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炎の拳帝と黒幕との対峙

「さてと、どうするかな・・・」

慎吾はシーム達に任された魔物の攻撃を回避しつつ、そう口にした。

慎吾が悩んでいるのは、魔物の倒し方だ。

と言っても、ただ倒すだけなら全く問題ない。

問題なのは、中にいる人が居るという事。

魔物の表面を覆っている泥のような物の隙間から金の刺繍が入った衣服のような物が見え隠れしているので、少なくとも人のようなモノが居ることは確かだ。

そのため、下手に威力の高い魔法が使えない。

「とりあえず、火で行ってみるか」

そう呟いて、慎吾は手を魔物の方へ突き出す。

そこに浮かぶ、手の平サイズの魔方陣。

火を選択したのは、単純に殺傷能力の問題だ。

『斬る』や『押し潰す』と言った攻撃の多い風属性に対して、火属性の攻撃で体に受けるダメージといえば火傷くらいのものである。

泥の防御性能がどれほどのものか分からない以上、この選択も仕方がないだろう。

「『フレアショット』」

慎吾がそう唱えると、魔方陣から小さな炎が放射状に発射される。

攻撃面積は広いが、一発一発の威力はそれほど高くない魔法だ。

魔物の真正面に発射したので、魔物は炎の塊の中に突っ込む形になる。

魔物の表面を、小さな爆発が包み込んだ。

「うーん・・・」

「あまり、効いてねえみたいだな」

爆発のあとの魔物の様子を見て慎吾が難しげな顔をしていると、いつの間にやら近くに現れていたヴルがそう言ってきた。

炎の中に突っ込んで少し怯んだような形になった魔物であるが、爆発が止んでみると何事もなかったかのように動き出したのである。

「火が効かないってなると、ちょっと厄介だな・・・」

「あの感触は、塔の中で戦った奴と少し似てるぞ」

少々不満げな表情の慎吾に、ヴルが少し考えるようにそう言った。

要するに、あの泥のような物は半実体とでも言うべき物のようだ。

「ってことは、白炎を使うか?」

「なんにせよ、やってみない事には突破口もクソもねえぞ」

考え込むような慎吾に、ヴルが咎めるように言う。

相手を無力化する手段が無い現状、使えるものは使うべきだと言いたいようだ。

だが、白炎が炎としての威力が低いとは言ってもそれは『同レベルの魔法と比べて』というもの。

それなりに上位の物である以上、先ほど使った魔法とは桁違いの威力になる。

人間など、下手をすれば一瞬で消し炭だ。

そのことが、慎吾に白炎を使うことを躊躇わせていた。

「グワゼロォーーー!」

「ああ、もう!この際、どうとでもなりやがれ!」

慎吾の躊躇いを見て取ったかのように覆いかぶさってくる魔物に、慎吾はやけくそ気味に白炎を壁のように放った。

先ほどの炎の魔法の時のように、魔物がその壁へと突っ込む。

「ギャグゥ!」

「ん?」

壁へと突っ込んだ魔物が悲鳴を上げるのを見て、慎吾は首を傾げた。

「・・・効いてるのか?」

「見たいだな。だが、体に当たった炎は無視してるぞ?」

首を傾げたままつぶやく慎吾に、ヴルは怪訝げな顔でそう言った。

先ほどは辺りをのたうちまわるようにしていた魔物だが、今は体に白炎の炎を点したまま何事もなかったかのように立ってる。

その白炎の点っていない範囲を見て、慎吾はシュミール神の言っていたことを思い出した。

「あの王冠が魔物の本体だとしたら、あれをどうにかすると良いのか?」

「でも、目標が小さすぎて遠距離だと面倒だぞ?」

慎吾の推測に、ヴルは眉間にシワを寄せながらそう言う。

王冠とは言っても、魔物の頭に載っているそれは棒を捩って輪にしたような物だ。

頭全体を覆うような物ならともかく、そのような物をピンポイントで狙うのは慎吾にも至難の業である。

