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慎吾の違和感と精霊拳帝の本質

魔迷宮ニリバルト未開拓層内、修練用空間にて

レプニーチェへの魔物襲撃から一週間が経ち、慎吾はシュミール神に案内されたこの空間で魔物との戦闘を続けていた。

「ハッ!」

慎吾が短い気合いと共に突きを放つと、相手のミノタウロスが振るう大槌と正面からぶつかる。

鈍い音をたてて、大槌が砕けた。

破片を避けて丸太のような腕を駆け上がり、首裏に蹴りを一発。

当たった場所から冷気が走り、慎吾の倍はあろうかという巨体が一瞬の内に凍りつく。

ミノタウロスの肩から下りた慎吾に放たれる閃光を、空中に作り出した水球で反射。

幾条かが先ほどのミノタウロスの氷像を砕くのを視界の端に納めながら、慎吾が地面に手を置いた。

地面から突き出した岩の槍が、花弁を付けた植物型モンスターを真下から串刺しにする。

「ふぅ・・・」

周りの魔物に動くものが居ないのを確認して、慎吾は構えを解いた。

しばらくそのままで居ると、拍手の音と共にシュミール神とエレイナ達4人がやって来た。

「いやぁ、圧倒的だね。やろうと思えば、この塔の攻略できるんじゃない?」

「できたとしても、やるつもりはありませんよ」

ニヤニヤと笑いながら言うシュミール神に、慎吾は肩をすくめながら返す。

慎吾がここに来るようになってから、何度と無く繰り返されたやり取りだ。

「それにしても・・・」

慎吾の体中をなめるように見回して、シュミール神が苦笑した。

「300層クラス相手に、無傷で勝つとは思わなかったよ。流石は、最高位精霊の契約者ってところかな?」

慎吾達が来てすぐの時には何も無かった空間には、今では魔物の死骸が小さな山を作っている。

その魔物すべてを慎吾が倒した訳ではないが、9割は慎吾の戦果だ。

「そうでしょうか・・・」

しかし、それをやった慎吾本人は煮え切らないような表情をしていた。

「不満でもあるのかい?」

慎吾の表情を見て、シュミール神が首を傾げる。

シュミール神の質問に、慎吾もどう答えれば良いのか少し困っている様子だ。

「さっきの戦闘を見て、どう思いました?」

悩んだ挙げ句、そう質問する。

慎吾の質問に、シュミール神は少し考えるように口を開いた。

「どうって言われると、困るけど・・・。振り回されてる、かな?」

「振り回されてる?慎吾が?」

シュミール神の言葉に、エレイナが意外そうな顔をする。

「いや、ちょっと違うか。何というか、内在する魔力を攻撃に活用できてないって言えばわかるかな?」

感じた事をどう表現すれば良いのか分からず、シュミール神の言葉も少しあやふやだ。

しかし、慎吾はシュミール神のその言葉に頷いた。

「やっぱり、そうですか・・・」

「気づいてたんだ?」

シュミール神が、意外そうに慎吾を見る。

魔力が活用きちんと活用されているかどうかの感覚は分かりにくいため、慎吾が感じ取れているとは思わなかったのだ。

「魔力うんぬんは、分かりませんでしたけどね。でも、今より上があるのは分かってましたから」

シュミール神の反応に、慎吾が慌てて補足する。

「今の状態より、まだ上があるのか?」

その言葉に、今度はエレイナが意外そうな顔をした。

「あれ、エリー達には言ってなかったか?じゃあ、ちょっと話すか」

エレイナの反応に慎吾は首を傾げ、そう言ってこの空間から出るように提案する。

長くなる話なので、落ち着いたところでやろうと思ったのだ。


慎吾が戦闘を行っていた空間から宿の部屋へと戻ったところで、慎吾は話を始めた。

ちなみに、シュミール神も姿を隠した状態で部屋へと入っている。

「そもそも、精霊拳帝としての力ってのはシルヴィ達の力を100パーセント引き出す事だ」

どこから話そうかと考え、結局大元の部分から話す慎吾。

扱う力は違っても、そこだけはリーンヘイムでもニールヘイムでも変わらない。

「そりゃ、そうだな。だが、『フィジカルエンチャウント』というのがそれではないのか?」

