精霊達との対話と神からの祝福
「シルヴィ達から、だいたいの話は聞かせてもらいました。私達が寝ている間に、ずいぶんと大変な事になっていますね」
「魔王との戦いに世界移動、その上その世界が壊滅の危機か・・・。相変わらず、とんでもない物を引き寄せるな」
エレイナ達との話が終わった慎吾がシルヴィ達の方に近づくと、ディーネとノールがあきれたように言ってきた。
少々子供っぽいシルヴィやヴルに比べて、ディーネとノールはどちらかと言うと落ち着きのある性格だ。
自由気ままでトラブルを引き寄せがちな慎吾に巻き込まれる事が多かったため、この状況に物申さずには居られなかったのだろう。
「魔王との戦いはともかく、他の2つは俺は直接関わったんじゃねえよ。っと、それはともかく・・・」
ふて腐れたような表情で返す慎吾だが、途中でその表情が曇った。
「悪いな、二人とも。平和な世界になってから起こすって約束だったのに、こんなことになっちまって」
「私達の力が、必要になったのでしょう?それなら、責めるつもりはありませんよ」
申し訳なさそうに言う慎吾に、ディーネがニッコリと笑う。
そんなディーネに、慎吾はホッとしたように笑った。
シルヴィ達に保証されていたとは言え、ディーネとノールが許してくれるか不安だったのだ。
「そもそも、約束通りに起こされるとは思ってなかったわい」
「信用ねぇなぁ・・・」
バッサリと切り捨てたノールに、慎吾は苦笑する。
「たった3年で魔王と戦うことになった者が、なに言っとる。わしが契約してから、普通の者なら一体何度死にかけた?」
「う・・・。今思ってみると、良く生きてたな俺・・・」
が、続くノールの言葉には反論できなかった。
エレイナ達と出会う前の慎吾が倒した相手といえば、エレイナ達に話した精霊のほかにドラゴンやジャイアントなんかも居る。
どちらも、国の討伐隊が編成されるレベルの魔物だ。
もちろん普通のゴブリン等も居たのだが、行く先々でなぜかそういう危機に直面するのが慎吾だった。
普通の者なら、なぶり殺しにされるか発狂するかのどちらかだっただろう。
「そ、それはともかくだ。今の俺の仲間を紹介するよ」
「エレイナさんにミーリャさん、そしてシームさんでしたっけ?シンゴさんの契約精霊、ディーネとノールです」
形勢は不利とみて話をそらした慎吾に、ディーネは慎吾の後ろにいる三人を見ながらそう言う。
ノールはしばらく慎吾の方を睨んでいたが、ディーネに突かれると『よろしくの』と頭を下げた。
「精霊神より勇者の称号を授かった、エレイナ・フォン・ティアルだ」
「我の名は、シーム・ヘルゲール。リーンヘイムでは魔王をやっていたが、今はこやつらと行動を共にすることにした」
ディーネの挨拶に、エレイナは恭しくシームはぶっきらぼうに返す。
「ミーリャは、この世界の子だ。両親を探すのを手伝ってる」
「よ、よろしくお願いします・・・」
慎吾の紹介に、ミーリャが緊張気味に頭を下げた。
「よろしくお願いしますね、皆さん。それにしても、リーンヘイムの勇者と魔王がパーティーを組むとは・・・」
「向こうの連中が知ったら、卒倒しそうだの・・・」
得に何も言わないディーネとノールだが、エレイナとシームが一緒に居るのにはさすがに苦笑いを浮かべる。
「リーンヘイムの事を忘れろとは言わんが、今はこやつらの仲間だ。罰を与えると言うなら甘んじて受けるが、事が終わった後で頼みたい」
「魔王と言うのも、所詮は人間達の作った枠組み。それについて、わしらがどうこう言うのは筋違いだろう。今仲間だと言うなら、なにもするつもりはない」
真剣な表情で返すシームに、ノールは肩を竦めた。
過去に実際に負の魔力に囚われかけたノール達だが、それについてシームに何か言おうと思っているわけではない。
そもそも、いつの時代でも精霊が負の魔力に囚われるのは良くあることだ。
人間や魔物が居る以上それは仕方がない事であり、先ほどノールが言ったこともうそ偽りのない本心である。
ノールが言ったことが本心だと理解したのか、シームは『ありがとう』と小さく笑った。
慎吾達がお互いの紹介を終えると、見計らったかのようにシュミール神が慎吾に近づいてきた。
「そろそろ、良いかな?」
「あ、すいません。わざわざ来てもらったのに、話し込んでしまって」
様子を伺って来るシュミール神に、慎吾は頭を下げる。
「いやいや、久しぶりの再開だったんだろう?」
そんな慎吾にシュミール神はなんでもないと手を振り、ディーネとノールの方へと向き合った。
