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神の懸念と祝福の夜

魔物の浄化を終えた慎吾達は、今回の騒動の元凶について冒険者ギルドのギルドマスターと話していたエレイナと合流して議院館へと来ていた。

「まずは、おめでとう。で、良いのかな?」

「まあ、魔物の浄化と原因の排除はしましたけど・・・」

通された部屋に入った途端言われたシュミール神の言葉に、慎吾は少し戸惑いながらそう答える。

ここに来るまでにエレイナと軽く情報交換をしたため、慎吾達は元凶が死んでしまった事を知っていた。

「原因となった人物を捕まえそこなった点は、この際置いておこう。話を聞く限り、エレイナさんの判断は正しかったからね」

「まあ、ワシでもそうしたわな。もっとも、情報を聞き出せる程度に回復はさせたかもしれんが」

苦笑気味にそう言うシュミール神の横で、塔の前で会った最高議長が肩をすくめた。

塔の前で会った時より、ずいぶんとフランクな態度だ。

慎吾達がその事に首を傾げていると、シュミール神が『これが、彼の地だよ。僕が、そうするように命令した』と言った。

ソワソワとしている最高議長を見るに、本人にとってはあまり気乗りしない命令だったのだろう。

「それは、そうとしてだ。ここに来てもらったのは、ちょっと気になることがあるからなんだ」

「気になること、ですか?」

真面目な雰囲気に変わったシュミール神の言葉に、慎吾は眉をひそめながら聞く。

それを見て、シュミール神は『長くなるから、座って話そう』と奥にある机を薦めた。

「聞きたいことっていうのは、エレイナさんが戦った相手の事だよ。確か、『魔導疑兵マギソルーダ』って言ってたんだって?」

全員が座るのを待って、シュミール神が手を組みながらそう慎吾達に聞いて来る。

「ああ、確かにそう聞いた。今回のがイータで、前回私達が戦った場所に居たのがデルタと言っていたな」

シュミール神の言葉に、エレイナが頷きながら答えた。

その答えを聞いて、シュミール神の顔が更に難しげな物に変わる。

「聞いた事が、あるんですか?」

「いや、その名前そのものは聞いたことが無い。最初は聞き間違えかとも思ったんだけど、どうやらそうでもなさそうだしね」

シュミール神の表情を見て不安げに聞く最高議長に、シュミール神は首を振った。

シュミールから何か聞き出せるかと期待していただけに、慎吾達は少し拍子抜けする。

「『そのものは』って、言ったでしょ?似たような物なら、聞いたことがあるよ」

「本当ですか?」

シュミール神はそんな慎吾達を咎めるように言い、慎吾達はその言葉に姿勢をただす。

「うん。『魔導機兵マギソルディオ』って、名前なんだけどね」

「確かに、似てますね。それってやっぱり・・・」

シュミール神が頷きながら言うと、慎吾は少し考えるようにして聞き返した。

「流石に、ここまで言うと分かるか。そう、『魔導機兵』は神の作った物だ。と言っても実はコイツ、天上でしか使われてないはずなんだよね」

「はい?」

慎吾言葉に頷くシュミール神だが、最後の言葉は慎吾の思っていたのとは違った。

予想外の梯の外され方に、慎吾は思わずキョトンとする。

「天上で作ったは良いけど、性能が高すぎたんだ。戦争の元になる可能性も出たから、地上には伝えていないって聞いてる。僕が塔に縛られたあとの事だったから、人づてだけどね」

