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新たな精霊と慎吾の罪

『ここを出る前に、やっておきたいことがある』

前日から続くシュミール神との話し合いが終わりかけ、もうそろそろ解散する流れとなった頃。

突然そう言い出した慎吾に連れられて、エレイナ達3人とシュミール神は議院館地下の一室に連れられてきた。

一辺10メートル程の部屋で、元々は緊急時のシェルターとして使われている部屋らしい。

「ちょっと悪いけど、ここで待っててくれ」

部屋に入ってすぐの所でエレイナ達にそう言って、慎吾は一人部屋の中央へと向かった。

「慎吾の奴、こんな所で何をする気だ?」

「そんなこと、我に聞くな。お前と同じく、いきなりの呼ばれたのだからな。知っているとすれば、後ろにいる引きこもりではないか?」

何やらしゃがみ込んで作業をしている慎吾を見ながら首を傾げるエレイナに、シームが不機嫌そうに言ってシュミール神を睨む。

シーム以外の二人も、シュミール神の方に目線を向けた。

「いやいや、僕だって詳しいことは知らないよ。彼に大きな部屋は無いかって聞かれたから、この部屋を教えただけさ」

集まった視線に、シュミール神は手をふりながらそう答える。

そして慎吾の方へ目線を戻し、『もっとも・・・』と続けた。

「昨日は、ずいぶんと悩んでたみたいだからね。彼にとって、大きな変化があるのは確かだと思うよ?」

シュミール神はそう言って、少し笑いながら慎吾の方へと目線を向ける。

「よしっ」

手を止めて何やら確認をしていた慎吾が、そう小さく言って立ち上がる。

慎吾の足元には、直径1メートル程の魔方陣が書かれていた。

「我、鶴城慎吾がいにしえの契約の元に願う」

魔方陣の隣に立って、慎吾がそう唱える。

直後、慎吾の全身からありえない程の魔力が吹き荒れた。

「なんだ、この魔力・・・」

「凄まじいの・・・。そもそもあの精霊使いが普通に詠唱を行うなど、滅多に無いのでは無いか?」

思わず後ずさったエレイナの言葉に、シームも驚いたような表情で答える。

そもそもの所、慎吾が詠唱を行う事は一部の上位魔法を除いてまず無い。

地球の科学知識と精霊使いとしての膨大な魔力があるため、ほとんどの詠唱を破棄しても十分な威力が得られるのだ。

「精霊神より生まれし者にして、万物を守護する者達よ。今ここにその眠りより目覚め、再び我と共にその力を振るえ」

エレイナ達の驚きをよそに、慎吾の詠唱は続く。

途中で、慎吾が懐から小さな宝石を二つ取り出した。

中に光が点っているように見えるそれは、慎吾の魔力に乗るように魔方陣の中央へと運ばれていく。

「この感覚・・・まさか!」

魔方陣からあふれてくる魔力に心当たりがあったのか、シームの顔が跳ね上がる。

それと同時に、慎吾の詠唱が完成した。

「『封印解除:ウンディーネ、グノーム』」

慎吾がそう唱えて、魔方陣の端に触れる。

すると、中心に浮かんでいた二つの宝石が割れて中から光が溢れた。

その圧倒的な光量に、エレイナ達は思わず手をかざす。

光の爆発はすぐにおさまり、魔方陣の中心には二つの小さな人影が残された。

大きさは、シルヴィやヴルと同じくらい。

一方は青のゆったりとした服を着た妙齢の女性のようで、もう一方は立派な髭を蓄えた男性のようだ。

「久しぶり、で良いのかな?おはよう、ディーネ、ノール」

「そう・・・なりますかね?」

「ワシらにとっては、つい最近のことだったんじゃがの・・・」

少し泣きそうな声の慎吾に、魔方陣の中にいた二人は困ったように答える。

いわずと知れた、リーンヘイムの最高位精霊であるウンディーネとグノームであった。


目覚めたディーネとノールと一緒に話をしているシルヴィとヴルを見ながら、慎吾は後ろから4つの足音が近づいてくるのを感じた。

「精霊拳帝は禁忌を侵した者だという噂は、本当だったか」

「まあ、あの噂が全部本当という訳じゃ無いけどな。精霊封印の禁忌を侵したってのは、本当の事だ」

背後からかかるシームの言葉に、慎吾は振り返らないまま答える。

リーンヘイムの精霊使いの間において、精霊封印は侵してはならない最大の禁忌だ。

どんな理由があっても、破ってはならない。

唯一の例外を除いて、それは絶対だ。

「今からだいたい、2年前になるか。ちょうどエリー達と出会う1ヶ月前に、俺はとある森で負の魔力に囚われた精霊と出会った」

「ああ、聞いたことがあるな。確か、我がミグレスタの南端にある森の話だったか?死の森と化したと聞いたが・・・」

