閑話 異世界の魔法と精霊
「そういえば、魔法ってそもそも何なんだ?」
慎吾達の活躍でどうにか乗り切った『ビランツァ防衛戦』より2日後、勝間が突然そんな事を口にした。
ちなみに勝間と美香の2人は召喚された次の日から魔法を使用できるように特訓しているのだが、実際のところ成果はそれほど芳しくない。
勝間のこの質問も、その辺りが理由だろう。
勝間の言葉に、慎吾は少し考えるようにして口を開いた。
「そうだな・・・。そもそも、リーンヘイムとこのニールヘイムの世界では魔法というモノの根本にある法則っていうのは同じだ」
この場合の魔法の法則とは、人間にどういった形で伝えられているかということではない。
いわば世界と魔法との関係性のようなもので、リーンヘイムからやってきた慎吾達がそのまま魔法を使えるのもそれが理由だ。
もしもこの法則が異なる世界に飛ばされていたら、慎吾もエレイナも魔法は使えなかっただろう。
「で、これはリーンヘイムで一般的な魔法の定義なんだが・・・。魔法というのは、魔力というエネルギーを用いて世界に働きかけるということだ」
「世界に働きかける?」
大雑把な説明をする慎吾に、近くにいた美香が首を傾げる。
美香と一緒にティルも来ているが、説明を慎吾に任せる気のようだ。
慎吾はため息を1つついて、説明を再開した。
「世界には、火水風土からなる四種類の魔力素と呼ばれるものが無数に存在する。魔法使いはそれを自身の魔力でかき集めて、魔法という形に整えて放出するんだ」
「ニールヘイムでは世界は特殊な魔力に満ちていると言われていますが、大まかにはシンゴさんの言っているのと同じですね」
慎吾の説明に、ティルが頷きながら補足する。
「魔法使いが使用する魔方陣や呪文っていうのは、魔法という物を作るための設計図だと思えば良い」
「って事は、魔法使いが魔方陣という設計図を元に魔法を作る。世界に満ちる魔力っていうのはその材料で、魔法使いの魔力はそのためのエネルギーって訳か」
現代の日本風に言い換えた慎吾に、勝間も頷いた。
ちなみに、ティルが慎吾に説明を任せたのはこれが狙いだ。
異なる世界の言葉で説明するより、慣れ親しんだ地球にあるもので説明をした方が飲み込みが早いと考えたのである。
何かを掴んだ勝間に対して、美香はまだ少し悩んでいた。
「って事は、世界に満ちる魔力とか魔力素っていうのは物質?」
少しの時間考えた末、そう言って首を傾げる。
美香のその言葉に、慎吾は少し苦笑いした。
「美香、地球の考えに引っ張られると混乱するだけだぞ?まあ、俺的には魔力に反応して効果を示す半物質的な物だと考えてるが」
慎吾の言葉に、美香は『なんか混乱してきた・・・』といって頭を抱える。
このあたりは、比較的大雑把な性格の勝間と理論が先に立つ美香との違いだろう。
なまじ地球の知識があるため、地球には無い魔力という要素が引っ掛かるのだ。
「じゃあ、鶴城君が魔力を使った時に周りが光るのは?」
「無秩序に発せられた魔力が、周りの魔力に反応しているからだな」
こめかみを押さえたままの美香の質問に、慎吾が答えた。
魔方陣や呪文といった補助の魔法使いの魔力は、周りの魔力を属性に関係なく反応させる。
その場合発生するのは、光か闇のどちらかだ。
慎吾の周りが光って見えるのは魔力によって光が発生しているためであり、その辺りをよく見れば所々に向こう側の見通せない闇の発生している部分があるのが分かるだろう。
「なんか、分かったような分からないような・・・」
「こう言うもんだって、納得するしかないだろ」
ウンウン唸っている美香に、慎吾は肩をすくめながらそう言う。
もっとも、慎吾の場合は生き残るために納得せざるを得なかったというのもあるのだが。
慎吾の言葉に、美香は『頑張ります・・・』といって机に突っ伏した。
ダウン気味の美香の横で、勝間が突然首を傾げた。
「あれ?じゃあ、シルヴィやヴルって何なの?」
そういう勝間が見ているのは、いつの間にやら姿を現したシルヴィとヴルだ。
「精霊は、魔力がなんらかの要因で意思を持った物だって言われてる」
