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門前の騒動と吸血種の少女

勝間達がシームやエレイナと模擬戦に行った、その数時間後


「ふう・・・、終わった終わった!」


夕焼け色に染まった街で、慎吾は伸びをしながらそう言った。

ちょうど、バラディスに宝玉を渡してギルドから出てきたところだ。


「今日はもう予定ねぇし、帰って寝るか・・・」

「ショウマ達の模擬戦は、見に行かないの?」


欠伸をしながら言う慎吾に、シルヴィが尋ねた。

それに、慎吾は首を振る。


「エリーもついてるし、大丈夫だろ。何かあったら、連絡して来るだろうしな」

「シンゴも疲れてるでしょうし、休むのも良いかも知れませんね」


慎吾の言葉に、ディーネも頷く。

シルヴィの力で作っている宝玉だが、別に慎吾の負担がないというわけではない。

世界そものもと言っても良い精霊の力を、一部とは言え精霊使いではない人間の使えるようにするのだ。

暴走しないように調整するのに、かなり集中する必要があるのである。

疲れた様子でティルキアの屋敷へと足を向ける慎吾だが、その途中で腹が大きな音を立てた。


「・・・その前に、出店で何か食って行くか」

「相変わらず、食い意地が張っているのな・・・。っと、ありゃ何だ?」


腹に手をやる慎吾に苦笑するノールだが、ふと別の場所に目を向けるた。

それに釣られて、慎吾達も同じ方向へ目を向ける。


「じゃから、この子の治療をしてくれるだけで良いんだ!」

「とは言ってもな、じいさん。こっちだって、仕事なんだ。身分証もギルドカードも持ってない奴を、街に入れるわけにはいかないんだよ」


街の門の前で、少女を抱えた老人と警備兵が言い合いをしていた。

少女を見た慎吾は、思わず目を見開く。

目線をシルヴィに向けると、シルヴィは珍しく固い表情で頷いた。


「はぁ、出店はまた今度かな・・・」


シルヴィの返事にため息をつくと、慎吾は老人達の元へと向かう。


「ちょっと、良いですか?」

「ん?」


背後から話しかけた慎吾に、警備兵は訝しげに眉を寄せた。

その警備兵に対して、慎吾はギルドカードを見せる。


「ギルドランク6の、シンゴ・ツルギです。ちょっと、話をさせてくれませんか?」

「ランク6!?は、はい、もちろんです!」


慎吾の名乗りと提示されたギルドカードを確認して、警備兵は慌てて場所を譲った。

高いギルドランクには、それに見合った権力が付随する。

ギルドランク6では、およそ下級貴族と同じ程度の権力だ。

街の警備兵程度には、拒否しようとすら思えないだろう。

ちなみに、この場合の権力とは調査権と低度の命令権だ。

戦闘への協力を求めることはできるが、無茶な命令をすることはできない。


「じいさん、一つ取引だ。俺の監視付きだが、その子の治療を受けさせてやる。ただし、その子と会った時の状況を話してくれ」


慎吾は老人の目の前にしゃがみ、ニヤリと笑った。

それに対して、老人は警戒を強くする。


「おぬし、この子の事を知って・・・」

「その子の事は、知らないよ。ただ、似たような奴を知ってる」


少し固い表情の老人に、慎吾は肩をすくめながら返した。

老人の様子を見るに、少女は相当危ない目に会っていたのだろう。


「もちろん、他人に漏らすこともしない。ただ、冒険者ギルドのギルドマスターには同席してもらうが」


なおも警戒する老人に、慎吾はそう言った。

口約束とは言っても、ギルドランクを見せたうえでの約束だ。

破った場合は、ギルドからの罰がある。

老人は少しの間考えていたが、やがて決心したように慎吾に頷いた。


「分かった、応じよう」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


門の前の騒動から数分後ーー


少女を冒険者ギルドに連れていった慎吾達は、そのままギルドマスターの執務室でバラディスを待っていた。

しばらくして、執務室の扉を開けてバラディスが入ってくる。


「シンゴ、治療は終わったぞ。今のところ、容態は安定してる」

「サンキュー、バラディスのおっさん」


バラディスの報告に、慎吾は礼を言った。

少女の容態は意外と悪かったらしく、バラディスも治療に加わっていたのだ。

ディーネの力を使えば慎吾も治癒ができるのだが、訳あって今回は使えない。


「まったく、お前も次から次へと問題を持ち込むな・・・。今度は一体、何が起こってる?」

「それを、今から聞こうとしてるんだ」


少し疲れたように睨みつけて来るバラディスに、慎吾は老人の方へと目線を向けた。


「じいさん、話をしてくれるか?」


慎吾の確認に、老人は頷く。


「分かった、と言いたいところだが・・・。正直なところ、わしにも詳しい事は分からん」

「それは、分かってる。あの子の種族も、分かってないみたいだしな」


老人の言葉に、慎吾は小さくこぼす。

それに、慎吾意外の2人が目を見開いた。


「種族?純人種(ヒューマニア)じゃないのか?」

「あれ、バラディスのおっさんも気付かないのか?」


バラディスの言葉に、慎吾が首を傾げる。

少女を治療したのだから、分かっていると思っていたのだ。

気を取り直して、慎吾は口を開く。


「あの子、吸血種(ヴァヌピス)だぞ?」

「なっ・・・」


慎吾の言葉に、バラディスは飛び上がらんばかりに驚いた。

『吸血種』とは、『魔族種マギラル』の中の1種族だ。

高い魔法への適性と隠密能力を持つ代わりに、他者から定期的に血を吸わなければ生きられない定めを持った種族。

強い吸血種は、単独で街を破壊できるとまで言われている。

ちなみに、慎吾が少女を治療できなかったのもこれが原因だ。

ディーネの治癒魔法は水の属性を持っているため、吸血種には効きにくいのである。


「色素の抜けた白い肌と、紅の瞳。それに、特殊な魔力を感じた。間違いなく、あの子は吸血種だ」


疑いの目を向けて来る2人に、慎吾は断言した。

なぜ慎吾が吸血種の事を知っているかというと、シュミール神のところで教わったからだ。

シュミール神から加護を受けた後、塔の機能を使って確認を行ったのである。

塔の機能で種族の魔力まで模倣しなければ、慎吾も断言はできなかっただろう。


「まあ、見た感じ吸血衝動はなさそうだがな。一応特性封印を施したから、問題はないはずだ」

「なるほどな・・・」


慎吾の言葉に、バラディスは安心したように力を抜いた。

今のギルドには、職員を含めてかなりの人が居る。

そんな所で少女の吸血衝動が発動したら、手がつけられなくなっただろう。

ちなみに、慎吾の施した特性封印はノールの力を使った物だ。

筋力などの特性を残したまま、吸血衝動だけをピンポイントで封印している。

全ての特性を封印しなかったのは、少女が自分の身を守れるようにだ。


「俺が知る限り、吸血種は純人種との接触を極力避けている。じいさん、あの子とどこで会った?」


真剣な表情で、慎吾は老人に目線を向ける。

それに釣られるように、バラディスも老人の方を見た。

2人の目線に晒され、老人は小さくため息をつきながら口を開く。


「分かった、全て話そう・・・」

前話のオチは、こういうことでした。

シーム関係だと思った方、残念!

ところで、そろそろ登場人物がかなりの数になってきましたね…

話し方とか、区別がつかなくなってきてます。

それはともかく、そろそろ勇者たちも出番をあげたいですね。

では、また次話

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