ましてや着弾の位置を間違えれば中に居る人間の頭を焼いてしまう羽目になるのだから、下手に手出しできない。

「しゃあねぇ、拳帝状態になってぶち抜くぞ」

「結局、そうなるか・・・。それしか方法がねぇみたいだし、この際仕方ねえか」

慎吾が決心したように言うと、ヴルも半ばあきらめたように同意した。

それを聞いて、慎吾は右手を真っすぐ横に伸ばす。

その先に現れたのは、シルヴィの時と同じような造形の赤い魔方陣。

シルヴィの時との違いといえば、時折魔方陣の一部が炎のように揺らめいていることか。

「『フィジカルエンチャウント・フレア』」

慎吾が唱えると共に、魔方陣から炎の渦が吹き上がる。

普通の炎と違って紅色をした炎は、それそのものが意思を持つかのように慎吾の体に纏わり付く。

一度火柱のように立ち上がった炎が、内からの圧力に負けるようにはじけ飛ぶ。

その中から炎の残滓を纏って出てきたのは、これまでとは雰囲気の異なる慎吾であった。

全体的な見た目は、ビランツァで行った『フィジカルエンチャウント・エアロ』の時とそう変わらない。

しかし服のラインと手甲の色は赤く、服の所々が炎のように揺らめいていた。

「さてと・・・」

慎吾がつぶやくようにそう言うと、爆発したかのような音と共にその姿が消える。

足の裏で炎を発生させ、その力を使って急激に加速したのだ。

『フィジカルエンチャウント・エアロ』の風による加速と違い、ミサイルさながらの暴力的な加速。

次に慎吾が現れたのは、魔物の頭上だった。

「『炎撃槌えんげきついハク』」

慎吾はそう言って、魔物の頭にそっと手を添える。

攻撃とは思えない、優しげな動ごき。

しかし、そのあとに現れた結果は優しさとは掛け離れた物であった。

純白の炎が、魔物の足元から吹き上がる。

有無を言わせぬ、強制的な浄化。

それによって、魔物の頭に載っていた王冠は塵も残さず消え去った。

慎吾が頭の上から下りると、魔物だったものは崩れるように倒れる。

纏っていた泥のような物が炭のようになっているが、胸は上下しているので少なくとも生きてはいるだろう。

「これで、終わりか・・・」

慎吾はそう呟いて、拳帝状態を解く。

少し心配そうにエレイナの向かった方角を見て、他の魔物わ浄化するためにシーム達の方へと向かった。


慎吾が魔物の倒し方に頭を悩ませていた頃、エレイナは街から少し離れた場所で謎の男の行く手を遮っていた。

「おい、そこの怪しいの」

「いきなり出てきて怪しいのよわばりとは、ご挨拶ですね」

明らかに敵意剥き出しのエレイナに、男は肩を竦める。

何気ないやり取りに見えるが、エレイナの殺気を受けても普通にしている時点で相当な実力者だ。

並の武芸者ならその余波だけでも卒倒しかねないといえば、その異常さが分かるだろう。

「『欠番者チスゥラー』だと見ているが、間違いないな?」

「どこで、その名前を知りましたか?」

警戒しながらのエレイナの質問に、男はわずかに驚いたような仕種をする。

「質問しているのは、こっちなんだが?」

「見る限り、ごまかせるような状況じゃなさそうですね・・・。ええ、私は『欠番者チスゥラー』の一員ですよ」

警戒心を強めるエレイナに、男がため息をついて素直に認めた。

素直に認めた事が少し意外だったエレイナだが、それで警戒をおろそかにすることは無い。

「ラマサンダの街に出ている魔物は、お前の仕業で間違えないな?」

「それまた、ご名答。私の逃げる時間を稼ぐために放ったのですが、役に立ちませんでしたか」

続くエレイナの質問に、男は手を叩かんばかりに褒める。

慎吾がその場にいれば、答えを言った生徒を褒める教師のようだと感じるだろう。