思い出すように言う慎吾に、エレイナは考えるように頷く。

ミグレスタとは、リーンヘイムの西の端にあるエレイナの母国だ。

いくつかの大きな森を有し、緑が豊富な国である。

もっとも、近年の魔物の急増によりいくつかの森は魔物の住家になっていた。

慎吾がその精霊とであった森も、その中の一つである。

「正確には、森の精霊の暴走で森が死んでしまったんだ。暴走の原因は、人間と魔物との戦闘で生まれた負の魔力」

「精霊は、魔力そのものと言っても過言ではない。負の魔力に捕われて、性質を逆転させたか」

魔物の討伐依頼を受けて森に向かった慎吾が見たのは、魔物どころか草一本すら生えていない森だった場所とそこで狂ったように笑う精霊だった。

「結果的に、俺達がその精霊を討伐してその騒ぎは収まった。だけど、その途中で恐ろしいことが分かった」

「恐ろしいこと?」

独白や懺悔に近くなっている慎吾の言葉に、ミーリャが首を傾げる。

慎吾は一つ頷いて、再びう口を開いた。

「一瞬だけど、シルヴィ達が負の魔力に囚われかけたんだ」

「普通、契約した精霊は周辺の魔力の影響は受けないとされている。その前提が、崩れたと言うのか?」

慎吾の言葉に、シームが驚くように声を上げる。

シルヴィ達が負の魔力に囚われかけたのは、最高位精霊としての特殊性が原因だ。

世界そのものと言っても過言ではない彼女達は、存在する場所の魔力に影響を受けやすいのである。

それこそ、契約者が居るにもかかわらず周辺の魔力に感化されてしまうほど。

「最高位精霊であるシルヴィ達が全員負の魔力に捕われたら、リーンヘイムは崩壊する。だから、俺はあの2人を一時的に封印することにした」

「封印は精霊の力を閉じ込めるが、同時に外界からの影響も遮断する。まあ、最善とは言わないまでも次善の策ではあるか・・・」

目を閉じてそう言う慎吾に、シームは納得したように頷いた。

精霊封印が禁忌とならない唯一の例外が、精霊からの頼みによる一時的な封印である。

しかし、精霊からわざわざ自分の身を縛るような事を頼むことはほとんど無い。

そのため、慎吾が禁忌を侵したという噂が立ったのだ。

「で、どうしてそんな2人を再び目覚めさせたんだ?」

「身も蓋も無く言えば、戦力不足だ。この世界を救う事にした以上、シルヴィとヴルだけじゃ対処しきれない」

エレイナの質問に、慎吾はぶっきらぼうに答える。

事実、ラマサンダでの出来事はシルヴィとヴルだけでは対処しきれなかった部分があった。

今回のレプニーチェでの出来事も、ディーネやノールが居ればもっとスマートに解決できただろう。

そう言うことがあったため、慎吾は二人の封印を解く事にしたのだ。

「正直、結構迷ったけどな。契約者としてではなく、友達として助力を求めろってあいつらに説教されちまった」

慎吾はそう言って少し笑い、シルヴィ達の方へと目線を向ける。

シルヴィは満面の笑みでヴルは照れ臭そうだという違いはあるが、二人ともディーネとノールが目覚めたことを喜んでいるのは間違いない。

和気藹々と話し合っている四人は、仲良し家族のように慎吾の目には写った。

「まあ、良いのではないか?」

「は?」

わざわざ隣に来て言ったエレイナの言葉に、慎吾は思わず顔を向ける。

「別に悪意を持って封印をした訳で無し、特に咎める理由も見つからん。そもそも、戦力不足は私の責任でもあるしな」

「そうじゃな。元々、我はそう言う事に頓着しない性格だ。おぬしが何をしようが、特に何も言うつもりは無い」

肩をすくめながらいうエレイナに、反対側からシームが追従した。

「ミーリャは?」

「ん?私はそもそも、シンゴ達の世界のこと知らないもん。さっきの話の何が悪いのかすら、分かってないし」

一人その場から動いてないミーリャに目線をやりながら慎吾が問うと、ミーリャは小首を傾けてニッコリ笑う。

誰のやり取りも、先日シルヴィが言っていたのとほとんど変わらない。

「ハハハ・・・。なんか、迷ってた俺が馬鹿みたいだな」

慎吾はそう言って、小さく苦笑した。

0時と1時のどちらが読者量が多いかの検証中の為、本日は0時に投稿しました。

次回は、1時投稿。

その次からは、読者量の多かった時間帯での投稿で固定します。


ーアトガキー

シュミール神は?

答:入口のところで慎吾達を見ながら、微笑んでいます。


なんか、終わり方が少年漫画の完結編みたくなった(≡≡;)

まあ、気にしないでください!

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