「いや、違う」

頷きながら聞いてくるエレイナに、慎吾は首を振って断言する。

「『フィジカルエンチャウント』はあくまで、精霊の力を纏っているだけだ。そもそも、精霊の力を使った戦闘は拳を使った物じゃないからな」

慎吾はそう説明するが、いまいち伝わらないようだ。

精霊使いの力というのは、普通の魔法使いが扱う魔力とは扱い方が違う。

普通の魔力が纏うだけで『魔力強化』と呼ばれる技になるのに比べ、精霊の力は纏うだけでは本来の効果を発揮しないのだ。

普通の魔力が自分の手足だとすれば、精霊の力は火の付いていない爆弾とでも言うべきか。

慎吾の『フィジカルエンチャウント』は、いわば爆弾を鈍器として使っているようなモノである。

そのような無茶ぶりがまかり通るのも、最高位精霊という規格外の精霊と契約しているがゆえだ。

「契約の元に、契約者と精霊の力を一体にする。それが、本来の精霊使いの戦い方だ」

「確かに、あの状態のシンゴは一体と言うより力を羽織っていると言うべきかも知れんな」

慎吾の説明に、シームが納得したように頷く。

魔力の扱いに長けているシームは、慎吾の戦い方とこれまで出会った他の精霊使いの戦い方にわずかな違いがあったのを思い出したのだ。

「『フィジカルエンチャウント』はディーネとノールを封印した後に、擬似的にその状態を再現するために開発した技術に過ぎない。二人を封印した時点で、俺の魔力も極端に落ち込んだからな」

「落ち込んであれとは、呆れたモノだが・・・。要するに、本当の精霊拳帝の戦い方はあれではないと?」

慎吾の説明に心底呆れたように返すシームに、慎吾は頷いた。

「ディーネ達の封印を解いた今、わざわざ『フィジカルエンチャウント』を使いつづける必要は無い。ということで、ずっと練習してるんだけど・・・」

「うまくいかない、と?」

言いよどむ慎吾に、エレイナが続ける。

「始めは封印期間が長かったから勘が戻ってないんだと思ったけど、どうもそうじゃないっぽい。って訳で、シュミール神なら何か掴めるかなと思ったんだけど・・・」

エレイナに頷きながら続ける慎吾の言葉に、その場に居る全員がシュミール神の方を見た。

慎吾達の視線に、シュミール神は首を横に振る。

「すまないけど、僕も魔力が効率よく使えてないということしか分からないね。そもそも僕は戦いの神ではないから、そういうのはあまり詳しくないんだよ」

「そうですか・・・」

すまなさそうに言うシュミール神に、慎吾は少し落胆したように返した。

その様子を気の毒に思ったのか、シュミール神は少し考えるように続ける。

「でも、予想はつくかな」

「本当ですか?」

少し表情を明るくした慎吾に、シュミール神は頷きながら説明した。

「おそらくだけど、この世界で封印を解いた事が原因だ。一時的に切れていた契約が別の(ことわり)の地で結ばれたため、契約の一部に不具合が起こったんだと思う」

契約とは通常、人と地の縁をもって結ばれる。

この場合の縁とは、魔力的な繋がりと物理的な繋がりの両方だ。

魔力的な繋がりは慎吾がリーンヘイムに住んでいたということでクリアできるが、物理的な繋がりはニールヘイムが別世界である以上クリアすることはできない。

そのため魔力的な繋がりはあるのに物理的な繋がりが無いという中途半端な状況が生まれ、それが不具合の原因になったのだろうとシュミール神は推測している。

「って事は、向こうの世界に戻ったら元に戻る?」

「正確には、向こうの世界と繋がって契約が正常に効果を発揮したらだね」

慎吾の言葉に、シュミール神も頷く。

それを聞いて、慎吾は何が何でも帰らなければと思うのだった。

検証の結果、0時更新に決まりました!(パチパチ)

これからはずっと、0時更新です(できるように努力します!)


ーアトガキー

今回、文字数がいつもより少ないです。

そして、戦闘は超あっさり味です。

レプニーチェは・・・あと2話くらいかな?(これ言い出して、何話目だ?)

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