「生憎、私の仲間は優秀でな」

「そのようですね。で、私をどうします?魔物を街に放った罪で、捕らえますか?」

少し自慢げに言ったエレイナに、男は手を広げてそう言った。

もっとも、捕まえたところで魔物の件を男がやったという証拠がない。

先ほど白状した内容も、エレイナから脅迫されたと言えば良いのだ。

魔物のあふれかえる街から出て行ったのは怪しいが、せいぜい厳重注意に留まるだろう。

男には、それが分かっているのである。

「捕らえるのはもちろんなんだが、その前に一つ聞いておきたい」

「何でしょう?」

その自信に満ちあふれた仕種に顔をしかめながら言うエレイナに、男は首を傾げる。

「ラマサンダの盗賊共を襲ったギガプラントとか言う魔物を操っていたのは、お前なのか?」

「ギガプラント?ああ、デルタが使っていた魔物がそんな名前でしたね」

エレイナの質問に、男は少し考えるようにしたあとそのような事を言った。

「デルタ?」

「人造生命体『魔導疑兵マギソルーダ』。それが、我々の呼び名です。私がイータで、あなたが先ほど言った出来損ないがデルタといいます」

確認するように聞き返すエレイナに、男は少し微笑しながらそう答える。

その言葉を聞いて、エレイナはあからさまに顔を歪めた。

「仲間に対して出来損ないと言うのは、私としてはどうかと思うのだが?」

「私たちは所詮、造られた生命。仲間という感覚はありませんし、必要ともされていませんよ」

不快感をあらわにして言うエレイナに、男はそう言って苦笑した。

『いわゆる道具と一緒ですね』と言う男に、エレイナはますます顔を歪める。

見た目は人間でも、中身は道具そのもの。

そんな目の前の存在に、エレイナは心底寒気がしたのだ。

男がそのことに疑問を抱いていないのも、それに拍車をかけている。

「ずいぶんと、口が軽いな。ついでに、その『魔導疑兵』とかいう連中の総数も教えてもらえると嬉しいんだが・・・」

「流石に、それは無理な相談ですね。ついでに言うと、今言った情報も持ち帰れるかどうかはあなた次第です」

男の雰囲気にあえて乗るようにエレイナが言うと、男は肩を竦めてそう言った。

そして、どこからともなく剣を持ち出す。

何の変哲も無い、普通の直剣。

男が持つには少し長く見えるが、その程度の物だ。

エレイナがそのことに疑問に思っていると、男はその剣の刃に指をかけた。

指から血が流れるのを気にせず、柄を引く。

すると、剣の中から更に剣が現れた。

「鞘を、二重にしていたのか・・・」

「こんなもの持ってたら、怪しまれるでしょう?」

目の前の光景にエレイナが少し驚いたように言うと、男は刃だけになった元の直剣を地面に落としながらそう言う。

男が今持っているのは、何とも奇っ怪な形状の剣だ。

全体的には、レイピアのように見えなくはない。

だが、その先はフォークのように三股に分かれている。

更に切っ先から根本まで、刃が波打つようになっていた。

おそらく、フランベルジュを参考に刺突に特化した剣だと思われる。

強度等の問題は魔法でどうにかできるため、このような形になったのだろう。

「情報を持ち帰りたくば、押し通れと?」

「ご名答」

男が剣を構えるのを見てエレイナが言うと、男はニヤリと笑った。

お、遅くなりました・・・・

本文削ったり足したり削ったり足したり・・・何か、久しぶりに神経使った感じです。

後半は中途半端に終わってすいません。

全部書いたらとんでもない文字数になったので、半分にしました。

とは言っても、片割れは削っても3000文字くらいあります。

また、次も削り作業か・・・

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