「名乗りが遅れましたね。僕は、シュミール・モル・ニリバルト。一応、この世界の神の一人です」
「はじめまして、シュミール様。私は水の最高位精霊ウンディーネ、隣に居るのが土の最高位精霊グノームです」
丁寧に名乗るシュミール神に、ディーネも頭を下げて応じる。
ちなみに、ウンディーネやグノームといった最高位精霊としての名前は本人達以外が使うことはほとんどない。
リーンヘイムを支える精霊の頂点に立つ者の名前なので、下手に呼んではリーンヘイムの世界にどんな影響が出るか分からないのだ。
契約者である慎吾ですら、よほどの事がない限り呼ぶことを禁じられている程である。
「神ともあろう者が、それほど低姿勢で良いのか?」
「話を聞く限り、そちらの世界でのあなた方の立ち位置はこの世界での私より上でしょう。だとすれば、私もそれ相応の態度を示さなくてはなりません」
ふと疑問を持ったノールの言葉に、シュミール神はなおも敬うように返す。
リーンヘイムの基準でのシュミール神の立場は、シルヴィ達最高位精霊の1つ下の高位精霊と同程度だ。
ニールヘイムにおいて神の上下関係が絶対である以上、シュミール神のこの態度も仕方のないことである。
「とは言え、おぬしがそんな態度ではこの世界の人間達に示しがつかんだろう。この際、どちらの立場も気にしないという事でどうだ?」
「わかりました。では・・・こんな感じで良いかな?」
ノールの言葉に頷いたシュミール神が言葉使いを改めると、ノールは満足げに頷いた。
実際のところ、最高位精霊と言ってもそれほど他者から敬われるのに慣れているわけではないのだ。
他の精霊より高位であるとは言っても、リーンヘイムではそれほど上下関係が厳しい訳ではない。
どちらかと言えば兄弟関係に近いので、他の精霊からも割とフランクに接されていたりしたである。
「っと、忘れる前に言っておかないと。シンゴ君達に、相談があるんだけど」
自分より高位の者に対しての接し方に戸惑っていたシュミール神が、何かを思い出したかのように慎吾達の方を向く。
「相談、ですか?」
「うん、相談。君達に僕の祝福をあげようと思うんだけど、良いかな?」
少し警戒しながら問う慎吾に、シュミール神はニッコリと笑ってそう言った。
シュミール神の言葉に、慎吾達の反応が二つに分かれる。
と言うより、ミーリャとそれ以外とで分かれた。
ミーリャ以外の3人と精霊達は、聞き慣れない祝福と言う言葉に首を傾げるだけだ。
一方、ミーリャはというと・・・
「はうぅぅ・・・」
「お、おい!」
貧血を起こしたかのようにふらつき、倒れかかったところをシームが慌てて支えた。
「ミーリャが倒れかかったって事は、祝福ってのが相当ヤバいモノってことか?」
「いやいや、別にそんなんじゃないよ。単に、僕との繋がりが得られるってだけ」
ミーリャの様子を見て顔を引き攣らせる慎吾に、シュミール神は手を振って返す。
その様子に安心する慎吾だが、ふと引っ掛かりを覚えた。
「あなたとの繋がりって事は、神との繋がりって事ですよね?」
「僕が神なんだから、当然だろう?」
真顔になって問い掛ける慎吾に、シュミール神はなに言ってるんだとでも言うように返す。
「もしかしなくても、結構特別な事なんじゃ・・・」
思わず再び顔を引き攣らせる慎吾に、シュミール神は少し考えてポンと手を打った。
「そういえば、ここ500年くらい誰もあげて無かったっけ」
「そりゃ、倒れもするわな・・・」
忘れてたと笑いながら言うシュミール神に、慎吾はカクリと肩を落とす。
500年といえば、ニールヘイムでは伝説の勇者等が実際に生きていたと伝えられている時代だ。
自分が伝説の存在と同じものをもらうと言われれば、倒れるのも仕方ないだろう。
「ちなみに、拒否権は・・・」
「拒否しても良いけど、その場合祝福に付随する『欠番者』に関する知識なんかもあげられないよ?」
恐る恐る聞く慎吾に、シュミール神は首を傾げながらそう言った。
いわく、神の持つ知識を与えるのに一番手っ取り早い方法がこの祝福というもののようだ。
『欠番者』に関する情報は膨大なため、普通に伝えてはいつまでかかるか分からないらしい。
「事が済んだら祝福の効果は無くなるし、無いと不便でしょ?」
「はぁ・・・。分かりました・・・」
念を押すように言ってくるシュミール神に、慎吾はあきらめたようにため息をついて頷いた。
一日遅れでの投稿です。
ちょっと文の雰囲気を変えてみました。
次話は、前話と今話で一日のアクセス数が多かった方の時間に投稿します。