「いわば、世界を構成する力そのものだ。その筆頭が、リーンヘイムで言う精霊神だな」
慎吾の説明に、エレイナが補足する。
リーンヘイムでは精霊と似たようなものに妖精がいるが、精霊と妖精は全くの別物だ。
特に違うのが、その存在の依り代である。
妖精が道具や家などといった『物』を依り代にするのに対し、精霊は自然を構成する『環境』を依り代にするのだ。
妖精はいわば、現代日本における付喪神のようなものと言える。
精霊使いが少ないのも、これが原因だ。
依り代とする存在の規模が大きすぎるため、適性がなければ契約者がそれに耐えきれない。
慎吾のように複数の精霊と契約しているのは、非常にまれだったりする。
「ニールヘイムにいる神々は、精霊が更に昇華したものと言われています」
「って事は、シルヴィ達とこの世界の神様は同じものってことか?もしかして、俺達ってすごい罰当たりなことしてるんじゃ・・・」
更に続けたティルの補足に、勝間が少し引いたように返す。
それに慌てたのは、シルヴィとヴルだ。
特にシルヴィは、体の前で両手をせわしなく振る。
「いやいや、ちょっと待って!こっちの神と一緒って言っても、元になっている力が同じってだけだから!別に、私達が神って訳じゃないよ!」
大慌てのシルヴィに、勝間は確認するようにヴルに目線を向けた。
勝間の目線に、ヴルは頷きながら口を開いた。
「同じ木を原料にしていても、木紙と建物の柱は全く違う物だろ?それと、似たようなもんだ。もっとも、こっちの神と似たような事ならできるかもしれないがな」
ヴルの説明に、勝間が安心したような顔になる。
「説明、続けるぞ?つっても、後は精霊使いの話だけだが・・・」
勝間の様子に苦笑しながら、慎吾はそう言った。
「精霊使いっていうのは、その名の通り精霊の力を借りて魔法を使う。もちろん普通の魔法も使えるが、そっちの方はあまり威力がない」
「シンゴのように普通の魔法で複数の魔物を倒せるものは、ほんの一握りだ」
慎吾の説明に、エレイナが補足する。
慎吾が魔物を複数倒すことができるのは、体内の魔力の量が非常に多いのと地球の知識を元に魔法を改良しているからだ。
リーンヘイムにいる普通の精霊使いの使う普通の魔法では、慎吾の10分の1程度の威力しか出せないだろう。
「精霊の力を借りて使う魔法のことを、精霊魔法って言うんだが・・・。普通の魔法と精霊魔法では、決定的に違う事が1つある。それが、魔法を使用するときに使う魔力の量だ」
エレイナの言葉に照れるように、慎吾は説明を続ける。
「精霊魔法は普通の魔法に比べて、圧倒的に魔力の使用効率が良い。俺の場合は、だいたい5~10倍くらいになる」
首を傾げる勝間達に、慎吾は『俺がこの町を吹き飛ばすくらいの爆発を起こすのと、普通の魔法使いが火を起こすのが一緒くらいだ』と付け足した。
ちなみに、精霊拳帝状態になると更に効率が上がる。
これは、精霊が契約者の魔力を周りの魔力になじむように変換しているからだ。
地球でいえば、家電と電力の関係に近い。
「だいたい、分かったか?」
「まあ、なんとなくはって感じかな。自分でどこが引っ掛かったのかも良く分かったし、これなら俺も魔法を使えるかも」
慎吾の確認に、勝間は少し笑いながらそう返した。
それから2日後には勝間が、更に次の日に美香も魔法の使用に成功する。
理屈が分かると、習得まではとても早かった。
その時に2人してそれまでの日々は何だったのかと言っていたが、それはまた別の話。
ちょっと、短めです。
慎吾達がビランツァを旅立つまでの話は、これで終わりですね。
次はリーンヘイムの話が二回ほど続いて、ニールヘイムの話に戻ります。
あとこれはあまり関係ない話なんですが、実は本作のタイトルを変えようと少し考え中です。
というのも、知り合いから『このタイトル、遊○王のカードの名前だよね?』と言われまして・・・
個人的には内容を反映したらこうなったんですが、他人から指摘受けるくらいだとやっぱりやばいですよね?
というわけで、いつかタイトル変更します。
『こんなの良いよ!』というのがありましたら、連絡お願いします。




