご令嬢ね。リナライト男爵が一年前に庶子の女児を引き取ったと社交界で噂になってたわね・・・サリエル。問題のある子なのかしら?」
「・・・それは僕から見て。ということですか?」
「そうね。サリエルから見てどう?マリアやフローライト家に影響を及ぼしそうな子なのかしら?」
「・・・問題の種類によりますが・・・入学式の日から敵意に満ちた目でマリアを見ていましたね。クラス交流会のときもEクラスのエリカ嬢が授業をサボって紛れ込んでいたそうですし・・・生徒交流会では、リリウム・サフィール嬢を貶めようとしていました」
「・・・エリカ嬢はEクラスなのに、Aクラスの、しかも自家よりも高位の貴族令嬢にそんなことをしているの?」
「はい。それと、父上に送った手紙にも書きましたが、自分の教科書や制服を破いてリリウム様にされたと嘘を言っています。その嘘はマリアが偶然現場を見ていたため大事にはならなかったようですが」
・・・ちょっと待ってお兄様。生徒交流会とアノ騒動について知っているのは分かるけど、何でクラス交流会のことまで知ってるの!?お兄様の情報網ってどうなってるの!?
「あの・・・お兄様?お兄様は何故クラス交流会でのことを知っていらっしゃるのですか?」
「ん?・・・あぁそっか。クラス交流会でパートナーを務めてもらったライアン・ボーナイトが教えてくれたよ。それに、アラン・イルバイトの兄が僕と同じクラスなんだよ。クラス交流会の次の日に教えてくれたよ」
あぁ~情報の出所はライアン様とアラン様のお兄様ですか・・・そうですかそうですか・・・
ん?って事は、アラン様⇒アラン様のお兄様⇒お兄様って流れで、私のクラスでの行動が伝わるって事?
い~や~!!恥ずかしい!!恥ずかしすぎる!!
羞恥で身悶えていると、お母様が氷のような冷たい声で爆弾発言をしました。
「Eクラスで問題ばかり起こす令嬢をサリエルの嫁にって・・・リナライト男爵は一体ナニを考えているのかしらね」
は?はぁぁ!?エリカ嬢をお兄様の嫁に!?ないないないない!!絶対にイヤだわ!!
お兄様を見ると、めっちゃ不機嫌オーラを出してる!!怖い!怖いよ!!お母様助けて~(涙)
「マリア安心しなさい。そんな問題のある子をフローライト家に迎えることは絶対にありません。サリエルがその子と結婚したいと言うなら話しは別ですが?」
「母上。冗談も程々にしていただきたい。僕はエリカ嬢を花嫁に迎える気など微塵もないです」
良かった・・・エリカ嬢をお義姉様なんて呼びたくないし・・・
私が安心したのを感じとったお母様とお兄様はクスクスと笑ってます。
あれ?私、からかわれたの?ソウナノ!?
お母様はリナライト男爵夫人に私に対するエリカ嬢の行動について抗議すると言ってくれました。
ついでに、お兄様に対する縁談申し込みもお断りしてくれるそうです。