そんな慎吾を初めとした面々に説明するように、シュミール神は話を続ける。

「さて、本題はここからだ。エレイナさんが言っていた『魔導疑兵』が『魔導機兵』を元にした物だとすると、ちょっと厄介な事になって来る」

「地上への、神の介入だな?」

シュミール神が再び真面目な顔に戻ると、シームが顎に手を当てながら言った。

「神話にも伝わる善悪の神々の戦いで地上の9割が失われたから、『天上の大盟約』って物で神の介入は封じられてるはずなんだけど・・・」

「盟約の抜け道か、それとも別の何かか。少なくとも、とんでもない事態には変わりないな」

シュミール神の言葉に、慎吾は厄介なことになったとため息混じりに呟いた。

下手をすると、善悪の神々の間で大戦争だ。

神話で言われるように地上の9割が失われれば、人間どころか全ての生物が死に絶える事になるだろう。

「そうだね。いますぐどうこうってわけじゃないと思うけど、念のため心に留めておいて欲しい」

シュミール神の忠告に、慎吾達は真剣な表情で頷く。


シュミール神から忠告を受けた、その夜。

慎吾は宿のベランダで、物思いにふけっていた。

その手に持っているのは、親指サイズの青と黄色の宝石だ。

形は両方とも円錐形で、透明な中に白い光が浮かんでいるように見える。

「・・・シルヴィ、ヴル、居るか?」

「・・・何?」

慎吾がつぶやくように言うと、虚空から声とともにシルヴィとヴルが現れた。

普通なら軽く恐怖感を覚える光景だが、慎吾にとってはもう日常の一部といっても良い光景だ。

リーンヘイムでは世界を構成する要素そのものである二人だが、この世界でもそれと似たような状態らしい。

いつでもどこでも、自由に現れたり消えたりできるのだ。

もっとも、精霊が世界を支えていたリーンヘイムとは違ってこの世界の精霊は世界の調整役のような立場らしいが。

「珍しく、困った顔してるな」

「何か、悩み事?」

シルヴィとヴルを見ながらぼんやりとしている慎吾を見て、二人が真面目げな顔をして慎吾の前に来た。

「・・・アイツらを起こそうか、どうしようかって思ってな」

「なるほどな・・・」

ため息混じりにつぶやく慎吾に、ヴルは小さく相打ちを打つ。

「アイツらは眠るとき、必要になったら起こしてくれって言ってた。けど、そもそもお前達精霊は戦いに使うような存在じゃねえ」

「確かに私達は自然の中で穏やかに暮らす存在で、人なんかの戦いに手を出したいとは思わないね」

いつになく口の軽い慎吾に、今度はシルヴィがそう返す。

リーンヘイムにおいても、精霊使いというのは実に希少な存在だ。

それは、精霊という存在があまり人間に関わるのを好まないからである。

自然と平穏を好むのが精霊という存在のため、人間や魔物の起こす戦いは彼らにとって害悪でしかないのだ。

「・・・それだけか?」

「ん?」

少し心配そうに言ってくるヴルに、慎吾は首を傾げる。

「お前が悩んでんのは、それだけかって聞いてんだ」

「ああ・・・いや、もう一つあったな」

繰り返すヴルに、慎吾は頷きそうになって途中で別のところに目線を向けた。

目線の先にあるのは、隣にとったエレイナ達の部屋だ。

「お前がアイツらを起こしたときの、エレイナ達の反応か?」

「了承を得たっても、禁忌は禁忌だしな。不安が無いとは、言えねぇ」

慎吾の目線を追ったヴルの言葉に、慎吾は肩をすくめながらそういう。

それを聞いて、シルヴィとヴルはお互いに顔を見合わせてため息をついた。

「なんつうか・・・」

「そこが、シンゴの良いところでもあるんだけどね・・・」

「な、何だよ」

少し意外な2人の反応に、慎吾がたじろぐ。

その反応に2人はもう一度ため息をつくと、シルヴィが慎吾の目の前まで飛んできた。

「・・・シンゴ。私達と契約したときに言って事、忘れた」

「お前達と契約したときに、言ってた事?」

いきなりのシルヴィの言葉に、慎吾はいぶかしげな顔で聞き返す。

「『永遠の友として、互いに研鑚と助力を惜しまぬ事をここに誓う』ってやつ」

「!」

シルヴィが続けると、慎吾は目を見開いた。

「友人として、シンゴに力を貸すのは当たり前だよ?それは、あの子達も一緒」

「お前がその助けを求めずに傷ついたら、アイツらがだって悲しむぞ?」

シルヴィとヴルが、それぞれ宝石に触れながらそう言う。

宝石の中の光が、トクンと脈動するように明滅した。

「そっか・・・」

「それに多分、エレイナ達もそんなことでシンゴを突き放すことは無いと思うよ」

宝石を見ながらつぶやくように言う慎吾に、シルヴィは笑いながら続ける。

そんなシルヴィに、慎吾もそれはそうだと思った。

ミーリャはそもそもリーンヘイムの禁忌など知らないし、エレイナは現実主義だ。

必要な事だったということをしっかりと説明すれば、納得してくれるだろう。

それが分かるくらいには、お互いを信用している。

微妙なのはシームだが、それも問題ないと慎吾は思っていた。

シュミール神に引きこもりと言い張ったシームの事なので、禁忌程度がどうしたと言うような気がしたのだ。

「・・・そうだな。それじゃ、時間が空いたときにアイツらを起こすか」

「その時は、エレイナ達も側に居てもらうんだよ?もちろん、私達もだけど」

小さく笑って決意したように言う慎吾に、シルヴィはあえてちゃかすように言った。

「分かった。・・・それにしてもシルヴィ、契約したときの話なんて良く覚えてたな?」

「ああ、それ?私達精霊相手に友達になろうって人間は少なかったから、嬉しかったんだよね」

慎吾の疑問に、シルヴィが笑いながら答える。

その答えに小さく笑いながら、慎吾はシルヴィとヴルの頭を小さく撫でた。

遅れました。

なんか、支離滅裂な感がプンプンします。

前からだって言葉は、無しで。

オチはだいたい分かってるでしょうが、この続きは次かその次で

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